新しい土木技術を追求する「YDN(やんちゃな土木ネットワーク)」
最近、土木業界で注目を集めている「YDN(やんちゃな土木ネットワーク)」。
YDN(やんちゃな土木ネットワーク)は、新しい土木技術を学ぶために、小規模の土木事業者がアライアンスを組んだ、全国的なネットワーク組織です。2017年12月現在、19社の土木事業者が加盟し、国土交通省やスーパーゼネコンなどとは一線を画した形で、新しい土木技術を追求しています。
やんちゃな土木施工管理技士たちが起こす「土木革命」とは何か?——YDNのやんちゃな活動内容について、YDNを主宰する株式会社正治組(静岡県伊豆の国市)の大矢洋平さんに話を聞いてきました。
お忙しいということで、インタビューは新幹線に同乗しながら実施しました。
「建設業協会では協力し合えない」YDN(やんちゃな土木ネットワーク)の理念
「YDN(やんちゃな土木ネットワーク)」主宰、株式会社正治組の大矢洋平さん
——YDNを立ち上げた理由は?
YDN 僕は地元の末端の土木業者です。昔から常に現場での効率を求めて、ひたすら孤独に土木を研究というか勉強してきた。
しかし、地元の建設業協会では、所属する土木技術者同士が競合相手になってしまうから、技術の革新を協力しあうことができないということが事実としてある。
そこで地理的に競合しない距離感で、同じ想いを持つ土木業者のネットワークをつくったら面白いかなと思った。それが2015年4月に設立した、YDN(やんちゃな土木ネットワーク)です。
言葉遊びのi-Constructionに違和感。YDNは技術馬鹿の集まり
——YDNは、i-Constructionを勉強する組織なのか?
YDN たしかに建設業界では、10年後に建設労働者が3分の1に減少するといわれ、国交省はしきりにi-Constructionを推奨している。しかし、僕に言わせればi-Constructionなんかどうでもいい。
最近の土木業界は猫も杓子もi-Constructionといっているけれど、そのほとんどがやらされているi-Con、規格にはめられたi-Con、言葉遊びのi-Conとなっている。僕はそれに違和感がある。
とにかく現場での効率を重視するのがYDNの理念。効率化に関するルール(規格)は未整備である場合が多いが、ルールがなければYDNでつくればいいと思っている。
発注機関などでルールをつくる人っていうのは、現場を知らない人が多い。本来は現場に精通している人がルール作りに参加すべきなんじゃないかな?そこで、YDNが役に立つと思っている。
YDNがNETISに申請した「ドローンアイズ」とは?
——具体的にYDNはどんな活動を?
YDN 技術馬鹿たちがひたすら現場検証をして、新技術の有効性や生産性向上に本当につながるのかとか、そうした活動を日本中でYDNのメンバーがやっている。そのデータはITを駆使して集約され、国交省などの発注機関に提案している。でも、YDN構成企業のほとんどは、国交省案件への入札参加資格がないけどね(笑)。
YDNはとにかくやってみる。実践を大切にしている。失敗も成功も共有しているのが、YDNの会員企業が得られる最大のメリットだと思う。例えば、ドローンを使った空中写真測量という技術があるが、その中で割と大変なのが画像解析。ソフトウェア(アプリケーション)の特徴というか、癖のようなものをつかむのが実に大変。こうした悩みをFacebookのグループ機能を利用して教えあったり、意見交換したりしている。
技術的な話になっちゃうけど、ドローン測量をやったことがない人が、まず最初にくじけるハードルが自動航行設定。国産のアプリではi-Conに準拠したものがない。そこでYDNメンバーの交流を通じて自然発生的に「じゃあ、自分たちで作っちゃおう」ということになった(笑)。それが「ドローンアイズ」というアプリで、今、NETISに申請しているところ。
ドローンアイズを使えば、初めてドローン測量をする人でもルート設定がたった5分でできるようになって、さらに発注者に提出する撮影計画書の帳票が自動作成される。そんな高度な技術開発の端緒が、単なるノリで始まった。自分たちでも驚いている(笑)。
計測範囲をタップすると飛行ルートを自動作成してくれる。
デフォルトはi-con設定だが任意で速度・高度・地上解像度の変更も可能だ。
飛行ルートが完了すると即座に飛行計画の帳票を、自分のGoogledriveアカウントへのアップロードが可能となる。帳票は、そのまま施工計画に使用できる。Excelファイルで出力されるので自分で編集することも可能だ。
YDNから見て、日本の土木技術者は楽しそうじゃない
——YDNから見て、今の土木技術者の問題点は何?
YDN 僕が見ている限り大半の技術者は型にはめられているというか、規格から抜け出せていないように見える。まじめで頭がよすぎるんだろうね(笑)。でも、そのままじゃ飛躍的な技術革新、イノベーションは絶対に起きない。 YDNが「やんちゃな」という言葉を名前に冠したのもこうした問題意識があったから。「ふざけた名前」なんて馬鹿にする人もいるかもしれないけど、そんなバカげた発想からイノベーションは起きると信じている。
——今後のYDNの展望は?
YDN もっと面白く、もっとシンプルに。日本中の土木技術者がそんな風に働けたらいいのかな。そんなきっかけにYDNがなれたらいいなと思っている。なんでそういうふうに思ったかというと、「楽しくなかったら働く意味がない」と思っているから。
残念ながら日本の土木技術者の多くは楽しそうに見えない。楽しく仕事をしていない人がつくる橋や道路を使いたくないでしょ?(笑)
あんまり大げさなことはいいたくないけど、単純にそういうことだと思っている。
——もう駅に着きますね。ありがとうございました。
※YDN(やんちゃな土木ネットワーク)の加盟メンバー19社(12月20日現在)
株式会社 正治組(静岡県伊豆の国市)
株式会社 藤本組(静岡県掛川市)
有限会社 丸中建設(福島県二本松市)
有限会社 光南台土建(岡山県岡山市)
株式会社 山口土木 土木事業部(愛知県岡崎市)
炭平コーポレーション株式会社(長野県長野市)
株式会社 田上重機開発(千葉県木更津市)
松嶋建設 株式会社(富山県中新川郡)
株式会社 tsuji(京都府宇治市)
株式会社 富士建(佐賀県佐賀市)
株式会社 道端組(福井県福井市)
白石建設有限会社(岡山県岡山市)
湯澤工業株式会社(山梨県南アルプス市)
中村土木建設株式会社(愛知県東海市)
東和道路株式会社(千葉県千葉市)
刈屋建設株式会社(岩手県宮古市)
有限会社 コンクリートサポートセンター(福岡県福岡市)
福留開発株式会社(高知県高知市)
株式会社 三和工務店(静岡県富士市)