目先の目標に意味はあるのか
ゼネコンでも建設コンサルタントでも、大手であろうと中小であろうと、中途採用に力を入れている会社は多い。
一方で、退職者の数を減らしたい、もしくはゼロにしたい、と考えている会社も少なくない。少子高齢化に伴って人手が不足している状況なわけだから、そうなるのは自然な流れともいえる。
会社や部・課単位では、「今年は中途採用を○人以上確保する」とか、「昨年は退職者が出たから今年はゼロにする」という目標を掲げているところもある。私が今いる会社も、かつて勤務した会社でも、似た目標を年度始めに掲げていた。
とはいえ、必ずしも目標が達成できるともいえないし、目標達成自体が難しい状況のように思える。優秀な人材は引く手あまただし、そんな人がいる組織は決してその人を手放そうとはしない。
退職の意思表示があろうものなら、あの手この手で引き止めにかかるだろう。時に脅迫したり、泣き落としにかかったり・・・をやるところもあると聞く。
そんなことをやっていては、知らず知らずのうちにブラック企業の烙印を押されかねない。そんな目標に意味はあるのだろうか?硬直化していかないだろうか?と、日々疑問に思っている。
退職を引き止める無意味さ
これは、知り合いのAさんから聞いた話だ。Aさんがかつて建設系の会社で勤務していた頃、Aさんが上司に退職の意思表示をしたそうだ。
Aさん自身は「自分は全然仕事ができない」と実感していたようで、同じチームの人からもそう思われており、おそらく上司もそう考えていたと思うとのことだった。
こういう状況なら、別の会社で自分に向いていることができそうな場所で仕事をするほうが良いのではと考え、Aさんは上司に退職の意思を伝えた。
ところが、その上司は全力で引き止めにかかったそうだ。何度も何度も面談が設定され、いろんな角度から引き止めようとされたらしい。
Aさんは「自分は仕事ができないことがわかっているし、周りもおそらくそう捉えている。なぜそんな人を引き止めようとするのか?この仕事に向いていないことが明らかなのに、なぜか?」と上司に聞いたそうだ。
「仕事ができないとかそんなことはない。大いに役に立っているし助かっている。だから辞めるとか言わないで欲しい」と上司が答えたそうだが、Aさんは引き止めてもらえたという嬉しさよりも「?」の文字が脳内を駆け巡ったそうだ。
「いやいや、アンタだってオレのことを『できねーやつだな』って何度も言ってたじゃねーか。今さら何を言ってんだ?」と思わず口に出しそうになったが、そこはグッと堪えたらしい。
結局、Aさんは力ずく?で会社を辞め、別の会社に移った。転職先の会社でAさんは大活躍しているようだ。
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一度退職した人を見る目はかなり冷たい
建設業界では慢性的な人手不足が続いている。それが影響してか、いろいろな会社で技術者や作業員の囲い込みが強化されているように感じる。新卒採用はもちろん、中途採用活動も活発化し、人の奪い合いが激化している。
一方で、一度退職した人を見る目はかなり冷たく感じる。村社会のように、一度外へ出た人を見る目はとても厳しいものがある。ましてや、一度退職した人を再度雇おうとする企業は圧倒的に少数派だ。
だが、出戻りだっていいじゃないか!と言いたい。
外の世界に出て、違う会社で働いた経験というのは貴重だ。それがわかっている会社は、出戻りOKの看板を堂々と掲げて、戻ってきてくれることを歓迎している。
建設業界ではまだまだ少数派だが、別の業界・業種を見ると、出戻り大歓迎の会社はたくさんある。これは、人材の流動が活発になっているということでもあると思う。
建設業界は以前に比べ、人材の流動が活発になりつつあるとは思うが、まだまだ閉鎖的な業界だと思う。それこそ、業界未経験の人を歓迎する空気が当たり前にならないと、人手不足解消の一手にはならないのではないだろうか。
目先の数字だけを見るのではなく、いかにして「働きたい」という人を集め、活躍してもらえる場を作れるかどうかが大事になってくるだろう。