「正社員」から「派遣」に転職する施工管理技士が増える理由

土木施工管理技士の佐々木さんにインタビュー

公共工事への依存度が高い建設業。土木公共工事の減少によって、北海道の建設業は2016年、8年ぶりに倒産企業が増加に転じた。こうした先行きへの不安感からか最近、北海道の地場ゼネコンを退職し、派遣会社に転職する施工管理技士が増えてきている。しかし、北海道の施工管理技士が派遣社員として、東北地域へ単身赴任するケースは以前から多い。

北海道の地場ゼネコンに20年以上勤め、土工事の施工管理や、国道維持管理等に関わる施工管理を担当していた佐々木修一さんも、正社員から派遣社員に転職した施工管理技士の一人だ。正社員から派遣社員に転職した理由や、施工管理技士の転職事情、今の業務内容、ご略歴などについて、佐々木さんにお話を伺った。

北海道の地場ゼネコンを退職した理由は「震災復興支援」

施工管理技士の佐々木さん

施工の神様(以下、施工):まず、佐々木さんはなぜ、北海道の地場ゼネコンを退職して、派遣社員という働き方を選んだのでしょうか?

佐々木修一(以下、佐々木):私が転職を決めた一番のきっかけは東日本大震災でした。前の会社ではサービス残業が当たり前だったことも転職理由の一つです。なので、北海道で仕事が減っているから、というような不安感からではありませんでした。北海道の中でも札幌市は良いほうでしたし、震災復興に貢献したいという想いが強かったです。ただ、北海道の建設業は全体的に先行きが不透明で、いつ不景気になるかという不安とはいつも隣合わせだと思います。だから若いうちに本州へ就職・転職する施工管理技士も少なくないのだと思います。

私が東日本大震災の被災地や被災者の皆様のために、どれだけ貢献できるのかという不安もありましたが、自分の施工管理スキルが役に立って、被災者の皆様が笑顔を取り戻せるなら、という想いで派遣会社の一員として復興事業に賛同しました。

施工:佐々木さんのような派遣の施工管理技士のおかげで、復興工事は着実に進んでいますが、佐々木さんは実際に、どんな復興事業で施工管理業務を担当されていますか?

佐々木:今は災害復旧関連の区画整理事業で施工管理をしています。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県仙台市内の農地について、除塩などの復旧工事を行ったうえで、用水路のパイプライン化、道路の整備、農地の集約・大区画化を進めています。仙台市が策定した「農と食のフロンティア」計画の一環で、田んぼを広くして、効率的な営農が可能となるような区画整理を行っています。

施工:どんな雰囲気の現場ですか?

佐々木:自然相手の仕事ですから、工事の進捗状況が伸び悩むこともあるので、現場一丸となって工事を進めています。時には厳しく、時には友達感覚で、ちゃんと結束された現場ですね。

◎土木施工管理技士 佐々木さんの1日のスケジュール

5:00 起床
6:00 自宅出発
6:30 現場事務所に到着
6:55 朝礼
7:30 現場管理、内業
11:30 工程打合せ
12:00 昼休み
13:00 昼礼
13:15 現場管理、内業
16:30 作業終了
17:30 夕礼、内業、書類作成
19:00 勤務終了
19:50 自宅到着

地場ゼネコンではなく、派遣会社を選んだ理由

施工:復興関連工事の施工管理に従事するために、例えば宮城県内の建設会社などではなく、なぜ派遣会社を選びましたか?

佐々木:私が転職した会社は、東日本大震災直後に出来た、復興支援のための会社です。『施工管理求人ナビ』というサイトを運営しており、今は復興関連だけでなく全国展開していますが、なによりも復興案件が豊富で、勤務先を選べることが入社の決め手となりました。現場へ派遣された後も、親身になって相談やら助言をもらえるなどアフターケアもしっかりしています。ふつうに建設会社の正社員でしたら、会社が決めた現場で働くしかありませんよね。今の現場は2つ目ですが、自分の施工管理経験を生かせる現場、スキルを伸ばせる現場を選べるので、もっと早く“派遣”という働き方に出会っていればよかったと思っています。

施工:1つ目の現場も復興関連工事だったそうですが、どんな工事で施工管理をしましたか?

佐々木:自治体が発注し、大手ゼネコンが受注した、いわゆるCM方式の防災集団移転促進事業で現場施工管理を担当していました。復興工事で事故を起こすわけにはいかない、という強い気持ちがあったので、安全管理にはかなり注意しましたね。

施工管理技士の単身赴任は「自由」

作業指示を出す佐々木さん

施工:佐々木さんは最初、北海道から宮城県に単身赴任していましたが、最近、仙台市内に家族で転居したそうですね。単身赴任が大変だったから、家族で仙台に引っ越したのでしょうか?

佐々木:いや、宿舎は想像よりも快適で、単身赴任も苦ではありませんでした。単身赴任はむしろ“自由”というメリットが大きいです。私はドライブが趣味なので、休みの日に本州を巡るのも楽しみの一つです。ドライブついでに、他の復興工事の現場も観察して勉強しています。まだ行ったことがない温泉を巡るのも楽しみですね。

仙台に転居した理由は、仙台のほうが仕事も多く、給与も高めなので、こちらで働く決心をしたためです。復興工事もまだまだ続きますし、宮城県で施工管理スキルを磨こうと思っています。こちらであえて苦労していることを挙げるとすれば、現場まで自動車で通勤しているのですが、まだ仙台市内の道を把握できず、たまに迷っていることでしょうか。

施工:北海道でこれまでに経験してきた工事と、復興工事とでは、どこか違いますか?

佐々木:復興工事と一般的な工事で決定的に異なる点は、地域住民の方々との関係性ですね。これまでの経験上、一般的な工事は、住民からの苦情、それへの対応が大変なイメージですが、復興工事の場合は住民の方々から感謝されて、なお且つ協力的です。

施工管理技士の転職のすすめ

施工:建設業は全体的に、若手就業者が減少し、国もゼネコンも一体となって、建設業界のイメージ刷新に取り組もうとしていますが、佐々木さんが建設業界に入ったときのお話をお聞かせいただけませんか?

佐々木:なんと言っても建設業の醍醐味は、モノ作りのよろこびです。建設業界に入ったばかりの頃は、上下関係がきつく感じましたが、最近はそうした環境に耐えきれず、すぐに退職してしまう若手が大手ゼネコンでも増えていると聞きます。

建設業界でも女性就業者を増やそうという動きが増えていますが、女性の視点を取り入れれば、キツイ印象もやわらいで、よりよい現場環境が整備されていくと信じています。

施工:佐々木さんも施工管理歴20年のうち、たくさん苦労してきたと思います。なにか後輩の希望となるような経験談をご披露いただけませんか?

佐々木:私は下水道施設建設工事、老朽配水管更新工事、鮭や鱒の孵化飼育施設新築工事、公園施設改修工事、国道除雪関連などで現場代理人を務めてきました。今となっては、私の強みは、パイプライン関連の施工管理だと思っていますが、そのベースには大失敗した経験があります。

若い頃、軟弱地盤における配水管工事で漏水してしまい、会社に想定外の出費をさせてしまいました。私が小さな確認をしなかったために起きてしまった事故です。それからは、何事も確認することにしています。そういう先輩もいるから安心して、若手にも施工管理技士になってほしいです(笑)現場の数を多くこなして、毎日が勉強と思って励んでください。私もまだスキルアップしていますので。

施工:では最後に、これから施工管理技士になりたい若者や、新たな挑戦、キャリアアップを検討されている施工管理技士の方に、力強いメッセージをお願いします。

佐々木:一歩踏み出す勇気を出してください!建設業は面白いです。多くの人々の役に立つモノづくりの醍醐味をぜひ味わってほしいです。転職も同じです。私ももっと早くから転職しとけばよかったと思いますから。私の所属しているC4株式会社は案件がたくさんあります。自分に合う仕事場、待遇が必ずありますので、ぜひ一緒にC4で働きましょう!未経験者でも、経験者でも、玄人でも、施工管理技士として成長できます。

施工:ありがとうございました。

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