「公共事業費の削減は、新たな公共事業を生む?」土木施工管理技士の現場体験談

「公共事業費の削減は、新たな公共事業を生む?」土木施工管理技士の現場体験談

「公共事業費の削減は、新たな公共事業を生む?」土木施工管理技士のリアルな現場体験談

現場目線で語る「公共事業費削減の弊害」

「公共事業費削減の弊害」と言うと、評論家めいた難解な話になりがちです。しかし、私も難しいことはわかりませんので、日頃から感じている「公共事業費削減の弊害」の一つについて、実際に工事現場で働いているオッサン目線でお伝えします。

公共事業費の予算削減で、役所の技量も下がる?

私の所属する会社は、○○市が発注する工事や修繕を中心に請け負っています。請け負う工事全体の約90%を○○市の発注工事が占めているので、○○市のおかげで経営が成り立っている状態・・・まさに、○○市サマサマです。

そこで一番困っているのが、公共事業の予算削減に伴い、現場経験が少ない役所の担当者が増えていること。そして、目先の公共事業費の削減が、かえって後々、大きな公共事業費の支出につながるケースもあるということなのです。


現場を確認しないで公共事業を発注する役所

子供たちの夏休みが始まる頃、○○市の公園課から、修繕の発注がありました。「駐車場や駐輪場から公園までの導線周りの草刈りをしてもらいたい。1日で終わるはずだから、明日までに終わらせてほしい」と。

私は「わかりました、ありがとうございます!」と返事をして、翌日、現場の公園に向かいましたが、その光景に唖然としました。

草は人の背丈を遥かに超えて青々と茂り、厄介なツルが四方八方を巻き込んでいます。アスファルト舗装の歩道は、草に覆われて全貌が見えず、作業員たちは呆れ顔で「なんでこんなんなるまで、ほっとくんやろ?」とぼやきます。

おそらく前回の整備(草刈り)から、1年ほど放置されていたのでしょう。とても1日で草刈り作業が終わるワケがありません。

「これを1日でやるのは無理やで!」と作業員たちは怒り気味。真夏の草刈りは作業効率がおのずと下がりますし、作業員の熱中症も心配です。しかし、役所の担当者に最初から「1日では無理です」とは言えません。とりあえず作業を開始し、一生懸命に草を刈りましたが、やはり1日では無理だったので、役所の担当者に電話しました。

「やるだけやっていますが、流石に今日中には終わりそうもありません」

役所の担当者「えー?なんで?それは困ったなあ」

「〇〇さん、現場を見られました?」

役所の担当者「いや、写真で見ただけだけど」

(私は現場も確認してないのかと呆れました。)

・・・その後、役所の担当者が現場に来られて、自分の目で現状を確認。

役所の担当者「うへー、こんなに、生い茂っていたの?これは1日では無理やね!とりあえず、歩道にはみ出した分だけ刈って下さい」

「いやいや、また直ぐに伸びてきますし、草の奥には枯れた街路樹もありますよ!街路樹も撤去した方が良いのでは?」

役所の担当者「予算もないから、はみ出した草だけ刈って下さい」

とりあえず言われた通りの作業でその日は終了したのですが、これが後々、もっとお金が掛かる災害に繋がるのでした。


公共工事の予算不足が、余計な公共事業を生む

その後、全国的に大きな被害を出した大型台風が、○○市にも直撃しました。人的被害はなかったものの、あちこちの公園の木々が強風で倒れました。

日頃の公共工事の予算不足で、公園を整備できていないのが原因でしょう。台風が過ぎ去って1か月以上が過ぎても、○○市内の業者は総出で災害復旧を行ないました。公園の倒木処理にかかる費用だけでも、相当な額に上ったはずです。

私たちが草刈りを担当した公園も例外ではありませんでした。街路樹はほとんど倒れ、歩道はとても使える状態ではありません。倒れた街路樹は、歩道脇のフェンスをもなぎ倒しました。ほら、言わんこっちゃない!予算がないからと言って整備しなかったから、余計に莫大な費用がかかる災害につながったじゃありませんか。

公共事業費の予算を削減したツケ

公共事業は災害防止に必要です。それは役所の担当者も分かってはいても、どうしようもないのでしょう。役所の担当者からは、日頃から「予算がない」「お金がないから」という言葉をよく聞きます。予算削減に伴う人員不足により、業務に手がまわらずに、悲鳴をあげています。

やはり公共物を管理するためには、ある程度の予算が必要ですし、定期的な点検と手入れが必要なのです。

そのほうが結局、管理費や修繕費用の削減につながります。安易な公共事業費の予算削減には、弊害がつきまとうことに留意すべきです。

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