不発弾の多くは工事現場で発見される / 陸上自衛隊

「不発弾」を工事現場で発見した場合の“正しい対処方法”

不発弾の多くは建設現場で見つかる

人材不足や資材の高騰、週休2日制導入による事実上の工期短縮・・・ただでさえ工期が足りない工事現場で、絶対に“掘り当てたくない”ものがある。それは不発弾と遺跡。運悪く発見されれば、まず工期の延長は避けられない。

不発弾とは、砲弾や焼夷弾、手榴弾などのうち、起爆装置が何らかの理由で作動せず、爆発しなかったものを指す。戦時中の空襲や艦砲射撃で着弾したものだけでなく、旧日本軍が保管していた弾薬なども含まれる。終戦から70年以上が過ぎたが、今もなお爆弾としての威力を保ったまま、地中表層に埋まっている。

東京都港区での不発弾処理 / 陸上自衛隊

陸上自衛隊陸上幕僚監部広報室によると、自衛隊によって処理を行った不発弾の数(全国的な処理件数)は、2015年度は1,392件、2016年度は1,379件、2017年度は1,611件もあったそうだ。

しかもその多くは、建設現場から見つかっている。最近では、昨年12月に東京都と沖縄県で発見され、2019年に入ってからは京都府や山口県で見つかった。

戦時中、全国のほとんどの主要都市は空襲を受けた。特に軍需工場などの軍事施設があった地域は、集中的に狙われた。さらに米軍の爆撃機は帰還する際に、余った弾薬を“標的ではない地域”に捨てて(落として)から帰っている。軍事施設とは関係のない地域で不発弾が見つかることがあるのはこのため。「ウチには関係ない」と思っていた工事現場からも出てくる可能性はあるのだ。

万が一、工事現場で不発弾が見つかった場合、どのように対処すればいいのか。過去に何度も不発弾処理を経験したことがある陸上自衛隊武器学校の教官に、対処方法を聞いてきた。


地域別の発見頻度が高い不発弾

まず地域別に発見頻度が高い不発弾の種類を教えてもらった。

下記の一覧表にある「信管」(※赤丸で記した箇所)が起爆装置にあたる。不発弾処理では、この信管を除去もしくは破壊する。

たとえ信管が残っていても、安全装置が解除されない限りは起爆しないが、衝撃など何らかの拍子で安全装置が解除されると爆発の危険がある。したがって信管は、決して触れてはいけない箇所となる。

関東地区の建設現場で見つかる不発弾

まずは関東地区。度重なる空襲を受けた関東地区では、米軍の焼夷弾がやはり多い。しかし、それ以上に旧軍の砲弾や手榴弾も数多く発見されている。 焼夷弾や手榴弾は“いかにも爆弾”といった形状ではないことを覚えておきたい。

発見頻度が高い不発弾(関東地区)/ 陸上自衛隊

関西地区の建設現場で見つかる不発弾

関西地区でも旧軍の砲弾が圧倒的に多い。大阪では旧軍の砲兵造兵廠(火砲や弾薬などを作る工場)があった森ノ宮駅周辺で、不発弾がよく発見されている。米軍の小銃弾が見つかるのは、終戦後に進駐軍が軍事関連施設を接収していたことが理由と考えられる。

発見頻度が高い不発弾(関西地区)/ 陸上自衛隊


九州地区の建設現場で見つかる不発弾

九州地区では旧軍の砲弾の発見が目立つ。沖縄戦の後、米軍が九州または関東地方に上陸すると予想されていたことから、特に鹿児島県、宮崎県には多数の砲兵部隊が配置されていた。

発見頻度が高い不発弾(九州地区)/ 陸上自衛隊

沖縄地区の建設現場で見つかる不発弾

不発弾が最も多く発見される沖縄地区では、米軍の艦砲弾や迫撃砲弾が圧倒的に多い。沖縄では公共事業の場合、事前の磁気探査が義務付けられている。民間工事でも磁気探査機器やライナープレートの無償貸出しなどを行い、不慮の事故に備えている。また、不発弾に関する情報が地図上で見られるデータベースも公開されている。

発見頻度が高い不発弾(沖縄地区)/ 陸上自衛隊


工事現場で不発弾が見つかった場合の対処方法

では万が一、自分が担当している工事現場で不発弾が見つかった場合、どのように対処すればいいのだろうか。

過去に何度も不発弾処理を経験したことがある陸上自衛隊武器学校の教官によると、素人判断で「不発弾かどうか」「信管が有るのか、無いのか」の確認・判断はせずに、怪しいと感じた時点で速やかに警察に通報してほしいとのこと。110番通報では「不発弾らしきものが出てきた」と伝えるだけで良いという。

工事現場で不発弾を掘り当てた場合は、

    1. 触らない・触らせない
    2. 近づかない・近づかせない
    3. 直ちに110番通報する

を徹底して守って欲しいとのことだ。

工事現場で発見された不発弾の処理方法

自衛隊による不発弾の処理方法/ 陸上自衛隊

自衛隊による不発弾処理は、危険性の度合いにより、

  1. そのまま回収
  2. 信管を外して安全化
  3. 信管を破壊して安全化
  4. 現地で爆破処分

という対処を行っている。

場合によっては、半径数百メートル以内の住民に避難を呼び掛けたり、電車やバス、車などの交通規制を行ったりしなければならないケースもある。

このように、ひとつまたひとつと自衛隊によって不発弾の処理が行われることで、安全な環境に近づいている。

工事業者は、不発弾の第一発見者となる可能性が高い。そのことを常に意識し、万が一“掘り当てて”しまった場合は、身の安全の確保を第一として、冷静な対応を心掛けたいものだ。

■取材協力:陸上自衛隊陸上幕僚監部、陸上自衛隊土浦駐屯地・武器学校

<陸上自衛隊武器学校>
陸上自衛隊武器学校は、陸上自衛隊の各種装備品の整備員を養成する学校。不発弾処理に関する教育なども行っている。戦時中には、予科練(海軍飛行予科練習生)のパイロット養成施設があった場所でもあり、当時の建物や施設なども一部残っている。http://www.mod.go.jp/gsdf/ord_sch/

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建設・通販の業界紙/メディアに身を置くフリーライター。 戦前のコンクリートの“断面”を眺めるのが趣味です。
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