草野瑞季さん(大成・IHIインフラ・八方地域維持型JV工事係・熊本325号災害復旧阿蘇大橋上下部工事)

大成建設、24歳ドボジョのリアル「女の気持ちはマニキュアで確保」

大成建設の若きドボジョ

2016年4月、熊本地震に伴う土砂崩れで阿蘇大橋が崩壊した。現在、国の災害復旧工事として、PC3径間連続ラーメン箱桁橋構造を持つ橋長345mの新たな橋の建設工事が進められている。

新しい阿蘇大橋の工事着工は2018年7月。2020年度内の開通を目指し、突貫工事が続けられている。「普通なら4〜6年かかる」と言われる工事をわずか3年足らずで完成させるというのだから、尋常ではない。

そんな現場には、何人かのドボジョがいる。そのうちの一人、大成建設株式会社の草野瑞季さんに取材する機会を得た。取材時は24歳。橋脚の現場監督を任されている。

草野さんにとって、阿蘇の山奥にある阿蘇大橋の工事現場はどう見えているのか。


「ここに橋を架けるんだ〜ワクワク♡」

――大成建設を選んだ理由は?

草野さん 私は神奈川県出身で、東京の大学で土木を学んだのですが、「とにかく規模の大きな仕事をしたい」と考えて大成建設に入社しました。

入社面接でもそういう話をしたのですが、実際に阿蘇大橋の工事現場に配属になって、満足しています。

――大きな現場なら、どこでも良かったのですか?

草野さん そうですね。

――海外でも?

草野さん 最初から海外はさすがに不安ですけど、今の現場が終わった後なら、海外でも働きたいと思っています。

――最初の配属先が阿蘇でも平気でしたか?

草野さん 正直に言うと、それまで九州に行ったこともなかったので、配属先が九州支店だと知って、「九州? マジか!?」と思いました(笑)。ただ、現場が阿蘇大橋の現場なのを知って、「おお〜!」とシビレました。山の中の現場でしたけど、そんなに不安はなかったですね。

それよりも、最初に現場に入って、なにもない谷を見渡したときに、「ここに橋を架けるんだ〜」と思ったときの感動が一番残っていますね。「こんなスケールの大きな場所で橋を架けるのかあ〜、ワクワク♡」みたいな感じでした(笑)。

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“ペーペー”なのに、協力業者に指示を出す難しさ

――入社何年目ですか?

草野さん 今年で3年目です。橋脚の基礎工の施工などを担当してきました。

――今の担当は?

草野さん 今年3月からは、現場監督として、PR2橋脚の施工を担当しています。PR2の脚長97mで、阿蘇大橋の橋脚の中では一番高い橋脚になります。PR2の現場には、上司であるベテランの社員さんがいます。新人社員と私と3名で現場を回している感じです。

現場所長さんや監理技術者さんもいるので、わからないことは上の方々に聞きながら仕事をしています。わからないときは、ひたすら図面を見て、ひたすら協力業者さんなどとも話をしながら、日々の仕事をこなしています。

2台のインクラインを設置するなど、急ピッチで工事が進む阿蘇大橋の現場。左下に見えるのがPR2。

――初めての現場だと、いろいろ大変なこともあるでしょう?

草野さん 最初に現場に入ったとき、私自身は何も知らないペーペーでしたけど、現場には、協力業者さんに指示する立場で入ったわけです。協力業者さんにちゃんと指示を出すためには、自分がわからないこと、知識が不足している部分を急いで埋めなきゃいけませんでした。それは大変でしたね。

協力業者さんのお話をよく聞いて、「それじゃこうしましょう」という感じで、一緒になってモノをつくってきたようなところがあります。


工程管理がスゴイ、スゴイ大変

――橋脚工では、回りの柱状節理に配慮しながら、作業しているんですよね。

草野さん そうです。橋脚の回りをちゃんと薬液注入して土留めをつくって作業しています。橋脚を立ち上げるまでは、柱状節理を壊さないよう配慮しながら、深さ29mほどの基礎をつくったのですが、全っ然スムーズにいかなくて、とっても苦労しましたね。

――今後の橋脚工事はスムーズにいきそうですか?

草野さん 阿蘇大橋は復旧工事なので、早期開通が至上命題です。橋脚を上げる工事も、工程的にはキツく、全然楽チンではありません。工程管理はスゴイ、スゴイ大変です。

ただ、何が出てくるかわからない地面を掘るのに比べると、ある程度予想がつくので、橋脚を上げる方が精神的にはまだマシです。

草野さんが担当するPR2。まるで柱状節理の中に埋め込んだように、橋脚が立ち上がりつつある。

――この現場は24時間の突貫工事で、けっこうギリギリでやっているそうですね。

草野さん 本当にそうなんです(笑)。

――現場には慣れましたか?

草野さん いや、まだまだ勉強中ですね〜。

――「これムリかも?」と思ったことは?

草野さん ウチの現場には、今60tを積載可能なインクライン(台車)が2基動いているのですが、私の一番最初の担当がこのインクラインをつくりました。

ところが「君、やれ」と言われたときに、インクラインそのものを知らなかったんです。機械の図面を渡されても、「わっかんない〜」「こりゃ大変だ〜」という状態で(笑)。とりあえずモノはつくって動かせてはいるのですが、機械に関しては、今でもすべてを理解しているわけではありません。

女の気持ちはマニキュアで確保

――オンオフの切り替えとか大変そうですね。

草野さん オンオフの切り替えはちゃんとするようにしています。ただ、私は今昼勤なのですが、夜や休みの日にのんびりしようとしても、「ちゃんと現場進んでるかな〜」とモヤモヤした気持ちになることはあります。

――休みのときはなにをして過ごしていますか?

草野さん 学生時代からテニスをやっていたので、最近は、仲間を見つけてテニスをやって、気晴らしをしています。あとは、美味しいものを食べたり、お酒を飲みに行ったりとかですね。協力業者さんの方々と飲みに行ったりもしています。

大成建設のイッコ上の女性の先輩が近くの大蘇ダムの工事現場で働いているのですが、たまに二人で飲みに行って、女性社員あるある話なんかをして、ウサ晴らしすることもあります。

――あるある話と言うと、日焼けとか?

草野さん 確かに日焼けは気になりますね(笑)。日焼け止めは当然塗っているんですけど、それでも焼けてしまいますね。

――そのマニキュアはいつも塗っているんですか?

草野さん いつも塗っています。「女の気持ちはマニキュアで確保しよう」ということで(笑)。爪の中が汚れるのが見えるのもイヤなので。

最初は地味な色から初めたのですが、最近は派手な色を塗るようになっています(笑)。

草野さん自慢のマニキュア(写真:本人提供)

――次やりたい仕事とかはありますか?

草野さん 今の現場では、一から橋脚についていろいろなことを勉強してきました。次にやる仕事としては、この経験を活かせる現場が良いなと思っています。当面は、今の現場の完成を見届けたいところです。

とりあえず、「新しい阿蘇大橋の開通式に参加したい」というのが今のところの希望ですね(笑)。やっぱり現場に思い入れがあるので。

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