「阪神高速って、土木の職場として実際どうなの?」入社3年目の土木系社員の本音に迫ってみた

「阪神高速って、土木の職場として実際どうなの?」入社3年目の土木系社員の本音に迫ってみた

入社3年目、土木系若手社員の本音

阪神高速道路株式会社(本社:大阪市北区)の入社3年目の土木系社員に取材する機会を得た。入社3年目と言えば、一般的に、組織や仕事にある程度慣れるころだが、その一方、いろいろと察し始めるころでもあり、けっこうクリティカルな時期に当たる。

今年に限っては、例の疫病とともに、その社会人生活をスタートさせたちょっと特殊な世代だったりもする。「今、このタイミングでしか聞けない若手社員の本音というものがあるはずだ」ということで、例によって、ユルく取材してきた。

  • 鳥越 宇人(とりごえ そらと)さん
    阪神高速道路株式会社 技術部技術管理課
  • 西村 美紀(にしむら みき)さん
    阪神高速道路株式会社 技術部技術推進室
  • 佐川 弘(さがわ こう)さん
    阪神高速道路株式会社 神戸管理・保全部保全管理課

なくなったら、社会が困る学問はなんだろう

鳥越さん

――土木に興味を持ったきっかけを教えてください。

鳥越さん 大学に進学する際は、建築士の資格をとりたいと考えていました。それで、土木学科にもかかわらず、建築士の資格もとれるということで、大阪市立大学工学部都市学科に入学しました。

ところが、大学で勉強しているうちに、土木のほうがスケールが大きい点に魅力を感じ、徐々に土木に興味を持つようになりました。授業の一環で、当時建設中だった阪神高速の大和川線の現場を見たのが印象に残っています。研究室は地盤工学でした。

西村さん

西村さん 大学に進学する前は、環境問題に興味がありました。環境のことについて学べる学科ということで、岡山大学の環境理工学部環境デザイン工学科に入学しました。この学科は環境のことも学べるけど、メインは土木の学科なので大学では土木の勉強もしていました。

そんなあるとき、地盤沈下や液状化のメカニズムに関する土質系の実験の授業を受けた際に、「おもしろい」と感じました。それが土木に非常に興味を持ったきっかけでした。大学院は、大阪大学で土質の研究をしました。

佐川さん

佐川さん 広島大学に入学したときは、「これを勉強したい」というものはとくにありませんでした。2年生に上がるときに、自分の専攻を選べるのですが、ギリギリまで決められませんでした。そこで、自分なりに「なくなったら、社会が困る学問はなんだろう」ということで、ふるいにかけました。

その結果、最後に残ったのが土木でした。それでエイッという感じで、社会基盤環境工学プログラムへの配属を希望して土木を学ぶことにしました。

――ちなみに、「この学問はなくても社会は困らない」と考えた学問はあったのですか?

佐川さん そこはノーコメントで(笑)。ボクの知識が浅かっただけで、どの学問も社会の役に立っていると思います。ただ、そんなボクにも、目に見えて社会の役に立っているように見えたのが土木だったということです。

――土木の中でもこれに興味を持ったというのはあったのですか?

佐川さん ところが、土木を選んだものの、その後土木に対する興味は一旦失われてしまったんです。大学院では、土木とは全然別の国際系の学部に進学し、統計学の研究をしていました。周りの学生の8割ぐらいは留学生でした。ゆくゆくは国際的なコンサルで働くのもアリかなと考えていましたが、紆余曲折あって、最終的には、再び土木の世界に舞い戻ったという感じです。

――国際的なコンサルで働くのはあきらめた?

佐川さん 大学OBの方のお話を聞くと、治安の悪い国々をずっと飛び回るという仕事のスタイルということでした。すごく面白そうではあったんですけど、そういう働き方は自分の性に合っていないと考えるようになりました。

あと、多くの外国の方と交流していくうちに、自分の専門性を持つことが大事だと思うようになったのですが、「自分の専門性ってなんや」と考えたときに、土木に立ち戻ったという感じでした。

土木が一番生きる会社はどこだろう

――就活はどんな感じでしたか?

佐川さん 自分が学んだ土木関係の仕事で、地元で腰を据えて働けて、かつ海外での仕事もできるということで活動しました。

――ご出身は?

佐川さん 神戸市です。

――やっぱり地元で働きたい?

佐川さん 若いうちは全国転勤も大丈夫だろうけど、年をとって全国動き回るのはシンドいんじゃないかなという思いがありました。

――西村さん、就活はどんな感じでしたか?

西村さん 鉄道会社、エネルギー会社、高速道路会社など、インフラ系の会社に就職したいということで、活動していました。最初は鉄道会社で働きたいと思っていたのですが、業界や企業研究を深めていくうちに、「土木が一番生きる会社はどこだろう」ということが気になり始めました。それは道路会社だということで、最終的に阪神高速を選びました。

――大阪神戸で働きたいというのもあったわけですか?

西村さん そうですね。私も出身が兵庫県なので、馴染みのある関西で働きたいという思いはありました。関西で働ける道路会社となると、ほぼ阪神高速一択でしたね。

――鳥越さん、就活は?

鳥越さん ゼネコンやコンサルは専門性が強いイメージがありました。就活時点では、特定の分野に特化した仕事より、計画から維持管理までいろいろな仕事ができる発注者の仕事のほうが、自分には合っていると思ったので、インフラ系の発注者というところで就活しました。

私も兵庫県出身なのですが、地域に根づいて働くなら、生まれ育った関西でという思いがありました。ということで、インターンでもお世話になったこともあり、阪神高速を選びました。

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なんじゃこりゃ、土木じゃないやん

なにやら仕事中の鳥越さん

――最初の仕事はどうでしたか?

鳥越さん 最初の配属先は、管理本部の管理企画部保全事業統括課というところでした。職場は朝潮橋で、保全事業のとりまとめをする部署で、ボクは予算・固定資産管理や工事発注、広報など企画系と言われる仕事を担当しました。

入社当初にやった仕事は、固定資産管理関係の業務だったのですが、言葉もわからない中、「なんじゃこりゃ、土木じゃないやん」という第一印象でスタートしました。結果的には、土木知識が固定資産管理において重要ということもわかり、非常に勉強になりましたが、最初はビックリしました。

――こういう仕事をしたいと希望は出したのですか?

鳥越さん とくに希望は出さなかったです。「なんでもやります」みたいなことを言いました。

――なにが良かったですか?

鳥越さん 保全の仕事について幅広く知ることができたことです。何度か課の中でも担当替えがあったので、課内の業務を一通り経験することができました。

――土木のポストなんですよね?

鳥越さん そうです。例えば、固定資産関係の業務でいえば、工事が終わった後に、資産として計上する妥当性を工事の内容を踏まえて確認するといったことをしていました。

――建設ではなく、保全だったことはどうでしたか?

鳥越さん 全然問題なかったです。今は保全でも大規模更新・修繕などの事業もあるので断然アリだと思いました。

世界的ビッグプロジェクトというアツい世界を経験

なにやら仕事中の西村さん

――西村さん、最初の仕事はどうでした?

西村さん 最初の配属先は、神戸建設部の湾岸西伸第二建設事業所でした。湾岸線の建設を担当する部署で、ポートアイランドから西区間の斜張橋や高架橋などの建設を受け持っています。私が担当したのは、斜張橋の設計や景観検討、高架橋とトンネルの間の土工部の設計などの業務でした。基本的に2年間同じ業務を担当しました。

――これをやりたいという希望はあったのですか?

西村さん 面接のときに「建設設計がしたい」と言った記憶があります。それが反映された配属先だったと思っています。

――「アタリ」の職場だったということで良いですか?

西村さん 他の職場がハズレだと思っていないので何とも言えません(笑)。ただ、今しかできない世界的なビッグプロジェクトの最前線の仕事に携われたのは、スゴく良かったと思っています。

一方で、実際に携わってみると、業務内容が非常に高度で、なにもかもが難しかったので大変でした。そんな中でも、職場の皆さんが熱意を持ってまだ見ぬ新しいものをつくり上げようとしている姿は、スゴくカッコ良いなと思って見ていました。入社早々、世界的ビッグプロジェクトというアツい世界を経験できたのは、良かったと思っています。

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それなりに楽しめたということにしておきたい

なにやら説明中の佐川さん

――佐川さん、最初の仕事はどうでしたか?

佐川さん 最初の配属先は、本社の計画部調査課でした。調査課では主に交通工学の分野を扱っていて、主に将来の交通需要予測、現況の交通分析の2つを所管しています。ボクがまず担当したのは、現況の交通分析と全線の渋滞対策検討でした。具体的には、新規路線の開通効果の把握などに携わりました。

――希望はあったのですか?

佐川さん とくにありませんでした。

――仕事に対する戸惑いなどはありましたか?

佐川さん 全然知らないアカデミックな世界だったので、先輩方が話している言葉も意味がわからなかったですし、コンサルさんとの打ち合わせの内容もわからなかったです。シミュレーション開発なんかもやっていたので、最初の一年は、毎日がはてなマーク状態でした。

――仕事は楽しめましたか?

佐川さん そこは、それなりに楽しめたということにしておきたいと思います(笑)。2年目以降は、自分である程度仕事を回せるようになったので、仕事が楽しくなりました。自分がつくった資料が社長記者会見で使われたほか、外に出る機会もあったので、やりがいを感じました。

――仕事を楽しめるまで、助走期間が長かった感じですか?

佐川さん 長かったですね。1年ぐらい助走していました。

本当に実在する人なんだろうか

――入社直後はテレワークばっかりでしたか?

佐川さん そうです。入社1週間後からの3ヶ月間は、週一出社で、それ以外は在宅勤務でした。メチャクチャ仕事しづらかったですが、先輩と電話でやりとりしながら、なんとか仕事を覚えていった感じです。

――西村さんはテレワークは大丈夫でしたか?

西村さん 在宅勤務だと、もちろん同じ職場の方々に会いませんし、出社しても一部の人としか会いません。なので、ずっと会っていない人がいました。Web会議の画面越しでお会いしても、「本当に実在する人なんだろうか」という違和感がありました(笑)。

そういう感覚はありつつも、上司や先輩などと電話やメールなどでやりとりしながら、なんとか仕事に取り組むことができました。先輩方と比べると、リアルな職場を知らなかった分、テレワークを受け入れやすかったのではないかなと思っています。

――鳥越さんはどうでしたか?

鳥越さん 通常は新入社員研修が2週間ほどあるのですが、ボクらのときはそれが1日半しかありませんでした。名刺の渡し方や電話の受け方といった、社会人としての基本をあまり知らないまま、配属先に解き放たれたことへの心配、不安みたいなものはありました。肝心の仕事については、オンラインで先輩に教えていただきながら、なんとか習得していきました。

ただ、例年と比べて他の部署社員との交流が少ないまま、今に至っているので、他の部署でどのような仕事をしているのか、あまりわかっていないのではないかという不安はあります。

――テレワークは今でもやっているのですか?

鳥越さん やっています。週2日のテレワークが推奨されています。

――在宅勤務、テレワークはアリだと感じますか?

鳥越さん 会社にとっては、在宅勤務を導入する良いきっかけになったのかなと思っています。必ずしも良いことばかりではありませんが、今後は、多様な働き方が進んでいくと予想しています。ボク自身にとっても、通勤時間を省略できたりプラスの面もあると感じています。

西村さん 今後、どういうときに在宅勤務をするかなどの考え方がもっと整理されるとよりよくなるのかなと思います。在宅勤務やテレワークがアリかナシかどうかは、それによってどちらにも振れるところがあると考えています。私自身としては、適度な頻度であれば、アリだと思っています。

佐川さん 単純に受け入れていたので、アリナシを考えたことはありません。

改善できれば楽しくなる

鳥越さん

――今担当しているお仕事はどんな感じですか?

鳥越さん 現在の職場は技術部技術管理課というところで、工事契約に係わることを担当しています。他の発注者の新しい入札制度などの動向をチェックしながら、良いものは阪神高速でも取り入れることや、国の動きをチェックしたり、業界団体などにヒアリングしながら、トレンドを取り入れ、共通仕様書を改訂するといったことを担当しています。

――楽しいですか?

鳥越さん 配属されてまだ1ヶ月足らずなので、まだ楽しさを見出すところに至っていません(笑)。前の職場では、契約まで至らない案件をいくつか見てきたので、そういう状況を改善することができれば、「楽しくなるんじゃないかな」と期待しているところです。

仕事の中身がわかれば絶対に楽しい

西村さん

――西村さん、今のお仕事は?

西村さん 私は技術部技術推進室にいます。設計基準の更新などを所管する部署で、私は鋼構造分野を担当しています。配属になってまだ日が浅いので、入社直後と同様、何をするにしても「はじめまして」状態ではありますが、「この仕事は中身が分かれば絶対楽しい」という感触は得ています。

ただ、まだ内容が全然わかっていないので、そこに辿り着けていないだけだ、と考えているところです。今は、早く楽しい領域にいきたいともがいている状態です(笑)。

思いついたことはドンドンやっていい

佐川さん

――佐川さん、今のお仕事は?

佐川さん 今の職場は神戸管理・保全部保全管理課というところで、「よろずライン」を担当しています。予算管理とリニューアル工事調整以外のたくさんの仕事を引き受けています。主なものは、兵庫地区の交通対策です。安全対策、渋滞対策、誤進入対策といったことです。あとは、さまざまな協議関係です。工事の協議や他の高速道路会社さんとの協議などを担当しています。

――楽しいですか?

佐川さん メチャクチャ楽しいです。前の職場で長い助走期間があったおかげで、交通のことが比較的わかるようになったので、「ここはこうしたほうがいいのかな」とか、仕事について毎日あれこれ考えるのが、とにかく楽しいです。上司からも「思いついたことはドンドンやっていい」と言っていただいているので、次のリニューアル工事に反映させたいと思っているところです。

――良かったですね(笑)。

佐川さん 1年間も助走したおかげです(笑)。

――神戸勤務はどうですか?

佐川さん 三宮駅から15分ぐらい歩くのですが、途中の街並みがスゴくおしゃれで、毎日観光気分で通勤できています。

あせらず、急がず、自分の強みを身に着けていきたい

――これからどういう仕事をしていきたいですか?

佐川さん 短期的には、今担当している交通対策などの仕事に打ち込んで、渋滞とか事故を少しでも減らしたいです。将来的には、さっきも言いましたが、海外の仕事に携わりたいです。アフリカには行ってみたいですね。そのためにも、施工管理の仕事などいろいろ経験してみたいと考えています。

――英語はベラベラですか?

佐川さん 大学時代は一応通じてはいました。ただ、今はだいぶサビついています(笑)。日々の練習の大切さを痛感しているところです。

――西村さん、これからについてどうお考えですか?

西村さん どの分野が良いかはまだ決めていませんが、あせらず、自分の強みを身につけていきたいと思っています。ある分野に特化した強みを持つことは、個人的にスゴくカッコ良いことだと思っていますし、キャリアアップにもつながると考えているからです。

今は、技術推進室にいるので、自分が担当した仕事をしっかり身につけたいと思っているところです。自分の強みにしたいと思うおもしろいものに出会えることを期待しています。

――鳥越さん、いかがですか?

鳥越さん これからの仕事について、今のところとくに明確なビジョンがあるわけではありません。西村さんがおっしゃったように、専門性を持てたら良いとも思いますし、いろいろな仕事を転々としながら、キャリアアップするのもアリだと思います。

前の職場で学んだことを次の職場でも活かす、それを繰り返していくことによって、自分なりのキャリアが積み上がっていくのではないか、そんな風に思っているところです。ただ、まだまだ先は長いので、あせらず急がず、一歩ずつステップアップし続けて、自分の目指す社員像を見つけていこうという思いでいます。

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