土木施工管理技士なのに積算できない?
税金で土木の公共工事を行う際、発注者がはじき出した工事金額は、適正価格かどうか。――それを判断するために必要な能力が「積算」である。
土木業界で働いていれば、何度も積算という言葉を耳にするのだが、土木施工管理技士で積算ができる人は意外と少ない。
ということは、積算ができる土木施工管理技士は、周囲から優秀だと思われる可能性が高いことを意味する。
もし今後も土木業界で仕事を続けていくなら、積算能力ぐらい身に着けておいて損はないはずだ。
積算できる土木施工管理技士が少ないワケ
そもそも積算とは、工事にかかる必要コストを、事前に予測して算出することである。
しかし、基本的には、工事発注者が会計法に基づいて算出して、われわれ受注者に提示してくることがほとんどなので、工事を請け負う土木施工管理技士が、積算業務に携わる機会は少ない。
だから、積算できる土木施工管理技士が少ないのだが、下請だって積算をできるようになったほうが本当は良い。
なぜなら、公共工事は全国各地で発注され、多くの発注者が積算をしているので、発注者個々によって、積算ではじく金額が異なる。その中には、工事金額を大幅に減額してくる発注者もいるのではないか?
いやいや、「土木請負工事工事費積算基準」という積算の基準が設けられているので、そんな酷いことはないはずだが、たまに明らかにおかしい工事金額を積算してくる発注者もいる。
そんなとき、積算を理解しておかないと、おかしい工事金額を積算してきた発注者に対して、根拠を持って反論することができない。つまり、下請が工事を請け負けしないためにも、積算能力は必要となる。
土木請負工事工事費積算基準とは?
土木請負工事工事費積算基準は、都道府県ごとに異なる。大まかな項目は同じだが、内容や数字が都道府県によって違う。
土木請負工事工事費積算基準には、細かな積算項目ごとの基準が定められており、工事費のほかにも、一般管理費や消費税についての基準が記されている。
しかし、紙にすると、1000ページを超える膨大な文書なので、自分に関係のある地域の大まかな工事費の基準を把握する程度で良い。
積算条件は、土砂や産業廃棄物等の運搬距離についても定められていて、例えば、神戸市の場合、0.3km~60.0kmの間で16区分しており、どの区分に位置するかで積算が変わる。
また、盛土などの工種ごとにも積算条件は定められており、平均幅員、施工数量、障害の有無によって積算の基準は変化する。一般的な盛土工の積算には、盛土の敷き均しや締固め、その施工に掛かった機械や労務費、材料費も基本的に含む。(※一部の地域では、労務費は別として積算している。)
このような知識がなければ、発注者が適正な積算をしてきたのか判断できないので、しっかり自分の地域の基準を理解しておく必要がある。
利益を得るために積算を理解する
かく言う私も、昔は「土木施工管理技士は、管理業務だけやっていれば良い」と思い込んでいた。
しかし、積算業務を自らできるようにならないと、下請けの施工業者に適正な支払いをすることができず、良好な関係を保てないという現実に直面してから、考えが変わった。
また、もしも施工業者の中に積算のできる人がいれば、積算の金額について、元請の監督に突っ込んでくることもある。
つまり、土木施工管理技士も、施工業者も、適正な利益を受けるためには、積算を理解する必要があるということだ。
少しでも積算業務をこなして、適正な工事金額を自分一人ではじき出せるくらいになれば、土木施工管理技士としてだけでなく、工事に携わる技術者として優秀な人材に近づけるだろう。周囲の見る目も変わってくるはずだ。