天使と悪魔の佐藤さんから学んだ「建設現場での教訓」

※写真はイメージです。文中に登場する佐藤さんではございません。

天使と悪魔の佐藤さんから学んだ「建設現場での教訓」

印象に残っている2人の佐藤さん

現在、主にRC造の分譲マンションを施工管理する現場監督の立場にいます。

今まで様々な特徴ある業者の担当者さんや職人さんを見てきました。その中でも一際、印象に残っている職人の佐藤さん”たち”。

“たち”と書いた理由は、対照的な性格の佐藤さんが2人いたからです。その2人の佐藤さんを今日はご紹介できればと思います。

天使のような「佐藤さん」

学校を卒業して、初めて就職をしたマンションの建設現場にいた、土工事の職人である「佐藤さん」。

年齢は定年間近のおじさんでしたが、いつもニコやかで性格も優しくおおらか。どんなに困難な状況になっても笑顔を崩さず、肉体労働をしていると感じさせない程の紳士ぶりでした。

それはまるで、天から舞い降りて来たかのようで、他人に対して非難したり、怒った姿を一度も見たことはありませんでした。

仕事に対してもスペシャリストで、ユーモアを交えた内容で現場の色々なことを教えてくれました。佐藤さんとの印象的な会話でこんなことがありました。

佐藤さんが土工事の作業でスコップを持って整地をしている時に、たまたま手伝いで一緒にスコップを持って整地をしていました。作業が終わったので、スコップから手を離して地面に置きました。その時、佐藤さんにこう言われました。

「○○(私の名前)さん、立場のある監督さんは道具を優しく取り扱わないと。女性と同じように扱わないといけないよ」と。

自分の中では、決して荒っぽくスコップを地面に置いたわけではなく、他の作業員もよくやっているように、スコップを斜めにして手を離し、地面に置いた感覚でした。

しかし、「地面とスコップのカチンと鳴る接触音も配慮しなければいけないよ」というのが、佐藤さんの教えでした。他の人が話すと少しキザっぽく聞こえる内容も、佐藤さんが話すと、全く同じ内容でも爽やかに聞こえるから不思議です。

もし、近くで女性の方が話の内容を聞いていたとしても、印象は良かったと思います。そんな佐藤さんは、いつも笑顔いっぱいで、性格の良さが全身から表われている方でした。

他にも、こんな出来事もありました。現場で使用する「ネコ」のことを、初めて私に教えてくれた時のことです。

「(一輪車を指差して)あれはネコって言うんだよ。何でイヌって言わないんだろうね〜(笑)」と、新人だった私にユーモアたっぷりに教えてくれました。

私にとっては初めて聞く話だったので、「へ〜。そういう用語を使うんですね!」と教えてもらったことを今でも覚えています。

その後、佐藤さんがその一輪車を探していて、見つかった時の第一声が「いたいたいた〜!!」と、声高に叫んでいる時には爆笑でした。

普通、物が見つかった時は「いた」ではなく「あった」と言うと思いますが、まさに動物の猫を見つけたかのように、驚いて声を出している姿は大ウケしてしまいました(笑)。

天使の佐藤さんがいてくれたおかげで、緊張と不安が入り混じる初めての建設現場の中でも、和むひと時を過ごすことができました。


悪魔(失礼)のような「佐藤さん」

一方、もう1人の佐藤さんは、天使の佐藤さんと同じ現場の土工事の職人仲間で、年齢も天使の佐藤さんと同年代の方でした。

お察しの通り、とってもアクの強い人で、何でもズケズケと好き放題に言い放つ姿が印象的でした。職人の仲間内で集まると、決まって人の悪口を言い始めます。そこに、天使の佐藤さんがフォローとして入るのが、お決まりのパターンでした。

ただ、この悪魔のような「佐藤さん」は、悪気があるわけではなく、気持ちに正直に生きているような感じでした。口八丁手八丁で、仕事モードに入るとものすごい勢いで、次々と仕事を進めてくれる職人さんでした。

誰かが何かを手伝っていると、「こら〜、はよせんかい!」と鼓舞してくれる、とってもいい職人さんです。現場管理をする立場の私としては、工程をガンガン進めてくれて、すごく助かっていました。

業者の仲間内からは、尊敬と畏怖の念で絶対的な存在だったと思います。

この「天使」と「悪魔」の名付け親は、私が勝手に付けたのではなく、元々は現場管理をしていた職場の先輩が付けた名前でした。先輩は、他人のことをズケズケと話す佐藤さんの話をいつも面白がって聞いていました。

細かくは書けませんが、過去にいくつもの武勇伝があり、悪魔の佐藤さんは自慢話をするのが好きな方でした。かといって悪いことばかりではなく、仕事をし始めたらチャッチャと早く片付けてくれるので、非常に貴重な戦力となってくれていました。

年齢も定年近い方でしたが、20代の若い女性を見ると、その当時でもナンパのように声を掛けていました。まさに、『本能に従って生きる』を信条とした方だったのかもしれません。

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2人の佐藤さんから学んだ”現場での教訓”

初めての建設現場で出会った、とても対照的な2人。

同じ土工事の会社に属していて、休憩時には自分も会話に加わることも多かったのですが、仲間の輪としては非常に居心地が良かったです。

これは、天使の佐藤さんの心がとても広かったからなのか、それとも悪魔の佐藤さんが天使の佐藤さんへ配慮していたからなのかは分かりませんが、両極端な佐藤さんが活躍する現場はとても楽しいものでした。

2人の佐藤さんから学んだ、現場における貴重な教訓は、お互いの長所と短所を合わせると非常に強力なチームが出来上がる!ということでした。

今でも、「佐藤さん!」と声を掛けた時に、2人の佐藤さんが同時にこちらを振り返る姿を想像して笑ってしまいそうです。

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イタリアの街並みが好きな現場監督です。
将来は、ローマの歴史的な建築物のような、立派な建物を手掛けてみたいと本気で考えています。
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