今の働き方改革の進め方に違和感
会社 働く時間を短くしましょう。でも、成果は今までと同じ分だけ出してね。
社員 え、それってどうやるんですか?
会社 それは、個人の頑張りでしょ。
このような現場へのムチャぶりは、様々な企業で起こっていることではないでしょうか?(少なくとも、僕の周りの会社員からはよく聞きます)
上のような働き方改革の進め方は、”効率化・時間短縮せよ”から始まり、”創造性・生産性を向上せよ”とトップダウンでの命令形で進められます。
しかし、こうした現場へのムチャぶりは、結局のところ”やらされ感”の蔓延を招き、社員の主体性をそぐことになります。
そして、社員の満足度は低下し、やりがいない・働きがいない組織に成り下がっていく負のループに陥ってしまいます。
働き方改革 負のループ
そうではなく、まず第一に、やりがい・働きがいある組織を作るための施策を打ち続け、社員満足を高めることができれば、社員は自走していくことになります。
モチベーション高い社員は、低い社員に比べ創造性で3倍、生産性で1.3倍高いという有名な試算結果があるように、結果として生産性が向上し、効率化・時間短縮につながるのではないでしょうか。
働き方改革 正のループ
私はこうした正のループの仮説をもとに、私が所属する株式会社エイテックで働き方改革を進めています。
エイテック流 働き方”開拓”とは?
そもそも、働き方改革の”改革”って、なんだか会社用語って感じがしませんか? 会社が主導して社員のために改革するという、社員にとってみれば受け身的な印象を受けます。「あ、待っていれば会社がなんかやってくれるんだ」という感覚になりそうです。
しかし、働き方改革の主役は社員一人ひとりです。自らが自らの働き方・生き方をより良いものにするために自分事化して取り組まなければ成功はあり得ません。そうでなければ、会社からの押し付けとなってしまい、失敗することになります。
エイテックでは、会社と社員が協働して、一人ひとりに見合った働き方を開拓・探求していこうという思いから、働き方”改革”ではなく、働き方”開拓”という名称にしました。
この働き方”開拓”で実現したいことは、「多様な価値観を持つ人材がチームでワークし、かつフラットに議論することでイノベーションが生み出し成長していく」ことです。
このビジョンを実現するために、「働き方の多様化」、「仕事の効率化」、「チームワークの醸成」、「社員の健康増進」を柱に、以下のような様々なアクションをしています。
目的 | 施策 | 内容 |
働き方の多様化 | ①リモートワーク | 業務負荷の大きい幹部職を対象に、週1回を上限にリモートワークを認める。 |
仕事の効率化 | ②生産性向上研修 | 生産性向上をテーマに、外部講師を招き、全社員一斉で研修を実施する。 |
チームワークの醸成 | ③服装の自由化 | 自由な服装(カジュアルウェア可)での出勤も認め、リラックスした環境下で働く。 |
④若手オンラインコミュニティ | グループウェア上で、若手同士が日常的にコミュニケーションをとる。 | |
社員の健康増進 | ⑤健康経営 | 運動、睡眠、食事等の改善による社員の健康増進を図り、仕事のパフォーマンス(=生産性の向上)を高める。 |
その他 | ⑥オンライン選考 | “時間的・金銭的制約をなくした就活をしてもらいたい”という思いから、Web会社説明会、Web面接を行う。 |
良かれと思ったのに、社員は反発
上記のアクションプランは、社員満足度調査でもそれを望む声が多かったので、社員もほぼ納得してくれるだろうと思っていました。
が、ふたを開けると反発だらけ(もちろん肯定意見もたくさんありましたが…)。
- リモートワークなんてやったらコミュニケーションがとりにくくなり、逆に効率が落ちる
- 自分はリモートワークは必要ない
- カジュアルウェアなんて言語道断。規律が乱れ、緊張感が低下する
- 健康経営に関する会議が増え、社員の負担が増えるのではないか
- Web面接で万が一ネットワーク接続できなかったら、会社の信用を落としかねない などなど…
最初は「ちょっと待ってよ。みんなの声を実際のアクションにして実行しようとしているのに何で反発なのよ」と思いました。だけど、冷静に受け止めると、いずれも想定されるリスクとして考えるべきものでした。
そうしているうちに、私の中でも、いきなり本格導入するのではなく、まずは試しに一定期間運用してみて、当初期待している効果がちゃんと出るのか、逆に社員が心配するような負の側面が発生しないかについて、ちゃんと検証しなければいけないなと考えるようになりました。
3カ月後、社内の反発はほぼゼロに
とはいえ、一つ一つのアクションに対してじっくりとち密に計画を立てるほどの時間はありません。アクションしない限り現状は何も変わらないし、成功もありません(失敗はしませんが…)。
ましてや、働き方”開拓”の精神は、一人ひとりに見合った働き方を試行錯誤しながら開拓・探求していこうとするものです。
であれば、失敗を恐れずにまずやってみて、高速PDCAを回しながら継続的改善を積み重ね、その上で本格導入しようと考えました。負の側面が大きければ、中止したって構いません(これが本格導入後だと、簡単には中止できない)。
そうした面でも、「試行、まずやってみる」の決断は、経営者側も社員側も受け入れやすいのかもしれません。
そして、先に示したアクションのうち、「リモートワーク」「服装の自由化」「若手オンラインコミュニティ」「オンライン選考」については、”3か月間の試行”というかたちで実施することにしました。
オンライン選考のようす / エイテック
チームマネジメント研修のようす / エイテック
3か月の試行後のアンケート結果では、社員の反発はほぼなくなりました。
それどころか、試行期間中の経験を通して効果を実感するとともに、さらにより良い制度にするための社員発意の提案が多数寄せられました。
- リモートワークは通勤時間がなくなり時間が有効活用できた
- 在宅だと子供がおり集中できない場面があった。コワーキングスペースの活用なども考えるべき
- 服装自由化で思ったよりリラックスした環境で仕事ができはかどった
- 風紀を乱すような派手な服装で出社する社員はいなかった
- 自分の不健康状態が仕事のパフォーマンスを大きく低下させていることが分かった
- 学生からは、オンライン選考は学生の負担軽減を考えてくれる良い取り組みだという声が聞けた
結果、いずれのアクションも本格導入することとしました。
「まずやってみる」こそ、働き方改革を上手く進める秘訣
エイテック流 働き方”開拓”での「試行で、まずやってみる」の具体的な方法は、以下の通りです。
1.3か月間の『試行』を提案する。
2.対象者には、必ず実践してもらう。
3.3か月後、アンケート調査を実施する。
- 当初想定した効果は発現したか?
- 当初懸念した問題は発生したか?
- 当初想定していなかった新たな問題が発生したか?
- 本格導入は、賛成か?反対か?
4.アンケート結果を踏まえ、本格導入の可否を判断する。
で、気になりますよね、社員満足度ってどう変化したのよ?って点ですよね。
では、結果発表~。
「企業の成長や社員満足向上に対する経営」の社員満足度は、ナント1年前に比べて「43%⇒71%」へ大きく向上しました!
まだ、アクションの効果を社員が十分実感しているというところまでには至っていませんが、働き方”開拓”に向けてアクションしていることが、社員の満足度向上、モチベーション向上に寄与していることが定量的に確認できたと捉えています。
「試行、まずやってみる」というスタンスは、近年注目されている開発手法である”アジャイル”を参考にしました。
変化が激しく、不確実な社会で、かつ社員の価値観も多様化している現状においては、どれだけ経営側でち密に計画しても成功(社員に受け入れられるかどうか)するかどうかが分かりにくくなっています。
できた完成品を提示するよりは、不完全な状況でも、一緒に制度を作り上げていくというストーリーの共有、すなわち社員体験(Employee Experience)こそが、社員満足(Employee Satisfaction)につながるのではないでしょうか。
エイテックの会社概要
建設コンサルタント企業である株式会社エイテックは、2025年ビジョンとして『空間情報技術×コンサルタント技術の融合によりi-Construction時代を牽引する企業になる』ことを掲げ、事業創造、技術革新に取り組んでいます。
また、3D計測⇒3D設計⇒ICT施工支援のトータルマネジメントを軸に、建設生産システム全般をワンストップサービスする稀有な存在です。
そのような変化の激しいi-Construction分野で競争するエイテックでは、社員満足を高めることこそが、社員の創造性、生産性を高め、ひいては事業の拡大、企業の成長につながることを経営の軸に位置づけ、社員一人ひとりのより良い働き方の実現に向けチャレンジしています。