安全管理者が嫌われる要因
施工の状態を見て、今最優先で手を打たなければいけない安全指示なのか、それとも少し時間を置いてからでも間に合うのかの判断は、正直、安全管理だけをやって来た人間には分からない。その判断は、先々の作業の見通しが読めるか読めないかに関わってくるからだ。
安全担当者は、施工のことが分かってる人間じゃないと駄目だ!と常々思っていた。施工している作業員の気持ち、現場の施工管理をしてる管理者の気持ち、そんな人たちの気持ちが分からなければ、その人たちが納得するような安全指示は到底出せないし、臨機応変な適切な指示も出せるわけがない。
どこの現場でも、安全担当の人間が周囲から浮いてしまい、どちらかと言えば嫌われているのは、そこに大きな原因があるのではないだろうか。
安全担当者の上に立つ、本部の安全の責任者にしても同様のことが言える。もっと現場の施工の勉強をし、作業に関わってる人たちの気持ちが分かるような安全担当者を育てなければ、本当の現場の安全確保は望めない。
だが、そんな安全担当者を育てようとしてるゼネコンは、いまだかつて見たことも聞いたこともない。それは、スーパーと名の付く大手も例外ではない。
作業員との理想的な関係
逆に、「安全担当者は現場のことを知らないほうがいい」と言う人も中にはいる。誰にどんな理屈があろうとどんな言い分があろうと、規則に照らし合わせて駄目なモノは駄目!と、押し通せるくらいの人のほうがいい!ということらしい。私はこの意見には全面的に反対だ!
誰も安全担当者の言うことを聞かなくなるのではないだろうか。もしそんな安全担当者がいたら、現場の作業員はその人が言ったことは一応実行するが、言われないことは例え気付いていたとしても一切何もやらない、なんてことも出てくるかもしれない。
どんな優秀な人でも、見落としもあれば間違いも犯す。理想的なのは、作業員が、あの人のためなら何も言われてないけど少し頑張ってやってやろうかな!と、安全担当者や施工管理者が見落とした部分まで、自発的に是正してくれるような関係を築くことだ。綺麗ごとだ!と思う人もいるだろうがそうではない。
普段から、作業員の小さなミスや安全上の配慮のなさを、誰にも報告することなくそっと耳打ちをして、「あれちゃんとやっておかないと駄目だよ!」と作業員たちを助けるような行動をとり続けていれば、いざという時、今度は彼らが味方になって助けてくれる。と同時に、直さなければならない理由も説明してあげれば、なお一層親切だ。
実際問題、私は現場管理をしていても安全管理をしていても、今まで何回も作業員たちに助けられている。それが徐々に自発的な現場の整理整頓や安全に結びつき、最終的に品質の高い施工になっていく。
そんな理想の関係は、どちらかと言えば施工管理者と作業員の間柄のほうが築きやすいように思う。安全管理者が煙たがられてしまうのは、やはりしょうがないことなのだろうか…。