【本音トーク】女性たちが語る「意外にラッキー」な建設業界の実情とは?

右から、佐藤佳世さん(株式会社北岡組)、佐野絢子さん(有限会社NAO企画)、橋本美春さん(株式会社大竹組)、板倉舞さん(国土交通省四国地方整備局)、佐藤秀香さん(株式会社エス・ビー・シー)、岡林眞姫さん(同)、亀井明日香さん(県西土木株式会社)

【本音トーク】建設女子たちが語る「意外にラッキー」な建設業界の実情とは?

建設業界は実は女性に優しい!?「ラッキー」な建設業界の実情を激白

先日、『施工の神様』に掲載して好評だった「なでしこBC連携」の記事

今回はその「なでしこBC連携」の女性メンバーなどに、合同インタビューをしてきました。

技術職、事務職、ベテラン、若手揃い踏み。

建設業で働く女性は日々、なにに喜び、なにに悩んでいるのか?

キワドイ話も飛び出しましたが、彼女らの生の声をお届けします。


「和式トイレのほうが良い」建設女子たちのトイレ事情

――まずは大竹組の橋本さんの方から、実際の仕事で困っていることなどを。

橋本 私は土木の仕事を始めて23年目になります。入ったころは、現場の状況が劣悪で、今でこそ、快適トイレがありますが、男性用トイレすらありませんでした。どうやって用を足していたかは想像できるでしょう。

国土交通省の現場では、だいたい洋式トイレが設置されていますが、私は現場に洋式トイレを置きたくないと考えています。大竹組の男性にもアンケートをとったのですが、「和式トイレが良い」という意見が多かったんです。理由は、「だれが座ったかわからない便座に座りたくない」というものでした。

現場には和式トイレを置きたいと考えています。現場事務所に洋式トイレを置き、それを快適トイレ仕様にするつもりです。災害時に、周辺住民にもトイレを使ってもらうことになっているので、流れと逆行している話ですが。

――株式会社エス・ビー・シーの岡林さんと佐藤秀香さんも、現場には出ているんですか?

岡林 出ています。

橋本 山は登るんですか?

岡林 登りますよ。

橋本 機械を背負ってですか?

岡林 地すべりの観測なので、リュックに入れて運べる程度のものなので、そんなに重くはないです。

佐藤秀香 1時間ほどかけて山に登ることがあります。周りに家もない場所なので、仕方なくその辺で(笑)。

――国土交通省の板倉舞さんは?

板倉 私は事務所勤務なので、現場に行くことはあまりありませんが、たまにいくと、「快適トイレつくったよ〜。見ていって。」と言われます。ただ、やはり「女性専用」になっているので、男性専用トイレも設置すれば良いと感じます。国土交通省の積算体系では、全部払える形になっていないので、そこは問題だと思っています。

「洋式か?和式か?」については、今まで考えたことがなかったので、そういう意見を言っていただけると、助かります。

――NAO企画の佐野さんは?

佐野 先日行った地役調査の現場は、45度以上のガケの上にある現場で、機械を背負ってしばらく登って、やっとたどり着いた現場でした。ちょっと足を踏み外したら、落ちて死ぬような現場です。そんな現場ではもうそこでするしかないですよね(笑)。「トイレするから、向こう向いといて」と言ってから、します。

橋本 言うんですか?

佐野 言わな、来るもん。そんな現状です(笑)。

「透ける作業服」で奮闘する建設女性

――作業服のデザインについて、どう思いますか?

板倉 国土交通省の作業服には、男性用のサイズしかありません。腰回りがダブダブで、非常に似合わないというか、着させられている感があって、上司などと「女性用の作業服があれば良いのに」という話をしています。「女性用の作業服が欲しい」と言って、会社に買ってもらった方はいらっしゃいますか?

佐野 私が3年前に入社したときは、女性作業員は一人もいませんでした。男性の作業員も作業服屋さんで、自分で調達していました。私が女性として初めて入社したので、たぶん社長がワクワクして、「自分の好きな色、カタチの作業服を選んで来い」と言われ、カタログをもらいました。自分の好きな色、好きなカタチの女性用の作業服を買いました。種類も結構多いです。

ただ、女性用の作業服はゴツいし、夏服は透けるんです。パンツが透けないように、膝上ぐらいまでナイロンが入っているものを中に履いてるんです。

岡林 今履いているズボンとかも、レディースです。ただ、個人的にはメンズの作業服が好きです。レディースだと、ポケットとかが少ないので、手荷物が増えてしまうんです。メンズの方がポケットが多いので、便利だからです。レディースはゴムパンツなのが良いです。なので、メンズのゴムパンツがあれば、最高です。

橋本 会社が支給してくれる作業服で全然問題ありません。正直、会社の作業服は雨に濡れたりすると、透けるんですが、「うわ〜、透ける透ける〜」と冗談を言えるようになっているので、大丈夫です(笑)。子どもの面談に行くときも、「チャラチャラした格好するぐらいなら、作業服で来て」と言われています(笑)。


地域建設業は、逆転の発想からの求人PRが必要

――建設業界がもっとこうした方が良い、ということはありますか?北岡組の佐藤佳世さんは?

佐藤佳世 私の前職は人材採用の会社で、いろいろな会社の求人を取り扱っていました。「この内容では人は来ないですよ。こうした方が良いですよ」など具体的なアドバイスもしていました。地元に帰って、今の北岡組に入社したわけですが、都市部と比べても休日が少なく、それが当たり前にようになっています。また、完全週休二日制の導入の進捗に関する調査を見ると、全産業の中で、建設業はワースト2でした。現場との兼ね合いや雇用形態など、建設業特有のものがありますが、建設業界の働き方改革が働き手にとって良い方向に進むことを期待しています。

――建設業界の求人に関する気づきは?

佐藤佳世 地方である徳島、建設業という不人気。これを逆転の発想でPRすれば良いと思っています。打ち出し方を変えるということです。

例えば、ハローワークに求人を出す際、多くは、やって欲しい業務を箇条書きにして終わりですが、会社に入ってどんなメリットがあるのかとか、会社がどんなことをしてくれるのかを、一言添えるだけで、応募者数は変わってきます。実際に北岡組の求人でも3倍に増えました。若者が欲しい場合は、「先輩社員が丁寧に教えます」とか「キャリアアップできる環境があります」みたいに、ちょっと書き方を工夫するだけで、印象は大きく変わります。求人を会社のPRツールのひとつとして捉えるのも良いと思います。

――岡山県の土木施工管理技士会の事務局をやっている山崎さんはいかがですか?

山崎 私はみなさんとは立場が違うのですが、土木施工管理技士会の会員は9割以上が男性です。国交省の会議や講習会、現場などに行っても、周りに男性しかいないのが当たり前です。作業服についても、「女の子だから、ピンクを買えば良いよ」と言われるんですけど、普通に男性用のものを着ています。

「女性だからできないだろう」と思われていることを、どうやってできるようにもっていくかというところで日々仕事しているので、その辺でツラいとか感じたことはありません。ただ、事務屋の中で、技術的なことをすることにやりにくさを感じています。そういうこともあって、岡山県の土木施工管理技士会では現在、組織のあり方を見直そうとしています。

技士会を運営する立場の者としては、なでしこBC連携のような活動に関わっていることを広報することを通じて、女性の会員が少しでも増えれば良いと感じているところです。

――県西土木株式会社の亀井さんはどうですか?

亀井 県西土木には女性技術者はいませんので、女性用の作業服もなかったんですが、なでしこBC連携に参加したことをきっかけに、女性用の作業服を買ってもらいました。パトロールなどの際に着ています。

普段の業務では工務の事務だけですが、せっかく作業服があるので、現場の検査にも行くようになりました。現場に行くようになって、それまでは書類でしか知らなかったことが、現場を知ることによって、自分がやってきた仕事がより分かるようになりました。微力ではありますが、会社のため、上司のために、自分ができることが増えたことに喜びを感じています。

「こう思うんですけど!」と反論しても、汲み取ってくれる上司に「グッジョブ!」

板倉 女性が男性社会である建設業界に入り込むということは、とっても大変なことだと思います。それだけに、建設業界で揉まれて、頑張っていると、他の業界で働くよりも、よりたくましい、より強い女性になれるのかなと思うのですが、いかがですか?

橋本 その辺は『施工の神様』の記事を見てください(笑)。男性社会で揉まれてたくましくなったというよりは、私の性格では女性がいっぱいいる職場ではムリだろうな、という判断がありました。大竹組では、大事に大事にしてもらったので、だから、今があるという感じです。怒られることもありましたけど、しっかりフォローしてもらえたので、なんとかやってこれました。

板倉 怒られるときは、男性と同じように怒られるんですか?

橋本 怒られるときは、男も女も同じです。

――国土交通省に怖い女性の先輩はいないんですか?

板倉 私の所属課に女性は私しかいないので、女性の先輩から怒られることはありません。ただ、私の上司はキレキレのやり手の方なので、細かく指導されることはあります。悔しいので、私も「こう思うんですけど!」とやり返すこともあるわけですが、それも汲み取った上で、鍛えてもらっています。

私の場合、男性社会だから、男性目線だからといって困ったということは特にありません。鍛えてくれる上司がいて、困ったときに助けてくれる同期もいて、それがすごく楽しいです。

――むしろ周囲が男ばかりの方がやりやすい?

岡林 私は高校から理系だったので、周りは男子ばかりでした。そういう環境で過ごしてきたので、それが普通でした。だから、建設業界、建設会社に入ったということはあると思います。

佐藤秀香 やりやすいということではありませんが、私は、性格的に負けず嫌いなので、男の人に負けたくないという気持ちで、仕事には臨んでいます。


結婚出産を諦めるよりは「キャリアリセット」が結果的にプラス

――結婚、出産による仕事への影響は?

橋本 私は、大竹組で働いているときに、結婚し、それを機に、一度大竹組を辞め、出産しました。建設業しか経験がなかったので、建設業界に復帰することにしました。子どもがいるので、パートにしようかと思いましたが、生活を考えると、正社員でないと厳しいものがあったので、正社員として復帰したいと考えました。ただ、大竹組は通勤が遠いので、通勤が楽な建設会社に勤めました。いろいろあって、その会社を辞めた後、再び大竹組で働くことになりました。

私の場合、仕事に復帰してからというもの、子どもの面倒を見た記憶が一切ありません。保育所の送り迎えをしたこともありません。子どもにはいまだに「産み捨てられた」と言われています。他の女性が子ども送り迎えをしている話を聞くと、「偉いな」と思います。私にはできませんでした。

山崎 私は今の仕事に就いて6年ほどですが、その前は美容業で働いていました。出産、子育てを経て、今の仕事に就いたわけです。子どもは3人いて、当時、一番上が中学生ぐらいでした。一般的には、結婚、出産でキャリアをあきらめなければいけないという感覚に陥る女性は多いと思いますが、キャリアを優先して、結婚出産を諦めるよりは、一旦そこでキャリアをリセットして、新たなキャリアを積んでいくんだと考える方が、結果的にプラスになると思います。

特に、土木の技術者の女性は、いろいろな資格をお持ちの方が多いので、キャリアをリセットしたとしても、次のキャリアで活きてくると思います。キャリアを積んでいく上で、結婚出産がデメリットということはないと思います。

「女性だから、建設業はシンドいやろうな」と思われがち。でも、メリットの方が多い!

――建設業を志す女性に向けて、一言。

橋本 私は正直、建設業の仕事が楽しいんです。現場で構造物が日々仕上がっていくのが目に見えるのが楽しいんです。構造物ができあがって、検査を受けて、受け取ってもらうと、「終わってしまった」という感じで、ちょっとさびしいんです。それも含めて、建設業の魅力だと思っています。この魅力をどう伝えたら良いか、その方法をいつも悩んでいるんです。この言葉にできない建設業の魅力を味わってみたい女性が、一人でも多く増えてもらいたいと思っています。

佐野 実際の仕事では、全身筋肉痛になったり、過酷な状況に置かれることもありますが、「女性としてイヤだ」と思ったことはありません。NAO企画の社員は、私のことを女性だとは思っていません。たぶん小さなおじさんだと思っています(笑)。

ただ、女性って、結構ラッキーだと思うんです。例えば、役所に書類を提出しに行ったときに、作業服を着た女性というだけで、すごくかわいがってくれるんです。名前もすぐ覚えてもらえます。会社の外では、すごく得なことが多いのが楽しいです。「女性だから、建設業はシンドいやろうな」と思われがちですが、むしろメリットの方が多いとすら思っています。

佐藤佳世 私自身、建設業で働くことになるとは思っていませんでした。私も外から見て思っていたよりは、良いことがあると感じています。例えば、入札に行くと、今まで男性がやっていた仕事なので、周りにいる他社の男性から大事にされます。

山崎 今、会社の上層部にいる方々は、黒部ダムを見て、心を打たれて土木を志した方が多いと聞きます。それと同じ思いを持って、若い女性が建設会社に入社しているとも聞きます。逆に、若い男性は、優しく繊細で、弱々しくなっているそうです。国交省では女性の活躍を進めており、建設業では女性が断然有利な状況にあると感じています。実際の仕事の大変さはあると思いますが、男性より女性が活躍する方が、生産性も上がると思います。

亀井 私も、建設会社に入る前は、男性社会に対する不安ばかりでしたが、入社すると、工務の職場には女性は私一人なので、すごく大事にしてもらいました。さきほど同じようなお話がありましたが、この業界では女性だと目立つので、社外でもいろいろと話しかけてもらえたりするので、会社にとってもPRにつながると思います。

佐藤秀香 みなさんと同じですが、女性だと周りから大事にしてもらえます。私自身、夏場に現場で山を登ったりして、汗をかくのが大好きなので、そういう女性に建設業に入ってもらいたいと思っています。

岡林 現場作業は体力的にシンドいところがありますが、周りの男性が優しいので、シンドい部分はフォローしてもらっています。建設業は、女性でも活躍できる業種だと思っています。

板倉 建設業界はまだまだ「3K」のイメージが払拭できていないところがありますが、国を挙げてイメージを変えていかなくちゃいけないと考えています。昔に比べれば、建設業界は働きやすくなっていると思っています。女性はもちろん、だれしもが活躍できる場所があるのが建設業界の魅力だと思います。その辺のところを、私の後輩をはじめ、これからの方々にしっかり伝えていきたいと思っています。

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