ヘルメットも安全帯も着けなかった若手時代の話
今の建設業界は、労働安全に関する決まりごとがとても細かく定められています。
「ちょっと厳しすぎるんじゃないの?」と思うところもありますが、現場には至るところに危険が潜んでいます。作業中にバックホーの旋回に気づかずに作業していて、頭にバケットが直撃した人も見たことがあります(ヘルメットを被っていたおかげで怪我をせずに済んでいましたが)。
命を守るためのヘルメットや安全帯ですが、私はまだ若かりし頃に両方の着用をよく怠っていました。
暑いから、とりあえずヘルメットを脱ぐ
21歳の頃、現場作業員として働いていた時の話です。
真夏で、非常に暑い日が続いていました。
当時の私は若かったこともあり、「ヘルメットなんて被らなくてもどうってことない」と思っていました。
現場監督が書類作成をしに事務所に戻ったのを確認してはヘルメットを脱いで作業して、戻ってきた現場監督にこっぴどく叱られていました。
そんなことを続けていたある日、簡易的な防護柵を組む作業がありました。私は若く、体力にも自信があったので、自己判断で安全帯を着用せず、いつも通りヘルメットも被らずに作業を始めたんです。
私をにらみ続ける謎の男
作業を始めて2時間くらい経過した頃。現場にヘルメットを被った見知らぬ男が現れました。
その日はリースしていた機械のメンテナンスに業者が入ると聞いていたので、特に気にも留めずに作業を進めていました。
しかし、その男は私のほうばかりジーっと見てきます。
私は「何見てんだよ」とイラだちながら作業を続けていました。すると現場監督が顔を真っ赤にしながら、すごい剣幕で私のもとに怒鳴り込んできたんです。
「すぐに現場事務所に来い!」
いつもはその場での注意程度で済んでいるので、この時は「今日は機嫌でも悪いのかな?」程度にしか思いませんでした。
言われたとおり現場事務所に入ってしばらくすると、私のことをジッとにらんでいた男も現場事務所に入ってきました。
この男のヘルメットには、横書きで「厚 生 労 働 省」と書いてあります。さすがに私でも少しやばい雰囲気を感じました。
この方は労働基準監督署の職員で、現場の安全管理を抜き打ちで検査に来ていたのです。恥ずかしながら、この時初めて労働基準監督署という存在を知りました。
私がヘルメットと安全帯の着用を怠っていたために、私と現場監督は一日中事務所で説教を受けた挙句、反省文を書くことになりました。
今なら分かる、現場監督の親心
説教と反省文程度で済んだのはマシなほうで、もっと厳しい処分を受けることもあるようです。
私は現場監督の立場になった今だからこそ、毎回懲りずに私のことを注意してくれていた現場監督の気持ちがよく分かります。それと同時に、ヘルメットを脱ぐ若い作業員を見ると「私もそうだったなあ」と、懐かしい気持ちになります。
彼らの気持ちは痛いほどわかるのですが、現場監督としての責任から心を痛めながら注意しています。
現場は危険な場所です。ですが、ヘルメットや安全帯で怪我のリスクを減らすことができます。当たり前のことですが、決められたルールを必ず守って、命を第一に守ってほしいと思います。
そして、あの時の現場監督さん、本当にごめんなさい(笑)
笑いながらゴメンナサイ言うんじゃねぇ。言う側がどんだけ心痛めながら言うているか立場変わって分かってんだろ。立場と気分が分かってんならもう少し真摯にやれ。っめ全く同じ流れのオイラも自分のことは棚に上げて言うてみる