統括安全衛生責任者って具体的に何をするのか?どうすればなれるのか?文字だけ見ても難しく感じてしまいますよね。必要な資格や選任が義務付けられている事業場、職務内容・他の関係者についてをこれから紹介していくのでぜひチェックしてください。
統括安全衛生責任者とは?
ある一定規模以上の事業場を指揮・管理する人として、統括安全衛生責任者が必要になります。これらは労働安全衛生法第10条で定められています。
異なる業種が混在する事業場において、災害を防止するための指揮・統括する人が統括安全衛生責任者の主な職務になります。これから統括安全衛生責任者の詳細を紹介するので見ていきましょう。
統括安全衛生責任者の職務
統括安全衛生責任者は、6つの職務が定められており
- 協議組織の設置及び運営
- 作業間の連絡及び調整
- 作業場所の巡視
- 関係請負人が行う労働者の安全衛生教育に対する指導及び援助
- 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械、設備等の配置計画を作成及び当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が安衛法又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導
- その他労働災書を防止するために必要な事項
これらを必要に応じて統括管理することが職務内容です。
選任する事業場
統括安全衛生責任者の選任が義務付けられている事業場は、一般的に表に記載しているとおりです。
建築工事関係
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ビル建設工事 | 当該工事の作業場の全域 |
鉄塔建設工事 | 当該工事の作業場の全域 | |
送配電線電気工事 | 当該工事の工区ごと | |
変電所又は火力発電所建設工事 | 当該工事の作業場の全域 | |
土木工事関係 | 地下鉄道建設工事 | 当該工事の工区ごと |
道路建設工事 | 当該工事の工区ごと | |
ずい道建設工事 | 当該工事の工区ごと | |
橋梁建設工事 | 当該工事の作業場の全域 | |
水力発電所建設工事 | 堰堤工事の作業場の全域 | |
水路ずい道工事の工区ごと | ||
発電所建設工事の作業場の全域 | ||
造船業関係 | 船殻作業場の全域、艤装又は修理作業場の全域、造機作業場の全域又は造船所の全域 |
統括安全衛生責任者の選任要件
一定規模以上の事業場に統括安全衛生責任者を配することが定められており、それらには人員数や業種によって設定されています。
工事の種類 |
常時労働者人数 |
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ずい道等の建設の仕事 | 30人以上 | 50人以上 |
圧気工法による作業を行う仕事 | 30人以上 | 50人以上 |
橋梁の建設の仕事 | 30人以上 | 50人以上 |
鉄骨造り、鉄骨鉄筋コンクリート造りの建築物の建設の仕事 | ― | 50人以上 |
その他の仕事(造船現場、木造建築、改修補修工事現場等) | ― | 50人以上 |
注1. (1)~(4)の仕事において、(元方安全衛生管理者含め)統括安全衛生責任者を選任し、指揮及び統括管理させた場合は、店社安全衛生管理者を選任し、当該職務を行わせているものとみなされます。(安衛則第18条の6第2項)
注2. (1)~(5)の仕事において、建設業における元方事業者が、統括安全衛生責任者を選任した場合は専属の者とするよう努めてください。(元方事業者による建設現場安全管理指針)
注3. 「一定の橋梁」とは、人口が集中している地域内の道路もしくは道路に隣接した又は鉄道の軌道上もしくは軌道に隣接した場所をいう。(安衛則第18条の2)
注4. (1)の仕事のうち、出入口からの距離が1,000メートル以上の場所において作業を行うこととなるもの及び深さが50メートル以上となるたて坑(通路として用いられるものに限る。)の掘削をともなうもの、(2)の仕事のうち、ゲージ圧力0.1メガパスカル以上で行うこととなるものについては、建設業における元方事業者は救護に関する技術的事項を管理する者(救護技術管理者)を選任する必要があります。(安衛法第25条の2、安衛法第30条の3、安衛令第9条の2)
※厚生労働省公式より
統括安全衛生責任者になるには?
これまでの記載で選任しなければならない条件などを把握したと思います。これから統括安全衛生責任者になるためには、混在する事業場においてどういった人がなることができるのか紹介しますので、しっかり把握しておきましょう。また、どのように選任されるのかも紹介していくのでチェックしてください。
資格要件を解説
その事業場で必要としない資格や国家資格・安全衛生資格などが条件ではなく、事業場において実質的統括管理する責任を持っている人が選任されます。一般的に現場代理人(工場長、所長)など、元請け業者の代表者が選任されることが多いです。
また、選任する側は統括安全衛生管理の教育を受けた人しか選任することができず、受けていない者からの選任は認められていないので注意してください。
講習内容は開催者によって異なる
業種や労働者数によって規模が異なるため、講習内容が講師によって変わっていることがあります。主な講習内容を紹介するのでチェックしてください。
- 職務内容と職務を円滑に進めるためのコツ
- 事業場の安全衛生水準を高めるOSHMSについてとリスク管理について
- これまでの事例とそれについてのグループ討議
- 労働災害防止計画と企業取組
- 災害事例にみる企業の責任と裁判事例
注意点として開催者によって内容や事例が異なるので、統括安全衛生責任者を1度経験したからといって講習をおろそかにしないことが重要です。
ほかの資格との関係性・違い
統括安全衛生責任者のほかに、元方安全衛生管理者と安全衛生責任者を選任するケースがあります。事業場規模が大きくなると、統括安全衛生責任者だけでは管理できなくなることを防ぐために選任されるのです。ここからは、どういった関係性なのか、違いはあるのかを紹介していきます。混合しないためにもぜひ参考にしてください。
元方安全衛生管理者との違い
統括安全衛生責任者は事業場において安全や衛生管理(労働安全衛生法第30条第1項各号)を統括して行いますが、元方安全衛生管理者は事業場の安全・衛生管理(労働安全衛生法第30条第1項各号)の技術的補佐することが職務となっています。
また、統括安全衛生責任者とは違い、学歴や実務の経験年数が資格として必要なケースがあります。統括安全衛生責任者がNo.1の立ち位置とすれば、実質的統括管理ができるNo.2の立ち位置と表現するとわかりやすいですね。
安全衛生責任者との違い
統括安全衛生責任者は元方事業者から選任されますが、安全衛生責任者は元方事業者の下請け事業者から選任されます。混在する事業場に複数の事業者が存在するなら、各事業者から選任することが必要です。
選任する条件として、常時労働者30人以上のずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事。それら以外の仕事では50人以上と決められています。
職務は異なり、統括安全衛生責任者と連絡を取り合ったり統括安全衛生責任者が決めた連絡を従業員に伝達することなどが職務として含まれています。
現場代理人との関係性とは
現場代理人は現場所長が兼務することが多く、技術的知識や経験が豊富なためそれらを考慮すると現場代理人=現場所長となるケースが多いです。事業場において「実質的統括管理する責任を持っている人」が統括安全衛生責任者に選任されるので、元請け業者を代表する現場代理人(現場所長)が統括安全衛生責任者として選任されることが多いです。
法令をしっかり把握して選任・届出を!
定められた法令が絡んでいる事が多いので、選任された際は法令をしっかりと把握しておくことが重要です。講習内容も開催者によって異なり、ちゃんと理解をしていなければミスを招いてしまう危険性も。労働者を危険に晒してしまうことは責任者として許されません。
難しい内容も多いですが一つ一つしっかりと理解を進めて、事業場の安全を管理していきましょう。