宿命?煙たがられる安全管理者

宿命?煙たがられる安全管理者

立場が変われば、現場を見る目も変わる

私の本職は建築の現場管理だが、ここ1年ほどは安全専任の仕事に就いている。今所属してる会社は、電気計装関係の仕事がメインで建築の仕事は全くなく、今までの知識や経験はほとんど活かす場面はない。

1年前は、これまでの現場管理の延長で安全を考えることが多かったが、最近になってやっと、施工管理の立場で現場を見る目と、安全専任者として現場を見る目の違いを意識的に切り替えられるようになってきた。

煙たがられる安全管理者

施工管理者として現場に立つ場合、安全には気を使うものの、やはりメインとなるのは、色々な問題をクリアしながらいかに作業を工程にのせ、予定通りに正しく作業を進められるか!ということだろう。

私も経験したことがあるが、時間がなく忙しい時に、安全担当の人間が作業に直接関係のない安全通路整備の話や作業場の整理整頓、点検表の確認などの指示をしてくることがあった。

「分かったけど、今はこの作業を今日中に終わらせるのが最優先なので、それらの指摘は作業の見通しがついてから必ずやります。だから、今すぐは勘弁して下さい!」と、何度話したか分からない。

そのたびに、現場のことが分からない安全担当の人間の言うことには素直に従えないな…と感じることが多かった。

今すぐやらないと危険に直結するのであれば、それは私でなくとも誰かがすぐにやるだろう。だが、どちらかと言えばやったほうがいい程度のことであれば、ちょっと待って下さい!という心境だった。

「それ、今すぐじゃなくてもいいじゃないですか!」と笑って返事をしながらも、つい、うるせえなあ…と思ったことがあったのも事実だ。

安全第一の観点からすれば、作業がどんなに切羽詰まっていようが忙しかろうが、駄目なモノは駄目!と言わなければならない時もある。誰かが嫌われ役になってでも言わなきゃいけないことがある。

頭では理解しているものの、日々の忙しさに気持ちの余裕もなくなり、つい「同じ安全指示をするにしても、全体を見極めてから言って欲しいし、モノには言い方ってもんがあるだろう!」と憤慨したことも多々あった。


安全管理者が嫌われる要因

施工の状態を見て、今最優先で手を打たなければいけない安全指示なのか、それとも少し時間を置いてからでも間に合うのかの判断は、正直、安全管理だけをやって来た人間には分からない。その判断は、先々の作業の見通しが読めるか読めないかに関わってくるからだ。

安全担当者は、施工のことが分かってる人間じゃないと駄目だ!と常々思っていた。施工している作業員の気持ち、現場の施工管理をしてる管理者の気持ち、そんな人たちの気持ちが分からなければ、その人たちが納得するような安全指示は到底出せないし、臨機応変な適切な指示も出せるわけがない。

どこの現場でも、安全担当の人間が周囲から浮いてしまい、どちらかと言えば嫌われているのは、そこに大きな原因があるのではないだろうか。

安全担当者の上に立つ、本部の安全の責任者にしても同様のことが言える。もっと現場の施工の勉強をし、作業に関わってる人たちの気持ちが分かるような安全担当者を育てなければ、本当の現場の安全確保は望めない。

だが、そんな安全担当者を育てようとしてるゼネコンは、いまだかつて見たことも聞いたこともない。それは、スーパーと名の付く大手も例外ではない。

作業員との理想的な関係

逆に、「安全担当者は現場のことを知らないほうがいい」と言う人も中にはいる。誰にどんな理屈があろうとどんな言い分があろうと、規則に照らし合わせて駄目なモノは駄目!と、押し通せるくらいの人のほうがいい!ということらしい。私はこの意見には全面的に反対だ!

誰も安全担当者の言うことを聞かなくなるのではないだろうか。もしそんな安全担当者がいたら、現場の作業員はその人が言ったことは一応実行するが、言われないことは例え気付いていたとしても一切何もやらない、なんてことも出てくるかもしれない。

どんな優秀な人でも、見落としもあれば間違いも犯す。理想的なのは、作業員が、あの人のためなら何も言われてないけど少し頑張ってやってやろうかな!と、安全担当者や施工管理者が見落とした部分まで、自発的に是正してくれるような関係を築くことだ。綺麗ごとだ!と思う人もいるだろうがそうではない。

普段から、作業員の小さなミスや安全上の配慮のなさを、誰にも報告することなくそっと耳打ちをして、「あれちゃんとやっておかないと駄目だよ!」と作業員たちを助けるような行動をとり続けていれば、いざという時、今度は彼らが味方になって助けてくれる。と同時に、直さなければならない理由も説明してあげれば、なお一層親切だ。

実際問題、私は現場管理をしていても安全管理をしていても、今まで何回も作業員たちに助けられている。それが徐々に自発的な現場の整理整頓や安全に結びつき、最終的に品質の高い施工になっていく。

そんな理想の関係は、どちらかと言えば施工管理者と作業員の間柄のほうが築きやすいように思う。安全管理者が煙たがられてしまうのは、やはりしょうがないことなのだろうか…。

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