ひび割れ検査時間を40%も短縮
安藤ハザマと株式会社イクシス(神奈川県川崎市)は、「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を活用した床コンクリートの新しいひび割れ検査手法を確立し、建築現場における竣工時の床面ひび割れ検査に適用した。
検査の自動化、記録書類作成作業の削減により、従来目視に頼ってきた検査業務は約40%の時間短縮を実現し、生産性も2倍に向上した。
目視検査は時間や労力も掛かり、今後、建設業界でも現場職員や作業員も同一作業を繰り返し行うような業務はロボットやAI(人工知能)に任せ、より生産性の高い仕事に注力することが求められている中での開発だ。操作は簡単で現場からの評価も上々だという。
開発に携わった安藤ハザマ建設本部先端技術開発部の横井勝己建築技術開発グループ長、羽根田健建築技術開発グループ担当課長、市川達也建築技術開発グループ主任に話を聞いた。
0.1mmのクラックも検出
――ひび割れ検査に着目したのはなぜ?
羽根田健氏 現在、物流施設などの新築工事の需要が活発ですが、大空間構造物の床面施工でのコンクリートひび割れ不具合は竣工時や引き渡し後一定期間が過ぎた後、検査が必要になります。材料の配合調整等により、ひび割れの発生数は減少傾向にありますが、これまでの検査方法では、必要な知識を持つ検査員が二人一組もしくは一人で、近接目視でクラックスケールを用いて実測を行い、その結果を写真やスケッチで記録するため、一連の検査業務に多くの時間がかかっていました。
何万m2という床面積を目視検査することは時間も労力もかかりますし、中腰姿勢での検査は身体的な負担も大きくなります。また、人によって検査精度のバラツキも生まれます。近年でも画像認識によるひび割れ検出技術が開発されていますが、人手を伴う画像取得作業が必要で、さらに取得した画像は解像度のデータが重く、ひび割れ検出から記録作成に相当の時間がかかり、検査業務の効率化が求められていました。
――実際に、どのようにひび割れを検出していく?
羽根田健氏 軽量な走行台車型の検査ロボットが自律走行しながら、床面を自動撮影し、撮影画像からAI(人工知能)によりひび割れを検出し、その結果を自動で図面に表示します。
今回、4階建ての物流施設の新築工事で、倉庫部分、延べ約4万5,000m2に、施工者検査として全面適用しました。ロボット2台とモニタリングシステムを使って、自律走行による床面の撮影、AIによるひび割れの検出、検出データの図面化を行い、実際のひび割れと誤差が少なく信頼性の高い検査記録が作成できました。
――精度は人が行うよりも高い?
横井勝己氏 人間が目視で発見できるひび割れについては、本ロボットですべて発見できています。逆に、目視では発見が難しい微細なひび割れもロボットでは検出できました。また、ひび割れの位置、形状についても、現地とほぼ整合性が取れています。