同業者に工事を邪魔された不思議な体験
近隣の住民の反対にあって、工事が止まってしまった。こんな状況は長年建設業界で働いていれば、一度は経験する出来事ではないだろうか。
しかし、住民ではなく同業者に工事を止められたという経験がある方は少ないのではないだろうか。
私は、このような不思議な体験をつい先日することになる。
仮置き場の出入り口に停められたレクサス
法面工事の主任技術者として現場の施工管理をしていた私は、現場から残土処分場までの距離を考慮して、仮置き場を借地することにした。
借地を済ませて、残土を出し始めて3日経ったある日。見慣れない黒のレクサスが仮置き場の入り口に堂々と停められていた。
仮置き場の出入り口は一箇所だったので、こんなところに車を停められては4tダンプも入らない。困ったことに、1時間経っても車の持ち主は戻ってこない。痺れを切らせた私は警察に通報することにした。
30分後、警察が到着。車のナンバーを調べて、レクサスの持ち主に「工事のために使用している仮置き場なので、駐車されては困ります」という趣旨を電話で伝えてもらった。無事連絡が取れたとのことで、私は安心して現場事務所に戻ったのだが・・・。
持ち主は地元の有力者
それからしばらくして、一人の男性がすごい剣幕で現場事務所に怒鳴り込んできた。話を聞くと、どうやらあのレクサスの持ち主のようだ。
私は冷静に「工事の仮置き場なので、入り口に停めないでいただけませんか?」と伝えた。
だが、男性はものすごい形相でこう答えた。「あの土地は昔からの知人のもので、 いつも停めてるんだ! お前に文句を言われる筋合いはないんだよ!」
工事を止められては困る。私はとっさにそう判断し、「入り口でなければ停めていただいても構わないですから」とやんわりと伝えたが、男性の怒りは収まらない。
それどころか、「お前の態度が気に食わない!」と、借地を認めないと言い出した。現場の近くで仮置き場として使えそうな借地場所はこの土地だけだった。仮置き場が使用できないとなれば、大幅な工期遅れが発生することは確実である。
そもそも、この男は何の権限があってこんなことを言っているのか不思議だったのだが、よく話を聞くと、この地域一帯で土木業を行なっている経営者で、土場や処分場などに非常に顔が効くようだった。
普段からこの男の会社の仕事で生計を立てている処分場や借地場所も多く、この男の一声で借地を取り消すなどたやすいらしい。地域の有力者を敵に回すとまずいと思った私は、必死に頭を下げ続けた。
出入り口をふさいでいた理由
私が下手に出ていると、男は驚くべき要求を口にしてきた。
「残土処分を私の会社に任せるのなら、仮置き場として使用させてやる」
今日はじめましての会社が、いきなり私たちの工事に参入しようというのだ。要求を飲まないと仮置き場の使用は断固として認めないという。
私は考えに考えた結果、工期の遅れや新たな仮置き場を探すまで施工者の仕事を止めてしまうことを考えると、要求を飲んだほうが良いと思い、見積もりの話を持ちかけた。
しかし、男が口頭で伝えてきた残土処分費はボッタクリにも程があった。詳しい金額は言えないが、一般的な残土処分費の相場の2倍程度の金額だった。
つまり、この男は最初から、これが目的でわざとレクサスを仮置き場の入り口に駐車し、我々が通報することを待っていたのだ。この地域に仮置き場として使える土地がそこしかないということを利用した非常にあくどい手口だった。
会社に事情を説明すると、「今回だけだぞ」と男が要求する運搬賃で委託するように指示を受けた。この工事ももうすぐ完工を迎えようとしている。
同業者にこのような詐欺のようなことをされたことは初めてで、とても戸惑った。だが、地方に行けば行くほど少なからずある話だという。
明らかなイチャモンをつけて工事の邪魔をしてくる人がいたら、あなたの現場もターゲットにされているかもしれない。
違法行為は誰もしていないので問題ないのでは?相手の会社の経営者は倫理上間違ったこと、アンフェアなことをしたのは間違い無いですが、筆者もその要求を泣く泣く飲んだ感じですし。相手方の会社名を知りたいですね。名前が公開されないからこそ、ゆすりのような行為が増長するわけですし。