i-Constructionの本音、i-Construction導入の問題点
「i-Constructionの本音」と題して、7回にわたって連載していきたい。今のところ、ざっと下記のような内容を予定しているが、変更する場合もあると思う。
- i-Constructionの本音1 i-Construction導入の問題点
- i-Constructionの本音2 i-Constructionの本質とは
- i-Constructionの本音3 実例から見えるICTのすごさ
- i-Constructionの本音4 課題も多くあり
- i-Constructionの本音5 向かう先はどこへ
- i-Constructionの本音6 地場こそいま立ち上がれ
- i-Constructionの本音7 第二章はすでに始まっていた!
最近は困ったことに、ICT土工を実際にやったこともないのに「i-Construction」の講釈を垂れる施工の素人も増えてきている。そういった机上の生産性向上論に警鐘を鳴らし、かつ現場での実践者を増やすことが、当連載の目的である。
i-Constructionの神髄を知っている人
「やってみて、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」とは、かの有名な山本五十六の言葉である。
「やってみる精神」は、どの分野や現場でも必要な精神であり、われわれ建設業界において国土交通省が提唱した「i-Construction」も同様である。昨今の建設業界では、この「i-Construction」という言葉があちこちで広まり、猫も嫡子も「i-Construction」と発する。しかし、本当にその神髄を知っている人はどのくらい居るのであろうか?
インフラを構築していくプロセスには、多くの関係者が携わる。まず大きな構想を国が考え、それを元に調査段階では測量会社や地質調査会社が多くの調査を行う。設計段階ではこれらの調査結果を使って、建設コンサルタントが基本設計や概略設計、詳細設計へと計画内容をより具現化していく。
次に待ち構えるのが建設会社。建設会社ではこれらの計画を受けて、現地でも施工方法をさらに検討し、設計との差異を明らかにするなど、具体的な方法を検討してから工事に着手する。ここまでで何年もの月日がかかる。
そして施工が終わりに近づくと、国と施工者が立ち会い、施工の出来映えを確認。竣工後は再び国がコンサルタントなどに仕事を依頼して、維持管理・更新フェーズに入る。
建設現場を最先端の工場へ(国土交通省「i-Construction 建設現場の生産性革命 参考資料」より)
上図のように建設生産の一連の流れを見ただけでも、いかに多くの人々がインフラの構築に関わってきたかが分かる。これら大勢の関係者に情報を伝える手段としては従来、書類や写真、2次元図面でのデータ引き渡しがほとんどであった。
しかし、国土交通省が提唱する「i-Construction」は、これらのデータに加えて、各諸元で取得される3次元のデータも扱い、より情報の連携や密度を増し、各所での作業を効率化させようとするものである。
と、ここまでは一般的な話であるが、上述の流れを実際に具体的な案件で「やってみている」人はどのくらいいるのか、自問自答してほしい。各自の持ち場で、各自の立ち位置で、自らICT技術を使い、自らその効果を実感し、自らそれを普及させる努力をしている人はどのくらいいるのかと。
i-Constructionを知らないのに知ったかぶりした人たち
今やあちこちで「i-Construction」のセミナーや講演会、ICT技術の導入に向けた見学会などが行われている。しかし、それらに参加した人たちの、その後の行動が問題だ。参加人数が多いからと言って「i-Construction」が普及するわけではない。
「聞いただけ」「見ただけ」「感じただけ」で終わっている人がどのくらい多いか?「まだここではムリだな」とか「いいのは分かるけどお金かかるし」「そんな予算最初から考えていないし…」「そもそも無くても今までのやり方でできるし」などなど、「できない言葉」「言い訳」の連発である。
「言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」の最初は「やってみて」なのである。やりもしないで、知ったふりして講釈する人の多いこと多いこと。ヒドい場合は、施工のド素人が「i-Construction」の説明をして、CPDS認定を付与している。
もう表面だけの生産性向上論を聞いたり話したりするのはやめて、あなたも実施者になり、その体験を多くの場で広め、真に普及する側に回ろう。
i-Constructionで建設業界が凄いことに
建設業界は100年以上、仕事のやり方がほとんど変わっていない。ツールの発達と、ちょっとした気の持ちようで大きく生産性を高める施策を打ち出した「i-Construction」は、まさに現代の黒船である。時代は繰り返す。黒船来航後、近代文明の開化が行われ、そこから様々な技術革新が生まれてきた。いま、そのまっただ中に我々はいるのである。
だからこそ、いち早くi-Constructionを「やってみた」人が先頭に立ち、多くの人を引っ張らなければならない。所詮やらない人は何を言ってもやらないし、やらない人を嘆くのであれば、やる人を増やしていこう。物事は何事もポジティブが重要である。「やってみて」「言って聞かせる」ところまで、まずは突き進もうではないか。
次回の記事では、この「やってみて」がどのくらい建設業界で凄いことになっているのかという観点で、i-Constructionの「実態」について説明してみたい。役所が作る基準なんで変えられないと思うそこのあなた。是非次回をお楽しみに。キーワードは「カイゼン」である。
>ヒドい場合は、施工のド素人が「i-Construction」の説明をして、CPDS認定を付与している。これは確かにおかしいんですよね。施工全体の話なのに、メーカーが講習行ったりしているのは違和感あります。実際に導入した施工者が行うべきです。