建設業で苦しむのは、我々で最後にしたい
私は健全な建設業界を作りたいと切に思っているが、どこから切り口を作ればいいのかわからない。
国交省にリークしても助けようとしてくれないし、リークしたところで営業停止が関の山だ。であれば、私が建設業のためにできることは何か?
今後の建設業を変えるために、現場の声を大にして伝えておく意義は大きいはずだ。
後世の人たちが、我々のように建設業界で苦しむことがないようにしなければならない。そのためには、今、我々が血を流さなくてはいけない、そんな気概も必要なのではないだろうか。
指値発注という地獄の実態
私の会社は、解体工事を生業としている。
もともと鳶の会社だったが、ある時、元請業者から解体工事もやらないかと声を掛けてもらい、現在は解体工事をメインで施工するようになった。
その結果、売上は最初の半年で○億円と、今までの約5倍に伸び、現在の売上は10倍に伸びている。しかし、その実態はといえば、利益はほとんど無いどころか赤字である。
なぜか?
その元請業者は、工事金がすべて完工払いで、工事完了〆後50日の支払いという支払い済渡である(※編集部注:取引代金の締め日から支払日までの猶予期間。下請事業者に対する支払は現品受領後60日以内と下請法で決められている)。
それでも最初は良かったが、次第に「追加工事代金は次の現場で支払う」と言うようになり、次の現場では「前回の現場の追加を合わせてコレね」と指値発注に発展した。
その元請業者は、完工払いなので融資に依存して、下請業者と自社の出費に当ててはいるものの、資金繰りが追い付かないのが実情だった。
そこで私は元請業者に「出来高分を前倒しで頂きたい」と話した。それが運の尽きだった。
「先払いが欲しいなら、指値を飲むのが当然」と言わんばかりの鬼対応で、私は仕方なく指値発注を飲む結果になった。
本音では工期が短く断りたい仕事内容だったが、工事を断ると自社の資金繰りがショートに直結してしまうため、受注せざるを得なかった。(短期借り入れ「現場引当金」をするためには、工事注文書が絶対に必要なため、受注しなければ借り入れができない。赤字運営になっているので借り入れをしなければ、下請けへの支払いは出来なくなってしまう。)
元請業者はピンハネ怪獣
泣く泣く指値発注を受けたその現場は、振動騒音を出せばクレームが来るのが解りきった、住宅街での解体工事だった。
「ブレーカーを使えばクレームが来るから、この金額では足りない」と元請業者に再三訴えたが、「大丈夫だから」と押し切られた。
工事に着手し、ブレーカーを使ったところ、案の定、クレームが殺到。もちろんブレーカーは超低騒音型を使用していたが、現場は施工ストップ。その後、工事を再開するときには、1日3時間限定の作業、土曜日も作業禁止となった。さらにブレーカ作業は、斫り小屋(遮音シート小)内での作業に限定された。
毎日のようにクレームが入り、近隣対策費はかさむ一方、近隣家屋のクレームはすべてが解体工事のせいだと元請が対応するたびに修繕費が来る。
この修繕補修費もすべて我社で工面。近隣対応が大変なのですべて了承し、請求だけを我社あてにして修繕する始末。当然、近隣対策費などは見積もりには含まれない。
こうしたトラブルによって発生した追加工事代金は一切もらえず、工程が遅れると前々から断っていたにもかかわらず、「間に合うように」という厳命が下されるのみだ。
元請業者は、平気で無理難題を言う「怪獣」に化けていった。
涙を呑むのはいつも末端施工会社
元請業者は完全なブローカーで、現場代理人も常駐しない。工事金額は億を超えているのに、管理技術者もつけない。私の会社に発注しているのだから、管理技術者の配置は必須条件のはずである。
工事の丸投げ行為は禁止されているにも関わらず、たまに現場に来て文句を言うだけの代理人。
私の会社では主任技術者を配置しているが、コンプライアンスは皆無。しかも、共通仮設工事どころか請負金額内に、主任技術者の人件費もすべて含むと言い、現在は当然とされる法定福利費も一切もらえない上に、「社会保険など入れと言った覚えは無い」と言い出す始末だ。
結局、現在の日本の法律は、ザルではないが取り締まる者がいない、と思わざるを得ない。
弁護士に相談しても、中小企業連合会に相談しても、駆け込みホットラインに相談しても、解決策は無く、最終的にたどり着いたのは、「赤字を増やす前に手切れをするしかない」という結論だけだった。単純に言えば、倒産するしかないというワケである。
こんな現状の建設業界に、どうして若者を就職させたいと思うのだろうか。国交省の役人も、少しでも良心があれば、建設業界に若者を誘引する気にはなれないはずだ。どうせ大手企業にしか眼中にないのだろう。
私を含め、建設請負トラブルは後を絶たないし、涙を呑むのはいつも末端施工会社である。
未施工会社は全滅すべし?
私は現在も、自分の会社を倒産させて、この環境から脱出したい気持ちが80%ある。
しかし、従業員やその家族、私にも家族はいる。そのことを考えると現状を維持し、赤字を増やすしかないのか、と、いつかはほころぶ会社運営を維持している。
もう建設業はうんざり。二度とやりたくない!
所詮、技術ではなく、太いパイプを持ったピンハネ業者が君臨し続ける。どの業界でも変わることのない日本の体質。贈収賄で万事が決定し、ダンピングによる値崩れ、入札談合が繰り返され、安全は二の次さんの次。
もはや建設業界の健全化が全うする頃には、IoTやAIによって現場作業員や末端施工会社は、全滅しているのだろうか。
建設業に明るい未来を願ってはいけないのだろうか……。
元請変えればいい。正直未だにそんな元請いるのか(民間系はまだ割と多いかな?)と思うけど、そこまで考えているなら自ら元請業に方針転換してみたら?民間はあまりやらなからわからないけど公共の元請は元請で大変よ。今の法律は直接関係無くても原則全て元請の責任になるからね、ちゃんとした代理人、技術者は頭よくないとできないし責任を負う立場上、偉いんだよw