会社を救ってくれ!未来を託されたのは、新米施工管理者の私でした

会社を救ってくれ!未来を託されたのは、新米施工管理者の私でした

施工管理は「企業努力」ではない

私は、会社に属する1人の施工管理者です。会社の一員であるからには、会社になんらかの形で貢献していきたい!と思いながら、日々仕事をしています。

私の思う「企業努力」とは、企業に属するひとりひとりの知恵と工夫と努力によって、企業全体の価値を創造していくこと。施工管理者である私たちは、日々重要な業務を行うことで企業に貢献している、そう考えていました。

しかし、ある日ふとこんな疑問が湧いてきました。

工程をつくり、現場の品質と安全をチェックし、原価管理をしながら、工期を守り、工事を終わらせる。この施工管理の仕事を日々こなしていくことが、果たして「企業努力」に繋がっているのか?―と。

そして気づいてしまったのです。

いや、待てよ。繋がっていないだろう。。。これは企業努力ではない。。。自分の仕事をしているだけ。。。プラスにもマイナスにもならないぞ。。。と。

施工管理者ができる「企業努力」とはなにか。社内に提案できることは何かあるのか。考えた末、私は施工管理の立場を活かした暴挙に出たのです。


施工管理者がまさかの製品開発!?

ある日、社内で仕事をしていると、デスクの遠くからこんな会話が聞こえてきました。

上司たち もうこの仕様をやめるしかない。しかし、このメーカー既製品にあう部材があればいいんだけど。。。

そう上司たちが話していたのは、我が社の住宅の仕様や構造上、メーカー既製品とどうしてもマッチしない箇所があり、毎度引き渡し後に問題が起こる事案で、仕様のモデルチェンジ当初から社内で頭を悩ませていることでした。

メーカー既製品とマッチさせるためには、それに見合った造作材と組み合わせる必要がありましたが、メーカーに問い合わせても「そんなうまい部材は無い」、建材問屋に問い合わせても「それに合う精度の高い部材は無い」、材木屋に頼んでも「うちは製品つくる会社じゃない」と言われる始末。

私が入社してからもこの問題は勃発しており、会社はもうお手上げ状態で、クレーム対応もうやむやにしてきた案件でした…。

Takict ちょっといいですか?新人が言うのもあれですが、メーカー既製品に合う部材をオリジナルで作ればいいんじゃないですか?

上司たち …!!??作れるのかい?(顔近め)

Takict NCルーターを導入している家具屋さんであれば、どんな形状でも対応できますし、大量生産でコストも抑えられるんじゃないですか?

上司たち …!!??なら君に未来を任せていいか!!??(顔近すぎ)

Takict 数日で予算、サンプル出します。設計に、部材の形状をCADで書いてもらい、私に送ってください。

こうして、新しい当社オリジナルの部材製作が始まったのです。ここから先は、現場の人間としての意地のお話になります(笑)。

現場の人間としての意地

早速、1つの現場に20個は使うモノを、当社実績の年間100棟分を6期に分けて、大量発注できる家具屋を探しました。設計から出された40×60×厚み9mmほどのプレートを、NCルーター加工+塗装費(色指定)でロットは6期分で300枚。

出てきた金額は1ヶ1000円、1現場2万で年間100棟で200万。クレームを防ぐためとはいえ、あまりに大きな金額…。もちろん上司は誰一人としていい顔はせず、ただただ落胆するばかりでした。

上司の予想は高くとも1ヶ500円程度、私としても1ヶ600円以内で出てくると予想していたので、出てきた金額があまりにも高額で愕然としました。

ですが、こんなところで諦める私じゃありません。ここからが施工管理者として、現場の人間としての意地の見せ所です。

“ここから先が、今まで会社が実現できずにうやむやにしてきた壁だ。必ず突破口を見つけ出し、突破してみせる!!”

現場を知っているからこその細かな納まりを考え、見えない部分・使わない部分の単純化を図り、無駄を削る。厚み、素材、形状の見直し、塗装方法、塗装部分、色指定を除外し、設計を指示。ロット数を3期分の600枚まであげ、これで再度見積もりを依頼。。。

後日、出てきた金額は、1ヶ400円、1現場8千円、年間80万!!!

想像の域を遥かに超えた単価とサンプルの仕上がり、ロット発注にかかるコストと、今後の着工物件数との兼ね合いも考えられた申し分ない製品提案に、役員だけでなく全社員が満場一致ですぐに決裁が下り、長年クレームの根源になっていた壁を打破することができました。

こうして、私の「企業努力」は実を結んだというわけです。


「企業努力」は社員を救うことにもなる

以前、家族経営の会社に飛び込み、社風を打ち破り、役員までに成り上がった人物に「どうすれば会社を良い方向にできるか?」と質問したことがありました。その人の答えはこうでした。

「”できません、無理です”は絶対言わない。嘘でも言わない。そのうえで、会社のためになると思った提案や意見はぶつけ続けること。できる仕事だけしているのってつまらないじゃん?会社にいるということは、いい提案を出して、皆を巻き込んで、いい方向に進んでいける。それが企業の醍醐味だぞ。最初は提案が却下され、相手にされなくてもぶつかり続ける。非常識もやり続ければ、常識に変わるんだよ。」

そうやって、この人は風通しの悪い会社に風穴をあけ、会社を変え、大きな企業へと発展させることに成功したそうです。

その方の話を聞いて、確かにその通りだなと納得しました。社内において、現場を熟知しているのは「現場責任者」である我々、施工管理者です。現場で気づくことはたくさんあります。

あんなのあったらいいな、もっとこうしたらいいのになと思ったなら、コスト面と効率面、現場での手間、ニーズ等、ありとあらゆる必要な情報を入手・精査し、資料にして、そのまま会社に「自分の提案」として、上司や営業、設計を呼んでプレゼンをすればいいのです。

提案が通らなかったとしても、なにか会社のためにしようとしてくれている、という「熱意」は確実に伝わります。会社のために自分ができる「企業努力」をすることは、全ての社員を救うことにもなります。そういう大きな視野で物事を考え、施工管理の仕事を進めてみてはいかがでしょうか。

余談ですが、私はこの事例を皮切りに、施工管理者でありながら当社オリジナル家具の提案をし、付加価値を生み出すためのプロジェクトを開始しました。社員一同楽しく愉快に取り組んでいます。

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」

これは、ジュール・ヴェルヌが残した言葉です。この言葉は間違いないな、と日々実感しながら、今日も楽しく仕事に励んでいます。

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大工職から施工管理職へ転身。住宅ハウスメーカーにて、施工管理と外国人大工技能実習生の教育、現場メディアを担当している。
「施工管理に取り組む姿勢」や「施工管理は楽しい」を発信する。
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