鳥取県建設業協会 会長/こおげ建設 代表取締役 山根敏樹氏

鳥取県建設業協会 会長に聞く!鳥取県の建設業の“これから”

鳥取県建設業協会の会長にインタビュー

今年5月、鳥取県建設業協会の新会長に、こおげ建設株式会社の山根敏樹代表取締役が就任した。

「業界の底上げと、業界の皆様の会社の繁栄を目指して精進をして参りたい」と新しい船出を高らかに宣言した山根会長。

日本で一番人口が少ない鳥取県の建設業は、今どのような課題と将来への展望を抱えているのか?

鳥取市の南に位置する八頭町のこおげ建設を訪ねた。


掲げたフレーズは「儲かる建設業」と「従業員の幸せ」

鳥取県建設業協会は東部建設業協会、中部建設業協会、西部建設業協会、日野建設業協会、八頭建設業協会の5協会から成り、新任の山根会長は八頭建設業協会の会長も兼任している。今年4月、4期目の続投が決まった。

新たに鳥取県建設業協会の会長職に就いたことについて、山根会長はこう話す。

「やはり会合に出る機会が増えたので、随分忙しくなりましたね。1年に1回の会合でもその数が増えると大変です。東京や広島への出張もあり、皆さんと顔を合わせてコミュニケーションを取る機会が増えました。中心は自治体の会合です。私はまだまだ会を代表して意見を言うに留まっています、具体的な提言をするような能力はありませんので(笑)」

そう謙遜する山根会長。掲げているキャッチフレーズは2つ。「儲かる建設業」と「従業員の幸せ」だ

「鳥取県建設業協会の加盟企業もピーク時より6割減って、今は270社といったところです。16年前の予算削減の影響ですね。従業員の幸せを第一に考えながら、しっかり稼いで余裕のある経営を一丸となって推進していきたい。

また、雪かきやボランティアなど地域の弱い部分を助けていきたいと考えています。雪かきなどはお金をいただきますが、インフラのことですので、我々の社会的使命だと捉えています。」

建設業の人材確保の難しさと週休2日問題

鳥取県の建設業が抱えている問題について山根会長に尋ねると、やはり「人材の確保」を挙げる。

「土木の予算はおよそ12兆円から6兆円に半減していますから皆さん先が見えず、人を雇わなくなっています。でも、それではいけないんですよね。教育もできないとなると、社員のモチベーションも上がりません。

そもそも応募者も少ない。鳥取で言うと、工業高校の土木建築のクラスは1クラス40名程度に過ぎません。その有望な40名も半分は県外に出てしまい、残りも全く違う業種に就職してしまいます。」

鳥取県建設協会は鳥取市内の鳥取県建設会館内にある

新卒だけに限らず、建設業に携わった人に見限られてしまうことも多いと山根会長は話す。

「休みが少ないのと、資格を持たない場合はどうしても給料が安くなってしまいますからね。休みに関しては最近、週休2日の導入で日給月給の技能者をどうするのか?という問題も出てきています。

当然、工期が遅れることにつながるのでそこの配慮も必要です。ここを併せてどう改善していくのかも問われていますし、改善しない限りは建設業界を見限られてしまう状況が続いてしまうという危機感を持っています。」


こおげ建設の現状とこれから

山根会長が代表取締役を務める、こおげ建設の現状についても聞いてみた。

「現在は住宅を始めとする民間と公共を半々でやっています。公共では300億円規模の中央病院、市役所や学校と立て続けに仕事をいただいたことで、今がちょうど高い山の頂点といったところでしょうか。来年から下がることは確実です(笑)」

昭和27年創業のこおげ建設(鳥取市八頭町)。従業員は53人。介護・福祉も扱う総合建設企業だ。

ただし、理想を言えば繁閑の差がなく、毎年一定の仕事ができるのがありがたいという本音もある。

「我々は毎年右往左往して、毎年ギリギリなところが多いわけです。特に地方は民間の力が弱いので、公共に頼らざるを得ないことが多い。毎年、安定して利益確定させていただくことで人材確保や人材育成できますので、そこは公共とはいえ、どちらが偉いとかではなく、対等な関係として訴えていきたいところですね。」

今年の秋からは、7月の西日本豪雨などで発生した自然災害の復旧の仕事が入る見込みだ。

「今回の豪雨で道路や川がたくさん壊れてしまいました。私たちは地域あっての会社ですので、何とかしてこの地域を守りたい。人のやりくりなど大変な部分もありますが、地域の要望に応えるために一生懸命頑張ります。」

地震、水害。鳥取県の災害と建設業の関係

災害と建設業の関係について「まずは役所からの情報が頼り」と山根会長は語る。

「まずは役所との連携が求められます。この災害で何が必要なのか、何人必要なのか。できるだけ正確な情報を提供して欲しい。全てはそこから始まります。災害と一口に言っても、地震や水害など多様なのでそれに合わせた経験や技術も必要です。

2年前の鳥取県中部地震のときは中部建設業協会が県とタッグを組んでいました。うちからも人員を派遣しました。家屋の浸水が中心の水害では地権者の許可なく壊せませんが、スピードも求められるというジレンマがあります。どの災害にもそれぞれ違った難しさがあります。」

「夜だろうが雨だろうが、復旧のために全力を注ぎたい」と思うからこそ、国や自治体に改善して欲しいこともある。

「災害の現場は非常に労働条件が悪いわけで、どんなに注意をしていても二次災害の危険があります。それだけに労災は手厚くして欲しいと思います。災害時応援協定を締結しているわけですから、そこは危険な場所に大切なスタッフを派遣する以上、しっかり整備して欲しいですね。八頭町の現場も十分気を付けて復旧していきます。」

鳥取県を支える鳥取県建設業協会とこおげ建設の活躍に期待したい。

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1980年生まれ。妻の故郷である鳥取県に移住したライター。 立教大学卒業後、コピーライター、構成作家を経て田舎暮らし系フリーランスに。好きが高じて自宅にビールサーバー&ビアバー設置、ブログ『ビアエッセイ・ドットコム』を運営。ビアエッセイストを名乗って講師活動も行う。ちなみに自邸はオープンシステムで建築。
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