「脱ゼネコン」で名古屋No.1へ! 120人で120億円を売り上げる杉本組の現場管理術とは?

社員120人で120億円を売り上げる杉本組の技術者たち

名古屋市で創業75年目を迎えた杉本組。

これまで、中部国際空港設備棟やアスナル金山、そして愛知万博の愛知県パビリオンなど、街のランドマークと言える建築物から、商業ビルやマンション、個人住宅まで幅広く手掛けてきた有力な地場ゼネコンだ。

さらに、長年の”無借金経営”で築き上げた極めて良好な財務体質を存分に活かし、近年では「脱ゼネコン」を目指し事業領域を拡大中。「ただ建物を建てるだけの建設業ではなく、他業種の良さを取り込みお客様へ新しい価値を提供する」「建設業はサービス業」を標榜し、名古屋No.1の「総合建設サービスグループ」を目指している

昨年には、社員数120人で売上120億円を突破。まさに破竹の勢いで成長を続ける杉本組において、技術者たちは何を思いながら働いているのか。成長を支える技術者たちの力や志について話を聞いた。

iPad支給で現場を効率化

施工の神様

みなさんのご経歴は?

今泉さん

ボクは名古屋工業大学 工学部の出身です。大学では、ちょっと人と違うテーマをやりたくて、当時は珍しかった環境心理学を専攻していました。

今年で入社17年目になりますが、入社してから15年間は工務部で施工管理をしていました。ですが一昨年、たまたま購買部の方が定年退職したので、購買部に異動し積算を担当しています。

今泉 敦司さん(購買部)

斉藤さん

私も、今泉さんと同じ大学で、学部も同じです。

都市計画を専攻していて、日本中の商店街のアーケードを回っては、寂れているアーケードと賑わっているアーケードの違いなどを研究していました。入社してちょうど20年目で、施工管理一筋です。

斉藤 昭良さん(工務部)

齋藤さん

私は三重大学 工学部 の建築学科で、コンクリートを専攻していました。入社して8年目です。

齋藤 恒至さん(工務部)

施工の神様

杉本組に入社した理由は?

今泉さん

中堅ゼネコンやメーカーも受けたんですが、どうしても転勤が多くなるので、転勤のない地場ゼネコンの杉本組を選びました。

斉藤さん

私は、昔から地元では名が知られているゼネコンだったので入社しました。

20年前の売上高は50億円くらいでしたが、規模的にも経験を積むのにちょうど良かったというのも本音ですね。それに、それから先の成長も期待できたので。

齋藤さん

私の時は就職氷河期だったのですが、大手、中堅、地場ゼネコンとたくさん受けて、一番最初に採ってもらった縁で入社しました。

私がちょうど入社1年目のタイミングで社長が交代したので、激動の1年間でしたね(笑)。

施工の神様

社長交代で何か変わった?

今泉さん

社長はもともと、メガバンクに勤めていたバリバリの銀行マンなので、改革が好きなんですよ(笑)。

それが、2017年におこなわれた岐阜県のイワタ建設のM&Aや星乃珈琲のFC経営をはじめとした事業領域の拡大や、IT化の推進ですね。

現場のやり方も変わってきましたね。iPadを全社員に支給して、現場自体は非常にやりやすくなりました。事務所へ図面を見に戻ることもなくなりましたし、工事写真アプリなどの施工管理ソフトの活用で業務の効率化が図れています。

現場確認も、所長は事務所にいながらLINEやFaceTimeのビデオ通話で遠隔で行っているので、相当ラクになりました。



無借金経営の”超”安定企業

施工の神様

現場監督のやりがいは?

今泉さん

やっぱり、家建てるって達成感あるんですよ。今の購買部は次から次へと仕事が降ってくる部署なので、この感覚はなかなか味わえないですが(笑)。

斉藤さん

そうですね。何もないところにモノが出来上がるって気持ちいい。

それに、普通モノをつくるときって、自分のお金で材料を買って造るじゃないですか、プラモデルとか。でも、建設業ってヒトのお金で材料を買って、でかいモノづくりができるわけですよ(笑)。しかも、給料までもらえる(笑)。こんなに楽しいことないですよ。

施工の神様

齋藤さんは?

齋藤さん

同じになりますが、何もないところから建物が建っていくのは見ていて嬉しいですね。

所長を任されたのはまだ1件で、しかも途中からでしたが、それでも最初から考えて自分の裁量で進めていけるというのは現場監督の醍醐味だと思います。

やっている最中はキツイですけど、しばらく経ってから「ああ、これ自分が建てたんだな」って振り返ると、やっぱり感慨深いですよね。

施工の神様

齋藤さんはまだ若いですが、教育体制は?

斉藤さん

昔は、基本的にOJTがメインでしたね。時代がそういう時代だったので。

齋藤さん

ちょうど、私が入社した時が変わり始めたタイミングですね。見て覚えろという風潮もある中で、会社としてこのままではダメだ、と。

今は分からないことがあれば、FaceTimeなどですぐに確認・質問ができるようになっています。

施工の神様

会社の雰囲気は?

斉藤さん

プレッシャーの少ない会社ですね(笑)。

施工の神様

上下関係は?

今泉さん

ボクたちはあまり気にしてないですかね(笑)。

施工の神様

いかにもおカタいゼネコンだと思ってました。

今泉さん

カタいところはありますよ。ウチはずーっと無借金経営で、”超”安定企業なんです。この業界では珍しいですけどね。

それでいて、自社ビルを17棟所有しています。本業以外でも安定収入があるのは大きいですね。

そういう意味ではツブれる心配がないので、働く側も安心して働けますし、協力業者さんともお金を絶対に払ってもらえる安心感からいい関係性を築けています。

施工の神様

働き方も変わってきた?

斉藤さん

昔に比べると、残業は減りましたし、iPadなどのツールで会社に寄らなくてよくなったのが大きいですね。移動ほどわずらわしいものはありませんし、今の時代リスクしかないですからね。

ほかにも、”ちゃんと”通勤圏であることを大切にしています。建設業界って、通勤圏と言いながらも現場まで片道2時間なんてこともよくありますが、それってもはや通勤のレベルじゃないですよね(笑)。

とくに若い人は車の免許を持っていない人も多いですから。自宅から1時間以内を目安にしているので、通勤の負担も減っています。

厚生労働省愛知労働局から働き方改革に注力している企業を表彰する「AICHI WISH企業」の認定も受けましたが、完全週休二日制や年休120日も全社を挙げて推進しているところです。

約束を守ることが、現場力

施工の神様

思い出の現場はありますか?

今泉さん

ボク、3つあるんですけどいいですか?

1つめが、2億5000万円の一戸建ての現場です。あまりに忙しくて胃潰瘍になるくらいボロボロになっちゃって、ツラすぎて記憶に残っています。ただ、今でもちょくちょくお施主さんのもとにご挨拶に伺うので、ある意味いい思い出です。

2つめが、先輩の下について手掛けた特別養護老人ホームの現場です。それまではそれなりに現場をこなしていた、という感じだったんです。

ただ、そのときの先輩の仕事への責任感とか業者さんの扱い方とか、一つひとつの仕事にスゴくこだわりを感じて。これくらい真剣に現場と向き合わないといけないんだと自分自身を戒めて、仕事への取り組み方が変わった現場でした。

3つめが、購買部に移る前の最後の現場ですね。名古屋市西区の10階建のマンションでした。そのときは最後になるとは思ってなかったですけど(笑)。

最初から最後までスゴくうまくいって、外壁の見栄えも良くて。渾身の現場で、次の現場も頑張ろう!というとこだったんですけどね(笑)。

斉藤さん

私はこれといって無いんですよ。粛々と現場を収めていくタイプなので。

ただ、昔、鉄骨の工事で階段の位置を間違えて、全工程終わってから付け直したことはありますね(笑)。現場に間違った図面が届いていて、それを基につくってしまって。

上手くいったことより、失敗のほうがよく覚えていますね。

齋藤さん

私は、初めて所長を任された、自社物件のRC造の10階建のマンションです。自社物件ということもありますが、初めて所長を任される現場にしては大きいな、とは思いましたね(笑)。

敷地面積は広くなく、基準階に乗ってからのさほど難しくない段階から任せてもらったのですが、それでもこれまでは先輩の所長が取ってくれていた責任が自分にのしかかってくるようになって、毎日胃が痛かったですね。

その分、終わったときは解放感と達成感はひとしおでした。

施工の神様

仕事で大切にしていることは?

斉藤さん

間違いが無いように、というよりは、間違いを間違いのまま済まさないことですね。仕事をしていたらミスはありますが、放置せずにその都度解決していくことが大切です。

今泉さん

ボクは、約束を必ず守ることですね。この日までに図面を渡すと言ったら渡すし、業者が入る日には必ずスムーズに作業が開始できるようにしておくこと。

こうした信頼の積み重ねが現場力だと思います。そうでなければ、職人さんたちに指示しづらくなってしまうので。

齋藤さん

私も斉藤さんと同じで、問題を後回しにしないことですね。所長歴も短いのでまだまだではありますが、問題に気付いたらすぐに処理すること、それだけを必死に考えています。

斉藤さん

素晴らしい。みんな、齋藤くんみたいな子だったら良いんですけどね(笑)。


現場監督には、現場で戦える人間と戦えない人間がいる

施工の神様

現場監督に向いている人間は?

今泉さん

ボクが若いときは「自分は現場監督に向いてない」と思いながらやってましたね(笑)。性格的にヒトに強く言えなかったんですよ。たとえ、それが言わなきゃいけないことであっても。

でも、これって年齢とか勤続年数が解決してくれるものなんですよ。よく「職人さんに強く言えない、自分は現場監督に向いてないんじゃないか」って悩む若い子がいますが、言わなきゃいけないと分かっているなら大丈夫です。絶対に言えるようになるので。

それよりも、現場って常にトラブルがあるから、それにどう対応できるかのほうが大事だと思います。考え込んでまったく動けなくなってしまう人もいますからね。

現場の状況に応じて、すぐに判断して、決断できるかどうか。この能力は何十年と経験を積んだからといって身につくものではないと思います。

施工の神様

斉藤さんは?

斉藤さん

知識はあまり必要ないのかな、と思っています。覚えていなくても、すぐに調べられる時代ですし、ウチだとiPadも支給されますからね。

今泉さんの話にも出ましたが、大事なのは知識よりも、その場その場での対応力、行動力だと思います。機転が利いて、応用ができる人が優秀な現場監督ですね。

そういう意味では、頭がいい人よりも、口が達者な人のほうが向いている。本に書いてあることをいかに完璧に覚えているかではなく、その内容を自分なりに消化して、言葉で表現できる人のほうが現場に必要とされる人材です。

昔、社長が「大学で建築について学んでいなくても、現場監督はできる」と話していたのですが、私もその通りだと思います。

齋藤さん

こういう話を聞くと、私は向いてないんじゃないかと思っちゃいますね…。

今泉さん

齋藤くんって若いときのボクに似てるんですよ。あんまり職人さんにガッと言えないでしょ?

齋藤さん

言いづらいですね…。

今泉さん

そうだよね。現場監督には2パターンの人種がいて、現場で戦える人間とそうじゃない人間がいる。ボクは後者なんですよ。

だから、ボクは「強く言えないなら、言わなくていいようにしておけばいいや」って気持ちを切り替えましたね。事前準備から完璧にこなして、現場での余計なやり取りを減らすことを心がけていました。

齋藤くんは賢いからウマくできると思います。

中小企業の現場監督は、どこへ行っても通用する

施工の神様

杉本組で働く魅力は?

齋藤さん

大手企業で働いている方から、大手は分業化されて一部のシゴトしか任されないと聞きました。ハウスメーカーなども、現場を見ることよりも、お施主さんとの話がメインになっていたりすることもあるようで。

でも、ウチの会社は最初から最後まで現場に携われます。建てるのが好き、仕事にこだわれる人はかなり向いているんじゃないかなと思います。

今泉さん

確かにね。私がまだ若かったときは5,000万円でも大きな現場だなと感じていましたが、今は2億円程度の現場だと基本的に一人で回しています。だから、現場監督一人当たりの売上も間違いなく上がっていますね。

中小企業の現場監督って貴重なんですよ。オールマイティにこなさなきゃいけないから、一人で何でもできる。とくに、ウチは若手のうちから大きな現場を経験できます。

ボクが経営者だったら、一人現場をバリバリやってるような現場監督は絶対に欲しいもん。

斉藤さん

資金さえあれば独立だってできますもんね。

今泉さん

大手だと、安全管理とか書類整理とか、どうしても担当できずに経験から抜け落ちてしまう業務が出てきます。

でも、中小企業だと「コイツに現場1個任せよう」ってレベルになれる。そうすれば、どこへ行っても通用しますから。中小企業の力って、イコール現場監督の力だと思います。

施工の神様

なるほど。

斉藤さん

そういう意味では、当面の目標だった100億円を達成し、会社として次のステージに向かっているところです。

会社の規模が大きくなるにつれ、さらに次の高い目標に向けて仕事をしていく。一人の現場監督として、こんなにやりがいを感じられる仕事はありませんよ。

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僕は戦えません!

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