なぜ建設会社にICT技術が普及しないのか?3つの解決方法を伝授

なぜ建設会社にICT技術が普及しないのか?3つの解決方法を伝授する

建設会社にICT技術が普及しない理由

建機や測量器などのICT技術は、非常に便利で効率的だ。

にも関わらず、なぜ現場に普及しないのだろうか?

その理由は大きく分けて3つある。

ICTが建設業に普及しない理由その1「商品が高額」

ICT建機は、普通の建機より1000万円ぐらい高額となる。そんな費用を中小企業の土建屋が導入するのは難しい。

国や自治体はいろいろな補助金や税額控除政策で、ICT技術の普及促進を図っているが、それらを使ったところで雀の涙だ。

建機のレンタル費用については現在、国が全額面倒を見てくれているが、効率化するためにお金が余計にかかってしまっては本末転倒であり、税金の有効活用とは程遠くなってしまう。

公共事業が一気に減った時期に形成された不信感が未だに抜けない中小企業は、まだまだ金額的にも気分的にもICT技術への投資は厳しいだろう。

ICTが建設業に普及しない理由その2「建設労働者の高齢化」

ICTが建設現場に普及しない2つ目の理由は「建設労働者の高齢化」だ。

建設業は年々高齢化が進み、若年者が就職してきても、すぐに辞めていく悪循環を繰り返している。

建設業でしか生きていけない、他の業界にジョブチェンジ出来ないような人間が必然的に生き残る世界だ。

高齢者にICTと言ったところで頭がついてこない。未だに携帯電話はガラケーという人間も少なくない。

業務効率化のためにもICTを導入したところで理解するのに時間がかかってしまい、逆に効率化の妨げになってしまう。


ICTが建設業に普及しない理由その3「経営者への不信感」

3つ目の理由は、「経営者への不信感」である。

建設業界に対するICTの営業でよくあるケースが、経営者が「すごく良い!」という反応なのに、現場の人間が「ダメ!」と言うので、商談がまとまらないパターンだ。

現場の人間は、基本的に会社の経営が良くなろうが、悪くなろうが関係なく、自分の事しか考えていない。

ICTを導入したら、仕事をもっとやらされて、人が足らない現場でも、さらに人を減らされるのではないかと、自分中心に考えてしまうのだ。

マシンコントロールでなく、マシンガイダンスで十分

——そこで、私が思う解決策を紹介したい。

まず、「商品が高額」である点だが、ICTについてよく勉強すべきである。

ショベルカーに関していうと、多くの人は設定の位置で自動的に止まってくれるマシンコントロールを初めに導入検討して、見積もりを見てその高額な価格を前に導入を断念してしまう。

しかし、マシンコントロールでなくても、オペレーターの腕があれば、マシンガイダンスでも十分なのだ。国が3Dを推し進めているが、最近は2Dも出てきていて、金額は遥かに安く導入することができるし、業務効率化も十分に可能だ。

ちなみに2Dマシンガイダンスは、メーカーにより異なるが150万円程で導入することができる。


若手をICT関連の責任者にする

「建設労働者の高齢化」については、とにかく若者の会社定着率を上げよう。

私は今までいろんな建設業者と接してきたが、従業員の定着率が高い施工業者というのは、求人情報を出さなくても人が入ってくる。

定着率を上げるための策は、「残業を減らす」「決めた休日は何があろうと取らせる」「仕事用の携帯電話は、会社に置いて帰らせる」だ。建設業なのにそれは難しいという人が大半だろうが、1人退職して求人情報出すのにいくらかかるか考えてみてほしい。余裕で20万円は超える。

ハローワークなら無料というが、いい人材はハローワークには少ない。過去にハローワークから来た労働者でいい評判を聞いたことがない。

そして若手が会社に定着したら、ICT関連の担当者にしよう。一人だろうと、ひとつの部署を持たせて責任を与えれば、自信を持って会社を引っ張っていく存在になり、必然的に社内のICT化は進むだろう。

建設技術者の給与も上がるICT導入

最後の「経営者への不信感」という問題を克服するためには、従業員の意識を改革するしかない。

つまり、ICTを推進することで会社が儲かり、そうすると自分の給与も上がることを認識させることだ。

現場が効率化しても、自分達に利益がないと不信感は募る一方である。ただでさえ、少ない人員で現場を回し、ICT導入によって、さらに人員を減らされて、給与が同じままでは労働者からすれば、割に合わないとしか思えないのだ。

その不信感や、悪循環を断ち切るには、給与を上げるしかない。ICT導入と同時のタイミングで給与を上げれば一番いいだろう。元請けからお金が入ってこなくても、ICT導入と同じタイミングで、給与アップしなければいけない。

そうすると従業員は、ICT以外でも自分の現場を効率化できないか、自ら考えるようになり、ICT建機をどうやったら使えるか学ぼうとする。

ICT技術の導入は、財務だけでなく、社内全体の改革も同時に実現できる可能性を秘めていると肝に命じてほしい。ICTの導入を検討しているなら、導入の効果を最大限に発揮しやすい社風にしていくことが大事だ。

そのチャンスが今の日本の建設業界には来ている。チャンスをつかむのは、今だ!

ピックアップコメント

アイコンストラクションを進めたいのは分かるが、元請けからお金が入ってこなくても、ICT導入と同じタイミングで、給与アップしなければいけないって、そんな英断できる年老いた経営者がいるだろうか。その点、私の地域では世襲した若い経営者は先取的な取り組みをしていると思う。

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高校卒業後、土木工事の現場や測量などに携わってきました。過去の仕事のおかげで繋がりも広く、いろいろな分野の裏話を知る機会に恵まれているため、建設現場の皆さんのお役に立てる記事を書ければと思っています。
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