内山建設での建築の仕事のやりがい、魅力とは
先日、日向市にある株式会社内山建設の土木部のお二人の記事を出したところだが、内山建設には建築部もある。
ということで、内山建設での建築の仕事のやりがいなどを巡って、ベテラン、若手のお二人にお話を伺ってきた。
父親が経営する建築会社で役員をしていたが、休めないので転職した
吉本 秀太郎さん(株式会社内山建設 建築部 次長)
――入社何年目ですか?
吉本さん 4年目です。
松葉さん 2年目です。
――吉本さんは中途入社ですか?
吉本さん そうです。前職は延岡市内の建築会社で役員兼現場の技術者をしていました。父親が経営している会社です。15年ほど勤めたのですが、年間30日程度と非常に休みが少なかったんです。まだ小さい子どもがいるので、子育ての時間もほしいということで、退職することにしました。それからいろいろ求人を見て、ここなら子育ての時間がとれそうだということで、内山建設に就職しました。
――建築の仕事ができて、子育てしやすそうな会社ということで転職されたと?
吉本さん そういうことです。建築に関しては、設計から施工管理まで、木造から鉄骨、SRCまでオールラウンドにやっていたので、建築の仕事ならなんでもやるという感じで探していました。自分自身が実質的に母子家庭のような環境で育ったこともあって、父親として子育てだけはしっかりやりたいという思いがありました。
わからないことがわかるようになるのが楽しい
松葉 琉起さん(株式会社内山建設 建築部)
――松葉さん、入社理由はなんですか?
松葉さん 高校で建築を学んでいて、最初は建設業ならどこでも良いと考えていました。内山建設のパンフレットを見て、地元の会社ということで興味を持ちました。実際に会社見学をすると、社員の方々が笑顔で挨拶してくれたり、会社の雰囲気が良かったんです。それで内山建設への入社を決めました。
――松葉さん、これまでどのような仕事をしてきましたか?
松葉さん 最初は倉庫の改修工事に入って、先輩の墨出しや職人さんのお手伝いをしたり、写真管理をしていました。その次は新築工事でやはりお手伝いをしていました。その後は、比較的短期間にいろいろな現場を経験させてもらいました。
――仕事には慣れましたか?
松葉さん まだ慣れない部分もありますが、最初のころに比べれば、だいぶ慣れました。今は、バイオマス発電施設の新設工事で、基礎の型枠の監視をしています。
――今の仕事は楽しいですか?
松葉さん 楽しいです。仕事を通じて、わからなかったことがわかるようになるのが、楽しいです。
――逆に、ツラかったことはなんでしたか?
松葉さん 自分がわからないことが多いために、的確な指示が出せず、作業員さんを待たしてしまったことです。
しっかり休みを取れるのがありがたい
――吉本さん、内山建設でのお仕事はどうですか?
吉本さん 社内のルーティンワークに慣れるのに1週間ぐらいかかりましたが、あとはすぐに慣れました。
――役員から転職して従業員になるということで、戸惑いとかはなかったですか?
吉本さん そういうのはありませんね。前職では、一応肩書きは役員でしたが、実質的にはなんでも屋だったので、むしろ今のほうが、役職通りの仕事を与えてもらっていると感じています。
――内山建設ではこのようなお仕事をしてきましたか?
吉本さん 私が設計施工を担当した仕事としては、とある会社さんの社屋新築工事、バイオマス発電用チップ工場の新築工事、木造住宅の新築工事があります。あとは、他の担当者が受け持っている工事の予算チェックとか、作業工程の検討とか、技術的なことも含めもろもろのアドバイスといった、全体を把握する仕事をしています。
――自分の現場も持ちつつ、部門のマネジメントの仕事もやるという感じですか?
吉本さん そうですね。私としては、自分で設計施工して、現場を見るのが好きなんですけどね。マネジメントの仕事は、現場と違って息抜きができないので大変です。でも、休みをしっかりとれる会社ですので、ちゃんとリフレッシュできるのはありがたいです。
型枠大工のころから「俺は一級建築士を取る」と言っていた
――そもそも建築の仕事を志したのは、家業の影響があったわけですか?
吉本さん あまり関係ありません。仕事の選択肢がなかったからです。私は高校を半年でクビになっているんです。就職することにしたのですが、飲食店か建設業ぐらいしかありませんでした。それで、東京に出て、とりあえず型枠大工になったんです。その後は解体屋や鉄筋屋をやりましたし、居酒屋でも働きました。10歳代のころは仕事を転々としました。
そういう生活が何年か続いたあるとき、「やっぱり建築をやりたいな」とふと思って、東京のとある建築会社を受けました。求人条件は高卒だったのですが、そこの社長に「中卒なんですけど、面接してもらえませんか」とお願いしたら、気に入ってもらえたらしくて、採用してもらいました。このとき拾ってもらったから、今の自分があると思っています。
その建築会社で働いているときに、二級建築士を取りました。その5年後、30歳のときに一級建築士も取りました。長年の夢が叶った瞬間でしたね。型枠大工だった16歳のころから「俺は一級建築士を取る」と言っていましたから。周りは「こいつバカだ」と思っていたでしょうね(笑)。
親父に「一級取ったよ」と連絡したら、「俺ももう歳で疲れたから、宮崎に帰ってきてくれ」と言われました。それで父親の会社で働くようになったんです。宮崎に帰るつもりはさらさらなかったんですけど、なんとなく帰っちゃいましたね(笑)。
―― 一級建築士を取って、なにをしたいというのはあったのですか?
吉本さん 大きな建築工事の現場管理をしたいと思っていたんです。今思えば、ボクの知識がなかったということになりますが、一級建築士じゃなくても、一級建築施工管理技士があればできる仕事だったんです(笑)。ただ、施工管理だけじゃなく、設計もしたかったので、結果的には一級建築士を取って良かったという思いに変わりはありません。
――設計も施工も全部やりたいと?
吉本さん そうです。設計も施工も全部自分が主導権を持って仕事をしたいと強く思っていました。
――お父さんの会社で働きながら、その夢が叶ったということですね。
吉本さん そうですね。今もそういうカタチで仕事ができています。自分がこれまでに設計施工を手がけた仕事の中で、一番大きい仕事は3.6億円程度です。もっと金額の大きな仕事をしたいというのが、今の夢です。それを実現するためには、技術もさることながら、センスも磨いていかなければいけないと思っているところです。
仕事量が減っている以上に人手が減っている
―― 一般論として、施主や下請けなどとの調整ごとが大変という話を聞きますが、その辺はどうですか?
吉本さん 自分で設計施工している場合は、非常にシンプルです。ただ、別の設計事務所が発注者との間に入っているケースが多いのですが、逐一、設計事務所にお伺いを立てて確認をしてもらいながら工事を進めるので、なにをするにも時間がかかります。時間がかかるだけでなく、発注者の意向を人伝に情報を得ることで施工のやり直しが発生したケースもありました。このあたりは、施工業者側でコミュニケーションの方法を工夫する必要がありますね。
――工種が多いことについてはどうですか?
吉本さん ボクの場合はもう慣れてしまっているので、どうということはありません。ただ、松葉くんからすれば、覚えることが多いので大変だろうなとは思います。私自身も新しい工法など常に勉強していかなければなりませんから。建築の勉強で「もうこれで良い」ということはないんです。知識を常にアップデートしていく必要があります。
――最近の建築業界の動きについて、どう見ていますか?
吉本さん 仕事量が減っている以上に人手が減っていると見ています。ボクの周りでも、仕事はあるんだけども、人手が足りなくてお断りをするケースが多いです。
――「建築は食えない」という話を聞きますが。
吉本さん そういう人は、技術が足りないとか、なにか足りないからじゃないですかね。
――そうなんですね。
吉本さん とくに内山建設の場合は、社長の営業力がスゴいので、仕事が途切れることはまずないです。人手さえいれば、どんどん仕事をとっていけます。
――建築部には何名いるのですか?
吉本さん 10名です。
――人手は足りていないわけですね。
吉本さん 足りてない部分はあります。今はなんとかやりくりしている感じです。この記事を見た建築技術者の中から、私達の仲間に加わってくれる人が増えることを期待しています(笑)。
今の時代は「させてみる(失敗させる)」ができない
パソコン作業中の吉本さん(本人提供)
――建築部を今後どうしていきたいというのはありますか?
吉本さん 若い技術者をどんどん育てていきたいとは思っています。ただ、建築は仕事を覚えるのにスゴく時間がかかるんです。そのための時間を短縮する方法をなんとか考えないといけないと思っているところです。
昔ながらの「やってみせ、言って聞かせ、させてみる」という教え方があります。個人的には良い方法だと思っていますが、もうそういう時代ではないのかなと思っています。今の時代は「させてみる(失敗させる)」がなかなかできないからです。ただ、ボクがカバーできる範囲であれば、若い子にはどんどんさせてみたいとは思っています。
自分で設計施工できるようになりたい
クレーン作業で吊り荷の安全監視をする松葉さん(本人提供)
――松葉さん、今後やりたいことはありますか?
松葉さん 将来的には、吉本さんのように自分で設計施工できるようになりたいです。そのためには、まず二級建築士を取ろうと思っています。
――愛弟子になりそうですね(笑)。
吉本さん 実は私、資格学校で二級建築士設計製図の講師をやっているんです。会社公認でアルバイトをやっているんです(笑)。ウチの社長も生徒さんとして出席しています。私としては正直やりづらいですが(笑)。
――吉本さん、松葉さんになにを期待していますか?
吉本さん 真面目な子なので、良い技術者になることを期待しています。資格を取って設計施工をやりたいという明確な目標があるのは、非常に頼もしいことだと感じています。「絶対にやるんだ」という強い信念を持って、日々の積み重ねを大事にしながら、目標に向かって取り組んでほしいと思っています。
――吉本さんにとって、建築の魅力はなんですか?
吉本さん カタチに残ることですね。そして、それを子どもに誇れることです。ボク自身、小さいころに父親に建築物を見せてもらった記憶がありますが、その建築物は今でも残っています。