「現実を隠して女性を採用すべきか?」24歳女性現場監督の葛藤とは?

24歳女性現場監督の葛藤「現実を隠してでも、女性を採用すべきか?」

建設業界の「女性起用ブーム」を24歳女性現場監督はどう思うか?

今、建設業界では女性を積極的に採用する建設会社が増えてきています。当事者としても「おかしくない?」と思うほど、建設業界全体で女性建設技術者(けんせつ小町)が流行しています。

会社の採用活動や外部への宣伝では、決まって女性社員を起用します。「わが社ではこんなに積極的に女性を採用している」というアピールです。その時には必ず「職場環境は最適です」「結婚や育児など女性としての生活を重視してくれます」「福利厚生は大変に充実しています」と大々的にアピールしなければなりません。

私は毎年、新卒生向けの会社説明会などに「若い女性建設技術者」として参加していますが、ピカピカの女子学生さんたちは必ず口を揃えて「現場に女性って本当に大丈夫なんですか?」「福利厚生について教えてください」という質問をしてきます。

こちらとしては、学生さんに会社についてたくさん知ってもらいたい反面、あまり現実的な事を言いすぎて最初から引かれてしまっても困るので、個人的に様々な思いを抱えながら、説明会や採用活動を行っています。

もちろん会社としては、ポジティブな事しか言いません。

だからこそ、表面的ではなく本当の意味で女性建設技術者が活躍できる環境をつくるためには、こうして本音を書くことも重要だと思っています。

女性現場監督の「福利厚生」表向きと現実のギャップ

私の会社は数年前から女性採用プロジェクトとして、私を含め数名の女性社員を採用しました。

私の会社に限って言えば、そのプロジェクトは始まったばかりです。そのため、私たち女性建設技術者が管理職として現場を仕切っていくようになるには、まだまだ時間がかかりそうですし、実際にそのような先輩女性監督は少ないのが現実です。

そして女性を積極的に採用しようという試みの中で、どこの会社でも注力しているのが、女性のための福利厚生を充実させることです。

私の会社の場合、結婚や出産に際する休暇、生理休暇、社内女性チームの結成、育児や家庭との両立を応援する在宅勤務など、今までになかった制度を次々と新設していきました。

しかし、まだその制度をしっかり活用できた事例はなく、ほぼ形だけのものになってしまっているというのが現状です。


女性建設技術者の増加と晩婚化・少子化の問題

中小企業の場合、女性社員の採用にまだまだ抵抗がある建設会社も少なくありません。

私の会社も大きくないため、女性のための新しい制度を設けても、「そんな制度を使うなんて甘えている」などと言われ、形ばかりのものになる心配があります。なぜなら、現場は常に動いていて、小さな会社では人手も足りず、派遣社員も使えず、社員はフル稼働だからです。

そんな環境なので、せっかくの新しい制度も、かなり使いづらいと思っています。表向きは「育児と家庭の両立が可能です」と言っていますが、制度があるだけで、私自身もこのままでは子育てはおろか結婚も難しいと感じています。

実際に、子供ができて産休をとった先輩社員は、内勤の事務の女性しか前例がなく、現場に出ている女性はみんな独身で前例もありません。おこがましいようですが、政府の女性活躍推進と少子化対策は矛盾しているとさえ思えてきてしまいます。

建設業界では「私たちの世代が働く女性の先駆け」となるそうですが、私は経済的・物理的に晩婚化は避けられそうにないと思いながら奮闘しています。正直なところ、私は結婚・出産を機に、退職しなければならないのでは、という不安も抱えています。

しかし、女性建設技術者がもっと増えることで、会社も業界全体も女性が働きやすい環境を整備しやすくなるという側面もあると思っているので、女性建設技術者の採用に賛成しています。

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24歳のけんせつ小町。女性現場監督として孤軍奮闘中。お父さん・おじいちゃん世代と一緒に働いている経験を生かし、もっと建設業界に女性技術者が増えるよう、デリカシーのない建設業の男性陣にモノ申す。
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