「場内小運搬」の直接工事費だけで数億円!?概算工事費算出の悩みの種

「場内小運搬」の直接工事費だけで数億円!?概算工事費算出の悩みの種

大規模土工事の概算工事費算出で悩まされたこと

以前、某建設コンサルタント勤務時に、大規模土工事の概算工事費算出の仕事をしたことがあった。

土量がとても多いこと、施工箇所が山間の狭隘な個所であったことから、施工手順や機械編成等を考慮した上での施工計画の検討業務だった。その中の1つとして概算工事費の算出を行っていた。

運搬費等は率計算するのが一般的で、施工計画によって運搬手順や運搬方法が異なる。運搬距離も、現場状況や今後の工程に左右される。現場はすでに準備工事が始まっており、役所では先行する工事の発注準備に取り掛かっていた。

後工程の手順がハッキリと決まっていない中で、施工計画・施工手順を検討する必要があった。この土工事は、盛土量が数十万m3と大規模盛土が行われる計画であり、さらに付随する構造物も施工予定となっていた。

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場内小運搬の直接工事費だけで数億円

想定される施工計画を検討し、改めて金額を算出した結果、なんと…場内小運搬の直接工事費だけで数億円になってしまった。たかが小運搬、されど小運搬。決して軽視できない工種なのだ。

通常、建設コンサルタントでは場内小運搬の金額まで算出することはない。主要な工種の金額を算出することに重きを置くからだ。土量がそれほど多くないのであれば、それでもいいかもしれない。または、施工条件がそれほど煩雑でなければ、場内小運搬の金額はさほど高くならないかもしれない。

しかし、土量が膨大で、かつ難しい施工条件であれば、施工計画に応じて場内小運搬の計画も考える必要がある。場内小運搬の距離が長ければ、その分の金額も大きくなることが予想される。

仮に盛土をするとして、場外から搬入する場合は、場内のどこに仮置き場を設定するか、工事用道路はどうするか等によって、場内小運搬の距離や回数は大きく異なることが考えられる。

建設コンサルタントが概算工事費を算出する場合、よりどころになるのは「国土交通省土木工事標準積算基準書」だ。これによると、場内小運搬は不整地運搬車による運搬が示されている。当時は、この積算基準書の内容をもとに場内小運搬を検討していた。また、考えられる機械編成で施工計画を検討した。

その結果、場内小運搬の金額が数億円になってしまったのだった。

設計時に場内小運搬まで見込んでおくべきか

正直、これまで場内小運搬については深く考えたことはなかった。むしろ、「それは発注者側で考えること」くらいにしか思っていなかった。

なので、全体の工事金額に占める割合は大きくないという認識だった。しかし、この業務を通して、場内小運搬は決して無視できるものではないと意識するようになった。

もちろんだが、工事費に与える影響がある項目は場内小運搬だけではない。警備員だって、場合によってはとんでもない金額になることがある。仮設費にしてもそうだ。無視できない金額になることはよくある。

一方で、設計時にそこまで見込んでおくほうがいいのか?という見方もあるだろう。場内小運搬をきちんと考慮するには、詳細な施工計画が必要となる。工事受注後に、受注者が作成する施工計画書レベルのものが求められる。

設計段階でそこまで考えられる設計者は、そうはいないだろう。工事受注者にとっては「余計なことするな」となるのかもしれない。なんとも難しいところである。

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建設コンサルタントに勤務する技術者。一時期、派遣社員としてゼネコンの現場事務所にCADオペや施工管理、工務係として勤務したことあり。積算はもちろん施工計画などいろんなことでわからないことだらけで日々勉強中。
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