悩む前にこれを読め!若きハウスメーカー現場監督の心得【現場編】

悩む前にこれを読め!若きハウスメーカー現場監督の心得【現場編】

※この記事は『マイホームチュートリアル』の記事を再編集したものです。

悩むことは良いこと

フレッシュな若者たちの姿を見ると、私もその頃の気持ちに立ち返り、若かりし日々を思い返すものです。私は約8年間ゼネコンの現場監督を経て、転職し十数年間ハウスメーカーの現場監督として経験を重ねてきました。

気がつけばあっという間・・・。いや、本当です。過去を振り返る暇もなく突っ走ってきた、という表現のほうが適切でしょうか?もちろん辛いこともたくさんありました。でもそれを乗り越えたことで自信にもなりました。

仕事をしていれば悩むことがあります。それは、もがいて前に進んでいる証拠です。”水の抵抗がなければ魚は前に進めない”と、武田鉄也さんがラジオで言っていたのを思い出します。

悩むことは成長する上でとても大切なことですが、あなたにその解決力がなければ、その悩みの重圧に押しつぶされてしまいます。ついには、この業界に見切りをつけて去っていくという残念な解決策を選ぶことになってしまうでしょう。それはもったいない。

悩みを持っている若き現場監督さんは、試しにこの記事を読んでみてください。あなたが抱える悩みなんて、ごくシンプルな気づきで解決されることなのかもしれないですよ。私はおそらくこの記事に目が止まったあなたよりは、たくさんの現場経験をしているはずです。

今までの経験から、知り得たことやノウハウを書き綴ります。もしかしたら、未来の建設業を支える若い現場監督の力になることができるかもしれない。そう思い、この記事を書くことにしました。では、本題に入りたいと思います。

初めての現場

現場に足を踏み入れた途端、悩む・・・。

初々しい傷ひとつないヘルメットをかぶり、あなたは現場に足を踏み入れます。そこには強面の大工さんが黙々と仕事をしています。

あなた「こんにちは。」

大工「・・・。」

あなた「あの・・・。」

大工「どなたさん?」

あなた「新人の現場監督です。よろしくお願いします。」

大工「ああ・・・。ども。」

みたいな空気でしょう。もうあなたは現場監督を辞めたくなったかもしれません。でも、大丈夫です。最初はみんなこんな感じでしょう。

私ならこうする

私だったら・・・。現場に入るなり、大きな声でこう言います。

「毎日お疲れ様です!新人の◯◯です。よろしくお願いします!」

そう満面の笑みで言いながら、自分の名刺を渡すのです。大工さんもきっと、なんだか元気なやつがきたなぁと気になるはずです。ここで、名刺を渡すのがポイントです。その理由は2つあります。

  1. 名前を覚えてもらうため
  2. 職人さんに対し、認め合う意思があることを伝えるため

まずは、自分の名前を覚えてもらうことが最重要です。また、相手に自分を覚えてもらうだけではなく、その相手の名前を覚えることも必要です。これは良好な信頼関係を生みだすには欠かせないことです。

初めて会った職人さんの名前は話をしながら聞き出し、手帳に書き留めておきましょう。次に他の現場で会ったときにあなたから職人さんを名前で呼んだときには、もうすでに相手との距離感はずっと縮まっているはずです。

そして、職人さん達はなぜか現場監督は別の世界の人間だと思い込んでいる人がいるようです。だから、「私はあなたを認めています。仲間と思っています。だから私のことも認めてください。」と積極的にアピールしていき、職人と監督の間にある見えない壁を取り除きましょう。


信頼を得ておく必要性

急な依頼の対応でわかる信頼関係

ハウスメーカーの現場監督は、自分で作業をすることはほとんどありません。むしろ、それをしていると全く仕事が回りません。つまり、いかに人を上手に動かすかというスキルが最重要になります。それがうまくいかないと次のようになります。

あなた「明日の9:00に材料が搬入されるそうなので、材料を受け取りに行ってください。」

施工管理者「明日ですか??急に言われても。」

あなた「え?そうなんですか?そこをなんとかお願いできないですか?」

施工管理者「こっちにも予定があるんですよ。勝手なことを言わないでください。」

あなた「・・・。わかりました。自分でなんとかしてみます。」

こうして次の日、予定を調整し自らが現場に走り、しぶしぶ材料を受け取る作業を行うのです。

私ならこうする

現場監督は、段取りが命です。まずは急な予定が極力入らないようにしておくことです。先方の材料屋からの連絡に対しては、明日の受け取りを安易に許可しないことです。

しかし実は、他人が段取りした材料でも責任者である現場監督に搬入の連絡が入ることがあります。色々検討した結果、材料を明日どうしても受け取って欲しい時もあったりします。その場合は施工管理者に対し、こう依頼するのが良いでしょう。

私「材料屋さんから明日荷受けをして欲しいと連絡がありました。急なことなので私も困っているのですが、確かにその材料が入らないと現場が止まってしまう可能性があります。もし○○さんが受け取りに行っていただけるのならとても助かります、でもさすがに無理ですよね?」

施工管理者「また、急な話ですね。私も明日は用事がありますが、○○監督がお困りでしたらなんとかしてみますよ。」

私「本当ですか!無理を言って申し訳ございません。感謝します。」

施工管理者「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。」

私「次はこういうことがないように材料屋には私から注意しておきますね。」

施工管理者「そうですね。よろしくお願いします。」

相手に依頼をする時は、目的と理由を必ず明確に伝えることです。それと、今ある問題点は私だけではなく、あなたにも共通の問題点であるということを理解してもらいます。ここでは高圧的ではなく、相談をするような態度で相手に協力を促すのです。

その上で、相手との信頼関係をすでに構築しているのであれば、「困った時はお互い様」と言ってもらえる条件が揃います。人を動かすためには、信頼関係が重要であることがわかりましたか?

実際、ここまでの協力体制を作り上げるには、ある程度の時間がかかります。日々、相手から信頼してもらえるような態度で接していくことが重要です。

人に仕事を任せる場合の心得

人に仕事を任せるということ

ハウスメーカーの現場監督は、すべての工事に立ち会うことは不可能です。基本的には、施工管理者や職人さんに現場を任せます。しかし、人に任せた分だけそこには不安が発生します。

「言った通りやってくれるかな?お客さんとうまくやってくれるかな?」

経験が浅いとその不安に押しつぶされそうになります。でも、それは試練だと思ってください。不安に思う原因は、あなたが依頼したその相手に100%の成功を求めているからです。

でも、現実的にそれは無理です。いくらあなたが完璧に指示を出したと思っていても、やるのはあなたではなく現場の人間です。違う人間がやるのだから100%はありえないのです

つまり、指示通りにやれたかどうかを白か黒で判断しないことが重要です。工事完了の報告を受けたときに自分が指示したことと、少し違っていても90%の仕上がりくらいだったら成功したと思えばいいのです。そう考えれば、ずいぶん気持ちが楽になりませんか?

ベテラン監督の中には、相手を無能呼ばわりして「言ったことがやれていないじゃないか!」と怒鳴る監督もいるかもしれません。その言葉を受けた相手は「じゃあ、自分でやれよ。」と心の中できっと思うはずです。それは、有効的なやりとりでしょうか?

信頼して相手に任せたあなただったら、相手に対して「理想にすごく近い仕上がりにしてくれてありがとうございました。」と感謝を伝えられますよね。

信頼することと、その意義

信頼するって勇気がいりますよね。でも、長期的に見ると疑いを持って人と接するよりも、はるかに尊いことだと言えます。裏切られることを前提に人と接するなんて、少し寂しい気がしませんか?

私は、まずその人を信頼します。信頼しているから任せると宣言します。

言われた相手は、その言葉になんとか答えるようにできる限り頑張ってくれます。もし結果がダメだったとしても、その人の能力や環境がそぐわなかっただけなので、その人を責めるべきではありません。

信頼したのは自分、相手はそれに答えようと努力してくれた。ダメだったことはお互い反省し、次に繋げれば良い。それで解消できる話です。

もし、疑いをかけながら依頼してダメだった時、あーやっぱりダメだったかで終わりますか?もっと疑っていればよかった。あいつが悪いんだってなりますよね。そうなったら相手を信頼できず、自分のことも否定してしまいます。

まさに負のスパイラルに突入し、あなたはどんどん孤立をしていくことでしょう。それを繰り返していると、あなたの指示は誰も聞いてくれなくなるし、そのうち仕事も成り立たなくなります。どうか、そうはならないようにしてくださいね。


職人さんに認められよう

職人さんに受け入れられる3つの方法

職人さんは貴重です。あなたができない作業を代わりにしてくれるのです。よく考えてみてください。職人さんがいなければ、あなたの仕事は成り立たないのです。常に感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。

そして、現場監督の仕事を成立させるためには、職人さんに認めてもらわなければなりません。ここであなたが職人さんに認められるための3つの方法を挙げておきます。

  1. 職人さんと同等程度の現場知識を持つ
  2. 現場を問題なくスムーズに進める段取りを計画する
  3. 常に職人さんの味方であることを理解してもらう

1は、自らの勉強と現場経験です。最初の頃は現場に極力通って、職人さんと会話をすることで知識が身につきます。その中でモノを知り、納まりを覚えていくことで自然と職人さんとの会話ができるようになります。

あなた「それって○○さん(職人さん)がラクをしたいからそう言ってるよね??」

職人「お??ばれた?なんでもお見通しだね。」

みたいな会話が、将来的にできるようになれば最高です(笑)。

2は、現場監督としては、基本的な能力として抑えておかなければならない項目です。現場の安定感は職人さんに安心感を与え、作業効率が上がることで仕事の質も高まります。しっかり段取りを組むことは、誰にとっても良いこと尽くめです。

3は、この中の項目で私が1番お伝えしたいことです。現場監督はよく矢面に立ちます。例えば、施主さんから「現場の大工が昼休憩に材料の上で昼寝してたが、一体どういう教育をしてるんだ。」とクレームをもらった時、あなたならどのように対応しますか?

もちろん現場監督として、施主さんには「気を悪くされたのは申し訳ございません。当社では熱中症などを防止するため、きちんと休憩を取るように指導をしております。昼寝をとることは悪いことではないのですが、お客様の大切な材料の上での仮眠は当社の指導不足で、あってはならないことだと考えます。大工にはそのように伝えます。」と謝罪をします。

そしてそれを受けて大工さんに対し、「なんてことをしてくれたんだ。恥をかかせやがって。二度と同じことすんな。」と言うのか、「疲れを取るために昼の休憩は大いに休んでもらって結構ですよ、ただお客様によってはそれが気に入らないって言う方もいるので、せめて材料の上で寝るのだけはやめましょうね。」と言うのかです。

前者は自分が施主から怒られたことに対して、感情の吐け口として本人へ当たり散らしています。後者は大工さんの立場にも立ちつつ、施主さんの気持ちをきちんと伝えています。あなたは、どちらが大工さんからの信頼を得ると思いますか?

職人さんたちへのアプローチ

職人さんたちは、横のつながりが強い場合が多いです。休憩時などは、輪になって職人さん同士で喋っていたりします。そこにまだ信頼のない新人の現場監督が入っていくと、蚊帳の外状態にされる場合があります。さて、あなたならどうしますか?

そうです。あなたは思います。「自分は発注する側の立場で、職人さんたちからしたら、いわばお客さん。蚊帳の外状態にするなんて、それがお客さんに対する態度か??」って。

でも、それは違います。職人さんは対価以上の仕事はしてくれません。つまりお金をもらって図面通り作ったら終わり。あなたに媚を売る対価はそこに発生していないのです。あなたが仕事的に価値のある人間であると認められて、初めて対等に職人さんたちとの会話ができるようになるという原理をまずは知りましょう。

新人監督におすすめの方法

今言ったことは、新人の現場監督には少し酷な話かもしれません。実は即効性のある方法がありますのでお伝えします。

まず、あなたが持っているプライドがあればそれを捨てましょう。入社したての頃は、職人さんたちはほとんどの方が人生の先輩であることが多いはずです。純粋に、人生の先輩に学ぶ姿勢で接することから始めていきましょう。大丈夫です。現場監督を始めて1〜2年目のあなたに、現場の人たちは難しいことを何も求めていませんから。気楽にいきましょう。

次に、休憩中の職人さんたちに人数分のジュースを買って持っていき、一緒に同じ場所で飲むのです。そして、自分のプライベートのことを包み隠さず話しましょう。相手に心を開いて欲しければ、あなたから心を開かなければなりません。

少し打ち解けてきたら、相手のことも色々聞き出しましょう。そうするうちに相手からすると、あなたに対し人間的なかわいさを感じてくれることでしょう。現場に行くごとに、その活動をしていけば職人さんにかわいがられ、人の輪を広げていくことができるのです。

コミュニケーション能力を磨け

現場監督のはじめの仕事は、人間関係をつくることです。人間関係をつくるためには、あなたのコミュニケーション能力の向上がどうしても必要になってきます。これは職人さんに対してだけの話ではありません。

社会で生きていくためのスキルとして最低限、身に付けておくべきことなのです。職人さんは横のつながりで和を作り、言ってみれば群れをなしています。

反面、現場監督は群れをなさない一匹狼です。一匹狼が群れに入って行こうとすると、どうしても抵抗が生まれます。その中でどのようにコミュニケーション能力を発揮するか。その答えは、意外とシンプルです。

郷に入っては郷に従え」の精神です。職人さんたちが集まった時にその場の持っている雰囲気は様々です。

  • 寡黙で真面目な人たち
  • 底抜けに明るい人たち
  • 控えめな人たち
  • こだわりのある人たち
  • 前向きな人たち

あなたがその輪の中で話をする時は、その雰囲気に合わせた話し方や態度をとって調和を目指すのです。そうすることで職人さんたちと同調することができて、仲間意識を少しは持ってもらうことができるはずです。

ただし、注意すべき点があります。いずれは現場監督として、言い辛いような是正指示なども出さないといけなくなる場面が出てきます。そのような場面に立った時でも、現場監督として毅然とした態度で指示をすることができるようなスタンスを、きちんと確保しておく必要があります。

そうでなければ、あなたの存在意義が、単なる仲良しこよしグループの一員で終わってしまいます。あなたが現場でリーダー的な一面があることも含めて、職人さんたちから認められることが人間関係構築の最終目標になります。

人間関係を築くことが現場監督の第一歩

この記事では、現場での立ち振る舞いや職人さんとの信頼関係を中心に書いてきました。信頼関係が生まれれば、監督としての本来の仕事を円滑に行うことができます。これを見ている若き現場監督さんたちには、その土台づくりをしっかりやっていくことをお勧めします。

明日、現場に行ったら手始めに、現場でヘルメットをかぶっていない職人さんにヘルメットをかぶってもらう指示をしてみましょう。覚えていますか?必ず理由と目的を伝えるんですよ。さあ、うまくいくでしょうか。

もしうまくいけば、信頼関係が既にできているはずですし、少しでも反発があったりヘルメットをかぶってもらえなかったりするのであれば、あなたへの信頼度はまだまだということになります。日々努力をしていきましょう。

数年後は、皆さんの発する言葉が信頼性を持ったものとなり、あなたの理想の仕事環境を整えることができるでしょう。頑張ってください。応援しています!

※この記事は『マイホームチュートリアル』の記事を再編集したものです。

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