国土交通省「i-Construction大賞」の意味
平成30年度の「i-Construction大賞」を受賞したのは、大臣賞3団体、優秀賞22団体だった。
i-Construction大賞とは、国土交通省HPによると、
建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」に係る優れた取組を表彰し、ベストプラクティスとして広く紹介し、横展開することにより、i-Constructionに係る取組を推進することを目的に平成29年度に創設したもの。
である。
i-Constructionとは、労働人口の急減や五輪需要などに備えるため、ICTを建設現場に導入することで、生産性のカイゼン(2〜5%)ではなく、イノベーション(20〜50%)を期待するものだ。
平成30年度、つまり第2回目の「i-Construction大賞」の受賞者は、以下の通りだ。
i-Construction大賞受賞者(平成30年度)
〇直轄工事/業務部門
NO | 表彰の種類 | 業者名 | 工事/業務名 | 発注 地整等 |
1 | 国土交通大臣賞 | 株式会社加藤組 | 国道54号下布野歩道工事 | 中国 |
2 | 優秀賞 | 宮坂建設工業株式会社 | 一般国道274号 清水町 石山南改良工事 | 北海道 |
3 | 優秀賞 | 株式会社佐藤工務店 | 中野地区道路改良工事 | 東北 |
4 | 優秀賞 | 水郷建設株式会社 | H28西浦右岸大岩田地区築波浪対策護岸工事 | 関東 |
5 | 優秀賞 | 株式会社小島組 | H29 鹿島港外港地区中央防波堤付属施設築造工事 | 関東 |
6 | 優秀賞 | 国際測地株式会社 | 平成28年度上尾道路敷地調査他業務 | 関東 |
7 | 優秀賞 | 共和土木株式会社 | 平成29年度浦山縦工他工事 | 北陸 |
8 | 優秀賞 | 中日建設株式会社 | 平成29年度 庄内川下之一色しゅんせつ工事 | 中部 |
9 | 優秀賞 | 株式会社おかむら | 平成29年度 名古屋港庄内川泊地外浚渫工事 | 中部 |
10 | 優秀賞 | 株式会社吉川組 | 精華拡幅乾谷地区橋梁下部他工事 | 近畿 |
11 | 優秀賞 | 株式会社大竹組 | 平成28年度 大谷地区改良工事 | 四国 |
12 | 優秀賞 | 岡本建設株式会社 | 踊瀬地区道路改良工事 | 九州 |
13 | 優秀賞 | 株式会社大寛組 | 平成28年度港川地区改良外工事 | 沖縄 |
14 | 優秀賞 | 高砂熱工業株式会社 | 経済産業省総合庁舎別館改修 (16)機械設備その他工事 | 官庁営繕 |
〇地公体等工事/業務部門
NO | 表彰の種類 | 業者名 | 工事/業務名 | 発注者 |
15 | 国土交通大臣賞 | 田中産業株式会社 | 一般国道253号(三和安塚道路)本郷サーチャージ盛土(その2)工事 | 新潟県 |
16 | 優秀賞 | 戸田建設・鹿内組特定建設工事共同企業体 | 青森空港整備事業滑走路・誘導路改良工事 | 青森県 |
17 | 優秀賞 | 小川工業株式会社 | 社会資本整備総合交付金(河川) 工事(護岸工) | 埼玉県 |
18 | 優秀賞 | 株式会社正治組 | 平成28年度[第28-D7313-01号](一)静岡港韮山停車場線防災・安全交付金工事(長塚橋橋脚補強工) | 静岡県 |
19 | 優秀賞 | 八木建設株式会社 | H28阿土 南部健康運動公園 阿南・桑野他 陸上競技場整備工事(担い手確保型) | 徳島県 |
20 | 優秀賞 | 増崎建設株式会社 | 一般県道諫早外環状線道路改良工事(盛土工10) | 長崎県 |
〇i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門
NO | 表彰の種類 | 取組団体名 | 取組名 | 本社 所在地 |
21 | 国土交通大臣賞 | 株式会社政工務店 | 平成29年度における株式会社政工務店の取組 | 佐賀県 |
22 | 優秀賞 | ライト工業株式会社 | 道路盛土直下の地盤改良工事におけるICTの利活用 | 東京都 |
23 | 優秀賞 | 株式会社コイシ | UAVによる除草工事の出来形管理について | 大分県 |
24 | 優秀賞 | 一般社団法人Civilユーザ会 | 一般社団法人Civilユーザ会のBIM/CIM推進への取組み | 東京都 |
25 | 優秀賞 | フタバコンサルタント株式会社 | i-Constructionの取組み | 福島県 |
i-Constructionの講師もやっていたのに
正治組は「地公体等発注工事/業務部門」で優秀賞を受賞した。
正治組の大矢洋平氏は、国交省がi-Constructionを提唱する約15年前からICT施工に取り組み、全国でi-Construction導入のための講師も引き受けていた。
i-Construction大賞の「今更感」に鼻白んでいたくらいだ。そもそも、こちらが評価する立場だと思っていた。
ところが、頼んでもないのに「後からi-Con」に表彰されるという屈辱。
しかも、大臣賞ではないというおまけつき。
i-Constructionは、新しいことでもなんでもない
大矢氏が優秀賞を受賞した案件は、橋脚の補強工事。鉄筋を立て込んだあと、乾式吹き付け工法(ポリマーモルタル)で100mm補強する。
従来であれば、膜厚管理は人力だ。足場を組んで糸を張り、丁寧にレベルを出す。その前工程に人も時間もお金も湯水のようにかける。
そもそも50年も前の構造物だ。通りがとっておらず、その形に合わせて塗膜厚を出す。想像しただけでも大変な労力であることがわかるだろう。
優秀賞を受賞した橋脚補強工事。鉄筋を立て込んだあと、乾式吹き付け工法(ポリマーモルタル)で100mm補強する。
しかし、大矢氏はレーザースキャナを半日回すだけで、当該構造物を3Dデータ化。3Dデータを取ってしまえば、あとは吹き付けるだけ。出来型管理も、得られた3Dデータと完成構造物を照らし合わせるだけだ。
きちんと100mm増し厚されているか簡単に確認できるだけじゃなく、鉄筋位置もジョイント部も正確に把握できる。そのため、今後の維持管理ステージに有益なデータとして納品もできる。
ただ、大矢氏にとっては取り立てて「新しい」ことでもなんでもない。
「そんなに大したことじゃないのに、これを表彰されて、なおかつ大臣賞じゃないなんて」
大矢氏の失意は深い。
次のi-Construction大賞では「大臣賞」を取ってくれ
大矢氏と話していると、いくつものヒントが得られる。
ただ「使ってるだけの人」との交流ではだめだ。
仕事を楽しんでいる。使命感に燃えている。情熱をもって仕事にのぞんでいる。
そんな「使う人」との交流から、多くのヒントが生まれる。
次のi-Construction大賞ではどうせ表彰されるなら大臣賞を取ってほしい。
※この記事は『生コンポータル』の記事を再編集したものです。