タイル割付図の作成で「あえて“犠牲”にすべきこと」とは?

タイル割付けを効率化する方法

タイル割付図を自分で作成・チェックした経験はありますか?

比較的に計算しやすい45二丁掛けのタイル割りでさえも、頭の中で「45」、「95」の数字がグルグル廻って離れなくなってしまいますよね。……なので、私はタイル割付図をチェックする場合、タイルだけに集中できる環境を作っています。

さて、私なりのタイル割付図の作成・チェックに関する効率アップのコツをまとめておきます。

タイル割付けは、まず「主観」を決める

私は、タイル割りを実際に考える前に、まずは「どこをメインにするのか?」を決めます。

言い換えると「主観」を決めるということです。主観を決めることでタイルが上手く割り切れない時にどちらを優先するか決めやすくなるからです。ある意味、機械的に優先順位を決定することができるようになるので、作業スピードも向上します。そして何よりもいちいち悩まなくても良くなる点が、精神的にも非常に楽にさせてくれます。

では、一般的にどのように主観を決めるのかというと、壁のタイルにしても床のタイルにしても、長辺方向と短辺方向がある場合は、長辺方向を主観とします。

壁のタイルの場合は、長辺方向を主観とすることで、より多くのタイル面積を綺麗に割りつけることが出来ます。だから、建物の長辺方向でタイルの割り切れる寸法を確認して、後どのくらい調整すれば良いかを確認することから始めると効果的です。

床のタイルの場合は、主観というより1本メインとなるラインを引くことから始めると効果的です。例えば四角い部屋なら部屋のセンターか、サッシのセンターあたりが良いです。クランクしている床であれば、一番メイン部分のセンターなどをメインのラインとすると、実際にタイルを貼った時の違和感は少なくなります。

タイル割りの調整は、法的に有利な方向へ

次に、タイル割りを行っていく上で綺麗に割りつけるために必ず確認すべき内容は、「階高」と「サッシ廻り」です。しかし、タイル割り付け図を作成したり、チェックしたりする時に、勝手に変更してはいけません。設計者に確認すべき内容もあるからです。

まず階高は、水平打ち継部のシーリングの幅をどの位確保するかにもよりますが、例えば15mm確保したとすると、45二丁タイルで割り付けると階高は3010など中途半端な数字になります。しかし、階高はタイル割りまで考慮している設計者ならともかく、そうでなければ3000と綺麗な数字になっていることが多いです。

そこで、勝手に階高を上げてしまうと、建物全体が高くなってしまいます。すると斜線制限や地上から31mのラインなどをギリギリに設計している場合、法的に引っ掛かってしまうことがあります。だから、階高を変更したい場合は必ず設計者に確認する必要があります。

次に、サッシ廻りのタイル割りですが、タイルを綺麗に割るために多少の寸法調整が必要になることが多々あります。サッシの開口寸法は、採光や排煙など法的な計算に使用されます。だから、サッシの寸法を小さくする方向に調整を行うと、採光がNGになることがあります。「たった25mmくらい良いじゃない?」と感じるかもしれませんが、部屋面積によってはギリギリの設計になっている場合がありますので、「たった25mm」くらいならサッシを広げる方向で調整します。


半端をどう処理するかがセンスの見せ所

四角い建物で開口が1つも無い建物であれば、タイルを割り付けるのも非常に簡単で、中途半端な寸法のタイルを1つも入れなくても完成させることが出来るはずです。

しかし、どこかの面にサッシを1枚だけ追加すると、途端にタイルが割り切れなくなってしまいます。それはサッシの両端にひび割れを防ぐためにシーリングを設けますが、シーリングの幅はタイルの目地幅と同じではないため、タイルを割り込むと全長が長くなります。

しかし、建物の反対側は開口が無いので当初のまま、建物を台形に造るわけにはいかないので、何らかの調整が必要になります。先ほどの場合はサッシのない面にも、化粧のシーリング代を確保することで全体を綺麗に割り付けることが出来ます。

ところが、壁タイルにしても床タイルにしても、完全に正規のタイルの規格寸法で割り付けることの出来る建物や部屋はないと言っても過言ではありません。実際は、どこかで「切り物」のタイルを使用して建物や部屋の形状に合わせています。

「せっかくタイルを割り付けるのだから全部きれいに割り付けたい」と言うのは、この記事を読んでいる建設技術者・技能者も含め、全ての人が感じていることですが、そこがタイル割付図の悩ましいポイントです。

しかし「違和感のないように、切り物タイルを入れて上手に納める」というのもテクニックの1つです。そして、半端の寸法をどのように処理をするのかということは、施工者のセンス・技量でもあると思います。

具体的な半端の納め方とは?

では、具体的にどのようにタイルを納めるのが良いのか?

私なりのテクニックを紹介します。

まずは、端に入る中途半端な寸法のタイルは、「タイル幅の半分以上」にします。例えば、壁の45二丁掛けのタイルなら45mm以上、床の100角のタイルなら50mm以上の寸法にすべきです。

その中で、床タイルの端に小さい寸法のタイルが入ってしまう場合、もしもメインのラインに目地を持ってきているときは、タイルのセンターに変更してしまいます。言い換えると「目地芯」を「またぎ」に変更します。すると、当然ながら端の中途半端な小さいサイズのタイルの寸法に、タイルの半分の寸法を足すことが出来るので「タイル幅の半分以上」が確保できるのです。

それでも、凸凹が多い場合はどこかに小さなサイズのタイルが入ってしまうこともあるでしょう。私の場合は、大勢に影響がなければ小さなサイズをそのまま入れます。

「えっ、さっきまでタイルの半分以上って言っていなかったけ?」確かにそうです。当然目につく所はタイルの半分以上にするべきです。しかし、奥まった壁の取り合いの1mくらいの部分に小さなサイズのタイルが入る事で悩むなら、時間の無駄だと考えています。

なぜなら、こんなことを言ってしまったら元も子もないですが、そもそも「一般の人はタイル割りなんて全く気にしていません」。みなさんは建設業界に入る前にタイルの目地の位置なんて気にしたことってありますか?きっと9割以上の人は気にしていないでしょう。だから、本来ならタイル割りなんて必要ないのです。実際に、タイルに合わせて建物を造るのは日本だけで、アメリカの建物にはタイル割りなんて存在しません。

だから、タイル割りを気にするのは同業者だけであり、同業者はメインがしっかりとタイルが割れていれば、優先順位の低い所がタイルが割れていなくても「仕方ない」と感じる人がほとんどです。しかし、有名な設計事務所であればそういう細かい所も気になる人がたくさんいると感じるので、その場合は設計事務所も上手に巻き込んで解決策を考えるのが効果的です。

【まとめ】タイル割付けの効率アップ方法

以上の内容をまとめると、タイルの割付けを行う時は、主観を決めて優先順位を確定させることをまずは行います。そして、実際にタイルを割りつける場合は法的にNGにならないように、出来るだけ法的に有利な方向に調整を行い、場合によっては設計者への確認が必要です。

さらに、壁や床の端などで中途半端なサイズになる場合は、出来るだけタイルの半分以上の寸法になるように調整を行い、優先順位の低いあまり目につかない場合は犠牲にしてしまうのも有効な手法です。

最後に、タイル割りを始めてしまうと私自身もそうですが、「こだわりすぎて前に進まない」という状態になりがちです。だから、適度に「犠牲」にするポイントを作ってくということが、作業能率的にも精神的にも有効です。

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