コロナ禍の1年間で撮影した作品の中から選ぶ「ベスト5」
以前、橋梁写真家の依田正広さんについて、『 「国内76万か所の橋を全部撮る」 土木素人が”橋梁写真”に魅せられたワケ 』という記事を書いた。
1年半ほど経ったあるとき、「コロナ禍だけど、今でも撮影しているのだろうか?」と妙に気になった。依田さんに連絡してみると、「相変わらず撮影ばかりしている。最近は地方には行けないが、近場で夜中に撮っている」との返事があった。
最近どんな写真を撮っているのか、取材したい旨を伝えると、即OKになった。ということで、コロナ禍の1年間で撮影した作品の中から、「しまなみ海道」「ゆめしま海道」、「安芸灘とびしま海道」の「瀬戸内三海道」を回り、ピックアップし、各写真の出来栄え、ポイントなどについて語ってもらった。
そのうえで、依田さん本人に”ベスト5″を選んでもらった。なお、しまなみ海道の橋は10橋中7橋が田中賞を受賞している(生口橋、多々羅大橋、大三島橋、大島大橋、来島海峡大橋第一、第二、第三)。
依田 正広さん 橋梁写真家
しまなみ海道(西瀬戸自動車道)
尾道市〜今治市を結ぶ延長約59kmの自動車専用道路(国道317号)。全10橋。
尾道大橋(斜張橋、橋長386m)
尾道大橋(画像提供:依田正広氏)
前回、本土のほうからだと橋全体を撮れるポイントが見当たらなかったので、今回は、向島に渡って、釣り場から撮った。今は無料道路。しまなみ海道ではない。見づらいが、2本の橋が並行していて、奥が新尾道大橋(しまなみ海道)。新尾道大橋と比べ、ワイヤーの数が少ない。
新尾道大橋(斜張橋、546m)
新尾道大橋(画像提供:依田正広氏)
本土から撮影したが、撮影ポイントが見つからず、家や車などがどうしても入ってしまった。ちょっと残念。撮影ポイントを見つけて機会があればリベンジしたい。
因島大橋(トラス吊橋、1270m)
因島大橋(画像提供:依田正広氏)
向島から撮影。釣り場ポイント。この撮影のあと、近くで車中泊。
生口橋(斜張橋、790m)
生口橋(画像提供:依田正広氏)
朝方に撮影。1日で周る予定だったので時間がなく、陽が出るまで待てなかったので、難しかった。
多々羅大橋(斜張橋、1480m)
多々羅大橋(画像提供:依田正広氏)
道の駅から撮影したが、多分ここがベストの撮影スポット。撮影は一番ラクだった。主塔のデザインが良い。ワイヤーの数が多くてカッコ良いが、右側のワイヤーが後ろの山で見えなくなってしまった。ちょっと失敗した。
大三島橋(アーチ橋、328m)
大三島橋(画像提供:依田正広氏)
この写真は橋の上に電線があるのがイマイチ。もう1か所撮影ポイントがあったので、ナビ通りに行くとやたら狭い道を案内されてどんどん山道へ。石があることはわかったが、バックして後退することもできずそのまま直進したら、サイドドア下付近にぶつかってしまった。まだ2日目だったので非常にブルーな気持ちになった。車自体は走行できたので良かった。
伯方・大島大橋(伯方:箱桁橋、325m、大島:箱桁吊橋、840m)
伯方・大島大橋(画像提供:依田正広氏)
2つの橋が一体化している。伯方橋は桁橋で、あまり映えないので、大島大橋の斜張橋区間を広角レンズで撮影したが、これしか撮りようがなかった。空も雲ばっかりで残念。
来島海峡大橋(第一大橋:箱桁吊橋、960m、第二大橋:箱桁吊橋、1515m、第三大橋:箱桁吊橋1570m)
来島海峡大橋(画像提供:依田正広氏)
亀老山の展望スペースで撮影。橋全体が入る撮影スポットはここだけかもしれないが、地元の人はもっと知っていると思う。ただ、個人的には橋を俯瞰で撮るのはあまり好きじゃない。構図的に同じになってしまうので、この写真もちょっとつまらない。
ゆめしま海道
愛媛県上島町の4つの島(弓削島、佐島、生名島、岩城島)を結ぶ無料道路。岩城島のみまだつながっていない。全3橋(建設中含む)。
弓削大橋(斜張橋、325m)
弓削大橋(画像提供:依田正広氏)
対岸に降りることができ、そこから撮影。橋全体を撮ることができ満足。
生名橋(斜張橋、515m)
生名橋(画像提供:依田正広氏)
田中賞を受賞した橋。生口橋撮影後、フェリーに乗り、移動し撮影。もう少し陽が射していれば、スゴくカッコ良いのだが、残念。若干雨も降っていた。
岩城橋(斜張橋、735m)
岩城橋(画像提供:依田正広氏)
来年3月に完成予定。完成すれば、ゆめしま海道が開通する。建設中の橋梁は、あまり撮る機会がないので、ボク的には貴重。前に撮影に来たときは、工事着工前だったので、撮れなかった。
安芸灘とびしま海道(安芸灘諸島連絡架橋)
呉市〜安芸灘諸島(下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島、岡村島など)を結ぶ。安芸灘大橋のみ有料。現在7橋。
岡村大橋(ニールセンローゼ橋、228m)
岡村大橋(画像提供:依田正広氏)
来島海峡大橋撮影後、大三島の宗方港からフェリーで岡村島に渡って撮影。岡村大橋の先にもうイッコ橋梁を建設する予定があるが、それがいつになるかはわからない。ちょっと晴れ間が出たが、それでもイマイチ(笑)。
中の瀬戸大橋(ニールセンローゼ橋、251m)
中の瀬戸大橋(画像提供:依田正広氏)
岡村大橋とまったく同じ橋で、架設工法も同じだ。中の瀬戸大橋は岡村大橋よりも大きい。橋脚が1基多いので写真は個人的にはこちらのほうが好きだ。
平羅橋(斜張橋、98.5m)
平羅橋(画像提供:依田正広氏)
突然晴れた。橋よりも雲のほうに目が行き、雲を多めに絡めた構図にした。左上の鳥も良い感じ。
豊浜大橋(トラス橋、543m)
豊浜大橋(画像提供:依田正広氏)
ちょうど天気が回復してきたのと、たまたま船も通ったので、良かった。やっぱトラス橋は映える。
豊島大橋(吊橋、903m)(田中賞受賞)
豊島大橋(画像提供:依田正広氏)
夕陽が落ちていく感じと、見たことがないような雲の不自然な感じが良かったので、空を多めに入れた。橋の写真だけど、橋がメインではない構図に(笑)。
蒲刈大橋(トラス橋、480m)
蒲刈大橋(画像提供:依田正広氏)
夕陽が沈みかけている感じ。ここは防波堤に行けるので防波堤の上から撮影。ここも雲が比較的多めだったが、雲の間からの青空が見える感じが非常に好きだ。
安芸灘大橋(吊橋、1175m)(田中賞受賞)
安芸灘大橋(画像提供:依田正広氏)
ここは陽が沈んだ直後に撮影。空がピンク色になっているところは非常にきれいだが、ほとんど曇りになってしまった。
”最も映える”橋梁写真ベスト5
1位 因島大橋(しまなみ海道)
因島大橋(画像提供:依田正広氏)
2位 蒲刈大橋(安芸灘とびしま海道)
蒲刈大橋(画像提供:依田正広氏)
3位 豊浜大橋(安芸灘とびしま海道)
豊浜大橋(画像提供:依田正広氏)
4位 豊島大橋(安芸灘とびしま海道)
豊島大橋(画像提供:依田正広氏)
5位 岩城橋(ゆめしま海道)
岩城橋(画像提供:依田正広氏)
やっぱり、橋梁の撮影で最も重要なのは「天気」
4泊5日で、岡山県、広島県、島根県、鳥取県の橋を巡る強行軍。1日で撮影。フェリーで行き来。
撮影ポイントは、あらかじめGoogleなどで調べて、「どこから撮れば映えるのか」を考えながら決めている。しまなみ海道のポイントを決めるのには、1ヶ月ぐらいかかった。けっこう大変だった。しまなみ海道の撮影は5年後ぐらいで良いかなと思っている。
橋梁の撮影で最も重要なのは、やはり天気。陽が射してないと、橋が暗く見えてしまう。どうしても映えない。天気予報は常に確認しているが、どうも当てにならない(笑)。
雲もけっこう重要。雲のあるなし、カタチによって、全然違った写真になる。
自分が好きな構図は、橋の下からあおって撮る。下からあおると、迫力があり、昼間は橋を走行中の車も入らないので良い。橋を横から撮影すると橋の形式がわかりやすいのでそれも好きだ。夜は、走行中の車も含めて撮りたい。長時間露光をすると、ブレーキランプなどが流れて、帯状になるので光の光跡が美しい。
もともとは、斜張橋や吊橋が好きで橋梁写真を撮り始めたが、ずっと撮っていると飽きてきた(笑)。最近はトラス橋がお気に入りになっている。現代の橋はどれも同じような感じで建設されているので、どれを撮ってもあまりピンとこなくなっている。
逆に、古い石橋や木橋のほうが好きになってきちゃった(笑)。昔のデザインを復元した新しい橋もあるが、しょせん新しい橋なので、やっぱり歴史を感じることはない(笑)。
次は九州、福岡県、佐賀県、大分県あたり、できれば宮崎県まで行きたい。九州は古い石橋がけっこう多いので、そういう橋を巡って、歴史を感じたい。東北も魅力的な橋が沢山ある。特に、撮影をそれほどしていない青森県、秋田県には行きたい。夢は写真集を出版することだ。
依田さんが自作したウインドブレーカー(表裏)