原価管理が甘いと利益が確保できない
土木現場で嘆かれる、予算の減少、若い技術者の減少、施工方法の増加に伴う難易度の上昇など、土木工事で単純に利益が出ない状況が増えている。
そして、利益が確保できないということは、原価に対する意識が非常に甘いとも言える。特に、若手の頃は業務に追われ、工事の予算感など正直頭に入っていないだろう。
しかし、早い段階で原価管理に対する危機感を持ち、工事に取り組むことで、協力業者などに対する配慮も変わってくる。
より利益がでる、施工方法や工種の選定を行うなど、対処できることは山ほどある。この記事では、原価に関する考え方を若手技術者に伝えていきたい。
「実行予算」とは?
そもそも、実行予算とは何か。私も業界に入ったばかりの頃はさっぱりだった。
土木工事における実行予算とは、単純に企業が利益を出すために必要な予算を算出することである。
条件の良い工事をとっても、利益を上げられない会社が存在するのは、この実行予算の組み方に問題があると考えたほうが良いだろう。
考え方として、工事で利益を上げるために必要なのは、完成工事に対する総利益の確保である。受注した工事で、材料費や燃料、人件費等もろもろ差し引いて1円でも余れば、それは利益と考えてよい。
その残るお金を1円でも多く増やすために、実行予算を適切に組む必要があるわけだ。この予算感がない現場監督だと、利益を出すことは非常に難しいだろう。
「実行予算」はなぜ必要なのか
上記で述べた通り、予算感のないまま工事を行ってしまうと、会社にとっての利益が思ったより上がらなかったということも十分にあり得る。
土木工事は、現場によって使用する材料、構造物の形状、数量すべてが異なる。そして、あらかじめ使えるお金が、請負金額として決まっており、その中で利益を出せる実行予算を考えなければならない。
ここで一番気を付けなければならないのが、資材調達である。資材の調達にかかる費用をやみくもに行うことで、工事原価が請負金額を上回ることは十分に起こりうる。
つまり、この実行予算に従って作業や手配を行うことになるため、原価面から見た具体的な実行計画が、非常に重要な役割を担っているということを理解しなければならない。
利益の確保以外にも役割がある
さらに、実行予算にはしっかりとした機能が備わっているということを覚えておいてほしい。
まずは、計画的機能だ。工事にかかるコストを明確に数値化することにより、工種ごとの目標予算が立てやすくなる。そういった数値を会社や外部の人と共有することで、工事かかる基本的な費用を共有することができる。
次に、調整の機能である。これは、おもに協力業者や外部のコンサルなどに、実行予算をもとに経済的な施工方法や材料はないか相談することができる。より経済的な施工方法が見つかれば、工事のコストを直接的に削減できるため、利益率も増えるという仕組みだ。
そして、最も重要な機能といってもよいのが統制機能である。原価管理を適切に行うことによって、実際に行っている工事が目標に向かって適切に進捗しているかどうかの指標になる。
支出が大きく出ている箇所があるならば、不経済な経費の選定を行う必要がある。材料費や人件費など、削減できるコストはこの時点で削減する。こういった細かい調整を行い、工事に関わる全員と情報の共有を行うことで、組織の統制がとれるのだ。
今回は、実行予算の基本的な考え方について解説した。これからは、より内容を掘り下げて説明していきたいと思っている。若いうちにこの予算感を身に着けておけば、将来大きな武器になる。
工事を行う上で大切な要素の一つは、お金だ。適切に予算を組んで、協力業者などの利益率も把握しておかないと、業者が離れていくことも十分に可能性としてはあり得る。そのために、きちんとした基礎的な部分は抑えておいてほしい。