コンクリート技士・コンクリート主任技士 試験対策3

コンクリート技士・コンクリート主任技士 試験対策3

シェア3割「混合セメント」

「ハーフ&ハーフ」と聞いて何を思い浮かぶだろうか?ビール?もしくはピッツァ?食べ物を連想した人には申し訳ないが、やはり「セメント」の話である。

とはいえ、せっかく出たイメージなので、「とりあえずビール!」からいってみたい。

普通のビールと黒ビールを半々で混ぜ合わせたものが「ハーフ&ハーフ」。スッキリしたのど越しの向こうに、香りや深みのある味わいを同時に楽しめる一挙両得なビールである。

ビールとジンジャーエールをハーフ&ハーフで混合すれば、ビールの苦みを緩和しつつ、飲み口のよい「シャンディガフ」の出来上がりだ。

ビールとトマトジュースを混ぜると「レッドアイ」。トマトの爽やかな味わい、果汁感がビールの苦みをマイルドにする。

いきなりビールの話では不謹慎だろうか?ではコーヒーと牛乳のハーフ&ハーフ、「コーヒー牛乳」ならばどうだ。豆の性質や、ミルクの濃さの違いで、「カフェラテ」「カフェオレ」などと呼ばれたりもする。コーヒーの苦み・コクをミルクで調整し、飲みやすいオリジナルブレンドをもつ店も多い。

長々と例を挙げたが、伝えたい事は素材それぞれの特徴を混ぜ合わすこと。それによって、単体ではなかった味わいが生まれる。

混合セメントもまったく同じだ。

  • 普通ポルトランドセメント(普通セメント)と高炉スラグ(鉄鉱石のゴミ)を混合した「高炉セメント」
  • フライアッシュ(火力発電所の燃えカス)を混合した「フライアッシュセメント」
  • シリカフューム(電気炉の排ガス)を混合した「シリカセメント」

この3種類がJISで制定されている「混合セメント」だ。それぞれ混合の割合によりA種・B種・C種と分けられる。

混合の分量はA種「5%~10%」、B種「10%超え~20%」、C種「20%超え~30%」。10・20・30と並んでいるので覚えやすい。

ただし、混合セメントの中で一番出荷されている「高炉セメント」だけは特別だ。A種「5%~30%」、B種「30%超え~60%」、C種「60%超え~70%」。30・60・70、これだけは暗記してほしい。

だが、実際に製造されているものに関していえば、B種がほとんどである。何故か?

A種のような混合比率の低いものは、ベースとなっている「ポルトランドセメント」とほとんど変わらないので、混合の特性が得にくい。コーヒーの中に5%程度のミルクを入れたとしても、味の変化はほとんどないといっても過言ではないだろう。

混合セメントのJIS規格


混合比がコンクリートの性質を決定(高炉スラグ)

高炉スラグを混合した「高炉セメント」について詳しく見ていこう。ここでは代表的なB種(30%超え~60%)を取り上げたい。

混合セメントの密度(比重)は、普通セメントより軽い。普通セメントの密度が3.15であるのに対し、高炉スラグは2.90程度。

これを半々で混ぜると密度はどうなるか?(3.15+2.90)/2 = 3.025 → 3.03

高炉スラグ50%混合の高炉セメントの密度は 3.03㎏/m3。単純な足し算・割り算で求められる。

性質も同様の足し算・割り算、混合比率で現れる。

さて、普通セメントの組成を覚えているだろうか?

  • C3S けい酸三カルシウム
  • C2S けい酸二カルシウム
  • C3A アルミン酸三カルシウム
  • C4AF 鉄アルミン四カルシウム

これらが半分に減り、高炉スラグに置換される。

それぞれの役割をおさらいしよう。

C3S けい酸三カルシウム (エーライト)

初期の強度発現、水和熱の発生に寄与する。ということは、これが半分に減ると、初期の強度は出にくいが、水和熱の発生を抑えられる。マスコンクリートには有利だ。

C2S けい酸二カルシウム (ビーライト)

長期の強度発現に寄与する。これが半分になると、後半の強度の伸びも小さくなる。

しかし安心してほしい。その分、高炉スラグには「潜在水硬性」という特性があり、セメントの特性が半分になった分以上の強度を後から補完してくれる。

C3A アルミン酸三カルシウム (アルミネート)

初期の水和反応が非常に早く、収縮量も大きい。化学抵抗性は小さい。

この特性が半分になるということは、熱の上昇、収縮量も減るということだ。

C4AF 鉄アルミン四カルシウム (フェライト)

強度発現に寄与する特徴はない。

高炉セメントの特徴

高炉スラグによるデメリットも紹介しておこう。

ポルトランドセメントの反応によって、水酸化カルシウム<Ca(OH)2>が生成される。

コンクリートのアルカリ性の源であるが、これが半減するということは中性化しやすいということにつながる。

しかし先ほど触れた、「潜在水硬性」によって、ケイ酸カルシウム水和物<C-S-H>が生成され、毛細管空隙を埋める分、コンクリートは密実な組織となっていく。結果的には、長期強度で普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートよりも強い強度を出すことも、よく知られている。

以上、「高炉セメント」の特徴を簡単にまとめると、

  • 化学抵抗性向上
  • 水和熱の低減
  • 緩やかな水和反応
  • 毛細管空隙が埋まり、緻密化(潜在水硬性)

などが挙げられる。

強度増進のメカニズム


混合比がコンクリートの性質を決定(フライアッシュ)

実は「高炉セメント」の特徴は、フライアッシュを混合した「フライアッシュセメント」についても当てはまる。

詳しくは触れないが、特徴を挙げると、

  • 化学抵抗性向上
  • 水和熱の低減
  • 緩やかな水和反応
  • 毛細管空隙が埋まり、緻密化(ポゾラン反応)

デメリットも、水酸化カルシウム<Ca(OH)2>の半減により中性化しやすい傾向となるのは同じ。

ここで、フライアッシュセメント特有の欠点をひとつ紹介しておく。

それは、「空気量の管理が難しい」ということだ。フライアッシュ中の未燃カーボンがAE剤の働きを阻害し、AE剤の添加量が通常よりも大幅に増えてしまうことを覚えていてほしい。

潜在水硬性とポゾラン反応

最後に強度増進に関する、「潜在水硬性」と「ポゾラン反応」について。

呼称は異なるが、それぞれのメカニズムはほぼ等しい。

高炉セメントのメカニズムは、普通セメントと水が反応して、水酸化カルシウムが生成される。

その水酸化カルシウムに高炉スラグが刺激されると、水に反応する。これが「潜在水硬性」。

フライアッシュセメントのメカニズムは、普通セメントと水が反応して、水酸化カルシウムが生成。その水酸化カルシウム自体とフライアッシュが反応する。これが「ポゾラン反応」。

どちらも初期強度は低いが、長期強度を増進させる反応である。ただし、繰り返しになるが、混合セメントはB種以上でないと効果は小さい。

シリカセメント(混合セメント)、「その他のセメント」(エコセメント、特殊セメント)については、細かく分析するまでもない。大事なところだけ丸暗記で対処できるだろう。文献などで特徴を確認しておいてほしい。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
コンクリート打設日の降水確率は30%…打つべきか、延期すべきか?
【 黒舗装 vs 白舗装 】コンクリート舗装の新技術「1DAY PAVE」とは?
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
【建設業の闇】ブラック派遣会社が「週休2日実現」の救世主?
コンクリート技士100%、コンクリート主任技士90%の合格を目指す講習「GNN(元気な生コンネットワーク)アカデミー」の内容を再構成し、過去問だけでは得られない体系的なコンクリートの知識と学習方法を紹介します。講師は、株式会社JICの代表取締役・森政伸氏。
モバイルバージョンを終了