日本有数の土木の学び場 京大工学部・地球工学科
京都大学工学部の土木工学科は、1897年の京都帝国大学の創立と同時に設立された歴史を持つ。日本有数の土木の学び場として、多くの研究者、技術者などを輩出してきた。
現在は地球工学科として、土木、資源、環境、国際(土木工学教育を英語で行うコース)の4コースを擁し、土木コース・国際コースを合わせて各学年100名以上の学生が学んでいる。
土木・国際コースの学生の配属先の一つに、藤井聡教授の研究室(大学院都市社会工学専攻交通マネジメント工学講座交通行動システム分野)がある。
イマドキの土木学生たちは、なぜ土木を学んでいるのか。建設業界にどのようなイメージを抱いているのか。彼らは仕事のやりがいをどのように捉えているのか。
藤井研究室の川端祐一郎・助教にも加わってもらい、藤井研究室の学生9名(B4、M1、M2)に話を聞いてきた。
京大で土木を学ぶ理由
大石(施工の神様ライター)
宮本くん(B4)
藤井研究室一同
宮本くん(B4)
宮本涼太くん(B4)
坂井くん(M1)
藤井研究室一同
坂井くん(M1)
坂井琳太郎くん(M1)
細谷くん(B4)
藤井研究室一同
細谷くん(B4)
細谷祥吾くん(B4)
梁くん(B4)
梁澤亜くん(B4)
片岡くん(M2)
片岡将くん(M2)
鈴木くん(M1)
鈴木舜也くん(M1)
田中くん(B4)
藤井研究室一同
田中くん(B4)
田中駿也くん(B4)
上田くん(M1)
上田大貴くん(M1)
遠山くん(M1)
2つ目が、東日本大震災が起こったとき、当時東京にいたのですが、結構揺れたんです。そのときの記憶が強烈だったので、「防災をやってみたい」という気持ちもありました。それで大学で土木を選びました。
遠山航輝くん(M1)
大石(施工の神様ライター)
川端祐一郎・助教
その後私は日本郵政公社に入り、民営化を経て日本郵便株式会社で働いていたのですが、藤井先生から「社会人ドクターで大学院に来たら?」と誘われまして、働きながら博士号を取り、その後たまたま藤井研の助教のポストが空いたので転職してきたという感じです。
博士課程では心理学寄りの研究をしていましたが、公共事業に対する住民の合意形成などに関係する研究なので、土木と全く関係がないというわけでもありません。
川端祐一郎・京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻助教
藤井聡先生は「最終形態の人」
大石(施工の神様ライター)
宮本くん(B4)
坂井くん(M1)
大石(施工の神様ライター)
坂井くん(M1)
川端祐一郎・助教
坂井くん(M1)
大石(施工の神様ライター)
細谷くん(B4)
梁くん(B4)
片岡くん(M2)
鈴木くん(M1)
藤井研究室一同
田中くん(B4)
上田くん(M1)
遠山くん(M1)
大石(施工の神様ライター)
川端祐一郎・助教
今でも、倫理的な判断にこだわりを持って研究を進めていますが、それがこの研究室の最大の特色であるとともに、ある意味では、外部の方と対立を生むポイントでもあるかもしれません。藤井研究室は「政治的すぎる」とよく言われますからね(笑)。まぁ、そう言いたくなる気持ちは分かるのですが、それでも誰かが買って出るべき役柄だとも思うんですよね。
川端先生の話に耳を傾ける学生たち
川端祐一郎・助教
藤井先生の場合は、「それじゃアカンやろ」ということであえて政治色のある議論をするわけですが、それは学者のすることではないというお考えの先生も多いみたいなので、まぁ少数派です。
大石(施工の神様ライター)
遠山くん(M1)
片岡くん(M2)
川端祐一郎・助教
藤井研究室一同
ゼネコンは、同じ仕事の繰り返し
大石(施工の神様ライター)
宮本くん(B4)
坂井くん(M1)
細谷くん(B4)
梁くん(B4)
ゼネコンの場合、たまたま僕が見た範囲がそうだっただけかも知れませんが、「受注したモノをつくる」の繰り返しのように思えて、同じ仕事をし続けるのは僕には向いていないと思ったんです。いろいろな分野に携われる仕事に就きたいと思っています。
片岡くん(M2)
鈴木くん(M1)
田中くん(B4)
上田くん(M1)
遠山くん(M1)
土木の勉強って、穴掘ってんの?
大石(施工の神様ライター)
坂井くん(M1)
遠山くん(M1)
坂井くん(M1)
遠山くん(M1)
片岡くん(M2)
藤井研究室一同
大石(施工の神様ライター)
上田くん(M1)
遠山くん(M1)
社会からバカにされる業界に、普通の若者は行かない
大石(施工の神様ライター)
宮本くん(B4)
坂井くん(M1)
例えば、工期が迫ってくると、土曜日の夜11時になっても、現場にいるみたいな。高校生のころは、父親はほとんど家にいませんでしたし。「割に合わない」と思ったら、続けられない仕事だろうなと思ったことがあります。やはり、世間的には「建設業界は悪いことをしている業界」というイメージは残っていると思います。
社会から尊敬されない、バカにされるような業界には、普通の若者は行かないと思います。
細谷くん(B4)
いろいろな業界がある中で、わざわざそんなイメージのある建設業界が行きたい業界の真ん中に来ることはないと思うんです。あとは、「忙しくて大変だ」というイメージもあります。ゼネコンの方の話を聞いたことがあるのですが、「朝早く起きて、週6日働いている」と言っていました。
実際にそういう話を聞かされると、土木の勉強をしている僕でも、「難しいなあ」と思った覚えがあります。
梁くん(B4)
やりがいを広めることも大事だと思います。インターンでは同じ作業を繰り返すだけで、社員の方々から仕事のやりがいについて一言も聞かせてもらえませんでした。だから僕にはムリだなと思ったんです。
ただ、激務だとしても給料は悪くないし、やりがいさえちゃんと感じられれば、人は来ると思います。建設業界に入れば、お金以外に何が得られるかをちゃんと伝えていくことが大事だと思います。
片岡くん(M2)
抽象的ですけど、「裏方であることの美徳」みたいなものが世間的に認知されれば、イメージも変わるのかなとは思っています。
鈴木くん(M1)
抽象的な言い方になりますが、「デフレの脱却は建設業にとって特効薬になる」と感じています。
田中くん(B4)
なので、若い人を呼び込むためには、もっと肉体労働と長時間労働を減らすアピールをしていく必要があると思います。
上田くん(M1)
悪いイメージがどうこうというよりも、「良いイメージがない」「特に印象もない」のが問題じゃないかという気がしています。完成したダムや橋を見るのを楽しむ人は増えていますが、つくっているところが面白いという人はあまりいないと思います。
遠山くん(M1)
ただ、身近なところで土木のやりがいを感じる機会は、あまりないのかなという印象を持ちました。自分の生活の中に土木があるという感覚があまりないので、若者にとって遠い存在というか、やりがいを見出しづらい面があるとように思います。
京大の土木学生が考える「働く」ということ
大石(施工の神様ライター)
宮本くん(B4)
ただ、今の若者には、どんなにやりがいのある仕事でも、給料が増えないなら、自分の時間を大事にしようと思う人が多いんじゃないかなと思います。
坂井くん(M1)
川端祐一郎・助教
坂井くん(M1)
ただ、仕事にやりがいが感じられないで、「自分が生きているのは土日だけ」みたいなのは絶対イヤです。
細谷くん(B4)
お金のためだけに自分の人生を仕事に捧げるのはイヤです。お金のためだけではなく、社会の役に立つとか、自分が誇りに思えるような仕事をしたいと考えています。
梁くん(B4)
40年働いたときに、自分の「ライフ」は10年もないわけじゃないですか。それってスゴくもったいないと思うんです。僕は、ワークもライフと同じように楽しみたいので。普通にのめり込んで、楽しいなと思える仕事をやるのがいちばん大事なんじゃないかと思っています。
基本的には「仕事=趣味」みたいな感じでやっていきたいです。ただ、家族ができれば、考え方は変わると思います。やっぱり家族サービスはしたいですし。
片岡くん(M2)
川端祐一郎・助教
片岡くん(M2)
鈴木くん(M1)
浅草の和菓子屋が客に和菓子を提供する。客は美味しい和菓子を食べ、店は利益が上がる。それを見た通行人は和菓子屋に対して良いイメージを持つ。三方が良くなっていくという話です。今の小売業の効率主義と相反する話として紹介しています。
ワークライフバランスの考え方は、ワークとライフが対立するという考え方がベースにありますが、自分とワークもライフともに活かすのが、自分なりの「三方良し」の働く姿なのかなという気がします。
[amazon_link asins=’4774150231′ template=’ProductCarousel’ store=’sekokamisama-22′ marketplace=’JP’ link_id=’b0f13836-3bbf-4590-b9a6-9c7fe7855485′]
田中くん(B4)
私も多分、仕事に重点を置く生活ではなく、仕事以外の楽しみを見つけるほうが幸せです。長時間労働についても、私は体が弱いので、あまりムリがかからない程度でやっていきたいところです。
上田くん(M1)
週休2日と言いますが、忙しいときは休みなしでも良いし、休めるときに休むのが一番良いんじゃないかという気がしています。僕は生まれてからずっと京都で、京都しか知らないので、転勤については抵抗はありません。混んでるイメージがあるので、東京には行きたくないぐらいで(笑)。
遠山くん(M1)
僕の場合は、好きなことというより、意味のある仕事をしたいという思いがあります。言い換えれば、社会に貢献できる仕事です。同じところに住み続けたいので、転勤はイヤですね。東京から京都に来たのですが、慣れるのがシンドかったので。今は京都にずっといたいぐらいです。
土木業界は「巨大な夢を語る気風」を取り戻すべき
大石(施工の神様ライター)
川端祐一郎・助教
さきほど「ゼネコンは外から降ってくる仕事を受注してるだけではないか」というような話もありましたが、本来土木というのは、めちゃくちゃクリエイティブな仕事だと思うんです。近代国家はある面では土木屋によって作り上げられたようなものです。明治時代には商人も盛んに土木事業に投資していたわけですし。
「土木は裏方」みたいな話もありましたが、もともと土木事業によって「都市」の基礎を作り上げるというのは、「花形」と言って良い仕事だったはずです。
大石(施工の神様ライター)
川端祐一郎・助教
しかし、今の時代でも、例えば、東京に集中した人口を分散し、バランスの取れた国土をつくるとか、確実に発生する大地震にどう備えるかなど、土木屋がやるべき面白い仕事は山のようにあるはずです。「国全体をデザインする」というような、「巨大な夢を語る気風」をもう一度取り戻すべきではないでしょうか。