曳家の嵩上げは何種類もある! 施工方法の違いを分かりやすく解説します

曳家岡本の工事は高すぎる?

前回に引き続き、なかなか知られていない曳家の施工品質の違いについて書かせていただきます。

3日ほど前に、インスペクションをされている方からお電話いただきました。

「昨年の台風で、もう少しで床上浸水しそうになり、心配なんで50cmの嵩上げ工事を検討されているお家に伺いました。私は、(木造2階建て、1階が22坪の)嵩上げ費用を嵩上げ150万円、基礎費用が200万円と概算でお伝えしました。

すると、御社(曳家岡本)は嵩上げ300万円、基礎200万円と言われたと聞きました…。丁寧な施工を売りにされているからかな?とも思いますが、少し高額なんでは?」

という内容でした。


曳家の嵩上げは何種類もある

まあ、これはあくまでお互い概算の話ですので、いきり立って反論するほどのことでも無いんですが…。

問題は、曳家による嵩上げも実は何種類もあるということを知っておいていただきたいのです。

以下に列挙してみます。

1. 土台揚げ工法での嵩上げ+基礎の増し打ち

もっともオーソドックスな土台から持ち揚げて、現状の基礎に立ち上がりを付け足して、それに据え付ける方法です。

この場合、ホールダウン金物やアンカーボルトの再緊結が困難ゆえ、もともとのオリジナルのボルトを斫りだしておいて、それを新しい基礎の中に埋め込むことで処理します。

当然、コンクリートは、コールドジョイントになりますので「引き抜き」に対して弱くなります。これを「嵩上げしたのだから仕方ない」といえばそうなんですが、せめてコンクリート接着剤を使用したコンクリートで埋め戻ししてもらいたいものです。

もし、こういう施工をご希望の場合、開口部のダメ穴処理は弊社に任せて欲しいよな~。基礎屋さんや左官さんとは違う、強度にこだわった処理をします。もちろんその分、手間賃は増えますが。

2. 土台揚げ工法+基礎全面造り直し

これは、時々ある工事です。

既存基礎が強度的に心配だ、もしくは付けたし部分のコールドジョイントがイヤだというならば、これしかありません。

それにしてもホールダウン、アンカーボルトの緊結処理方法は1と同じになってしまいます。

3. 土台揚げ工法+基礎の増し打ち(流し込み工法)

たぶんこんなバカ手間のかかる工事をやろうとするのは自分だけかも知れないですが。

土台揚げで持ち揚げたお家を基礎工事のために余分に揚げることをしないで、完成時の高さで静止させます。そのうえで斫りだしたホールダウンやアンカーボルトを増し打ち基礎のコンクリートを流し込む際に一緒に巻き込んで固めてしまいます。こうすれば引き抜きに対しての強度は担保できます。

そして、基礎を打ち足す境目の部分も現場で全てコンクリート接着剤を混ぜたコンクリートを手練りして使うなら、コールドジョイントの懸念もまずまず払底できます。

しかし、この工事を実際に施工するためには、床下にバケツに入れたコンクリートを運びこんでは丁寧に詰めてゆく、仕上げは沈下修正工事の土台揚げの天端詰めと同じように逆打ちをしてゆく、相当がまんの手間が出て来ます。

でも、この工法はきっといつかすごく費用をかけたお家をベストな嵩上げ工事をしたい時の選択肢として憶えておいていただくと良いかも知れません。

4. 上腰工法+基礎の増し打ち

古民家等を直すのと同じように床と1階の敷居から1mほどの壁を解体しておいて、柱を掴んで敷居から上で持ち揚げます。

これをすればH鋼の開口部はもちろん不要ですし、ホールダウン、アンカーボルトも新築時と同様な施工が出来ます。

しかし、施工にあたって1階の荷物を全て一旦撤去しないといけない。そして、床、壁の解体~復元費用も発生してきますのでコスト的に高額になります。

しかし、この工法を補償積算会社さんとかは推奨します。そりゃそうですよね。

5. 上腰工法+基礎の造り替え

4と同じですが、基礎を全面造り替えます。これが一番良い工事であるのは誰が考えても明らかです。

・・・こんな風に「家を嵩上げして欲しい」と単純にご依頼いただいても、大まかにここに書いたくらいの違う施工方法が出て来ます。

まあ、実際にはほとんどが1の「土台揚げ工法での嵩上げ+基礎の増し打ち」なんですが。

建築士や工務店も、曳家を学んでほしい

余談ですが、昨年、神奈川県であるお家の曳家工事をご相談いただいたのですが、人が説明している最中に「床を剥がして、壁も取るなんて問題外だな」と言われたお施主さんがいました。

まあ、こういう方とは話しても無駄ですから、弊社としては追いかけず、仲介業者さんの見積の提出依頼をお断りしました。

後日、この仲介業者さんが同業者からも見積書を集めていたことを知りまして、早々に撤退しておいて良かったなと思いました。

どんな素晴らしい意匠を描かれる建築士さんも、曳家に関しては勉強しておりません。教える方がいないからですが。

この記事を読んで「なるほどな~」と思ってくださる建築士さんや工務店さんがいらっしゃると本当にうれしいです。

ピックアップコメント

コメントありがとうございます。ご指摘の内容は「上腰工法」で嵩上げしている画像に対してだと思いますが。上腰の場合、どうやっても敷居から上、1m程度は柱を掴むために壁を撤去せざる得ません。また、この画像の現場は柱を10本程度入れ換えもありましたので、壁を上部まで落とさなくてはなりません。色々な考え方があるでしょうが。自分は仕口を傷めたくないので、外周だけで家を持ち揚げるより、細かくジャッキを掛けて荷重を分散させることで構造を傷めないことを優先しています。評価は人それぞれですから、何が正しいかは判りませんが。曳家をした家だから少しくらい傷むということを避けようとしての判断です。上の方の画像を見ていただくと、床も壁も撤去しないで一般住宅を曳家している画像も見れるかと思います。ただ、基礎ごとの曳家と違って、躯体のみの曳家に関しては、アンカーボルトの再緊結などを考えると、やはり上腰の方が修復費にお金はかかりますが、良い工事になると思います。

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曳家岡本の二代目。日本屈指の曳家職人。テレビ出演は「真相報道バンキシャ」「心ゆさぶれ先輩rock you」「ウェークアップぷらす」など多数。漫画化もされており、雑誌「週刊漫画Times」で連載中の「解体屋ゲン」にもセミレギュラーで実名登場。
自分では「日本一小心者な曳家」だと思っているが、ある建築家からは「蚤の心臓」と呼ばれている。しかし、自分が凄いのではなく、かつて昭和南海大地震や伊勢湾台風から復興するための技術として栄えた高知県(土佐派の曳家)の技術が自分の身体に残っているだけである。
東日本大震災の直後に千葉県浦安市対策本部の招聘されて上京。近年は全国の社寺・古民家修復を中心に手掛けている。
曳家岡本HP ⇒ http://hikiyaokamoto.com
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