国交省とNEXCO東日本、除雪作業の「発注・積算」を見直し、「衛生」を活用へ

準天頂衛生「みちびき」を活用したロータリー除雪車

除雪なんて誰がやる?国交省は「発注・積算」を見直し、NEXCO東日本は「衛生」活用へ

除雪作業を担う地域建設業の不足

春にもかかわらず暑い日が続き、記憶が薄まってきた方もいらっしゃるかもしれませんが、ことし1、2月の大雪被害は驚異的なものでした。

北国では近年、非常に強い降雪が集中的かつ継続的に発生する一方で、地方部においては人口減少と高齢化に伴う除雪作業の担い手・後継者不足が深刻な問題となっています。

今後の除雪について、国や道路管理者はどう考えているのでしょうか。

儲からないから担い手不足の構図

除雪作業の課題は大きく分けると「採算性」と「担い手」が挙げられます。

採算性の課題は、除雪作業が儲からない仕事だということです。除雪作業は、深夜出勤など厳しい労働条件に対して、適正な利潤が確保されているとは言い難い状況にあります。

儲からない仕事であれば、やりたい人は減少し、熟練技術者の高齢化によるリタイアに輪をかけて、担い手不足が加速する原因となっています。

除雪事業の発注・積算を見直し検討

国土交通省は相次いだ大雪被害を踏まえて、有識者らによる検討会を2月に発足。4月23日に対応策の中間取りまとめを示しました。その中には、除雪作業を担う地域建設業者を確保するための契約方法の改善や、予定価格の適正な設定を盛り込んでいます。

具体的には、国が中心となって適正な利潤が確保できるように、「他の工事と一体的な発注」「複数年契約」などといった除雪作業の契約方法の改善や、「積算の見直し」など予定価格の適正な設定の取り組みを検討すべきであるとまとめています。

取りまとめでは、除雪事業にあたった建設業者等について、ことしの北陸地方を中心とした大雪でも、難易度の高い除雪作業に不眠不休で取り組み、道路交通の確保に大きな役割を果たしたと評価。一方で、除雪機械の老朽化や自社保有機械の減少、熟練したオペレーターの高齢化・減少など厳しい状況に置かれているとし、担い手の確保・育成が重要だと指摘しています。


準天頂衛星「みちびき」を活用した除雪支援

担い手不足に対応するために、道路管理者は省人化技術の開発に乗り出しています。

NEXCO東日本は、ことしから4機体制での運用が開始予定の準天頂衛生「みちびき」を活用して、高精度で除雪車の位置が把握できるシステムを開発しました。準天頂衛星からの信号と高速道路の高精度地図の情報を組み合わせることで、誤差数センチメートルで走行車線へのハミ出しやガードレールなどへの接触を予測できる優れものです。

開発した除雪運転支援システムは、除雪車両の位置や車体の向き、作業上の注意情報などをモニターに表示します。これまで熟練オペレーターの技術に支えられてきた外側線や路肩防護柵の位置把握、ホワイトアウト時や夜間の除雪装置(プラウ)の操作を一目で確認することができるようになります。

実際に作業に当たったオペレーターにお話を伺うと、「非常に正確で、10年分くらいの経験が短縮できると感じた」と効果を口にされていました。

除雪運転支援システムのモニターの様子。車の中にいながら、道路と除雪車の状況が把握できる

白線の直上までの正確な除雪をみせた

開発の契機は、将来的な担い手不足への強い懸念でした。北海道では建設業者と並び、農業従事者が冬場の閑農期に除雪作業に従事していますが、農業も建設業と同様に高齢化や担い手不足が深刻化しています。そこで、農業機械のICT化などが専門の北海道大学・野口伸教授と2014年度から共同研究を開始。試行錯誤を経て、システムの開発までこぎ着けました。

NEXCO東日本は、次の冬から道内すべての基地にシステムを搭載した除雪車を導入する予定。さらに今後は、除雪車の作業操作や運転制御技術、高速の除雪トラックなど技術開発を進め、2025年以降に完全自動化への移行を目指しています。

大雪など気候変動は激甚化へ

国土交通省と環境省、文部科学省、農林水産省、気象庁が共同でまとめた日本の気候変動に関するレポートによると、将来的には内陸部での大雪が増加する可能性が示されています。

政府は、大規模な自然災害への対応の大本となる『国土強靱化計画』に暴風雪や豪雪のリスクを追加する方向で、現在検討を進めています。

除雪の担い手不足は、地方部や建設業だけの問題でない段階まで来ています。持続的な除雪体制の確立へ対応が急がれます。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
「毎晩、SMしてます!」愛、自慰、SM・・・除雪機械を知るための3つの隠語とは?
【衝撃】除雪を誰もできなくなる日が来る…「建設業の悲鳴」を聞け!
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
「いいのは東京だけ」施工管理技士の求人と応災力
いくら売上げても、地域から批判される会社はダサい。「カッコイイ建設業」の条件とは何か?
「族議員は悪じゃない」全国建産連が政治団体を創立したワケ
日刊全国専門紙『建設通信新聞』で働く若き熱血記者。学生時代から記者に憧れ、某全国系経済新聞でバイトする。卒業後、証券業界で厳しく激しく育てられてから入社。一般家庭への飛び込み営業も経験しているため、少々の苦労は苦労と思わないようにしている。霞が関を根城にして活動中。
建設通信DIGITAL web刊⇒ https://www.kensetsunews.com/web-kan
  • 施工の神様
  • エトセトラ
  • 除雪なんて誰がやる?国交省は「発注・積算」を見直し、NEXCO東日本は「衛生」活用へ
モバイルバージョンを終了