土木建築のイベント式典を手がけて25年
ひょんなことから、株式会社福岡パーティ企画(本社:福岡市)という会社の存在を知った。土木建築の工事現場ではお馴染みの、地鎮祭や起工式といった神事、テープカットや開通式などのセレモニーの会場設営、運営などを手がけるイベント会社だ。
いわゆる裏方の仕事だが、とあるゼネコンの現場所長さんに言わせると、「ノウハウを持ったイベント会社は意外と少ない」らしく、現場の場所によっては、探すのにけっこう苦労するそうだ。そういう意味では、良いイベント会社をキープしておくことは、良い現場所長の条件の一つと言えるのかもしれない。
それはともかく、この福岡パーティ企画の合田慎一郎さんにお話を伺う機会を得た。合田さんは、土木建築のイベント式典を手がけて25年というその道のプロ。そんなプロの目に裏方仕事はどう映っているのか。
福岡を拠点にパーティやイベント会場の設営などを手がける
合田 慎一郎さん 株式会社福岡パーティ企画 取締役常務(福岡パーティ企画提供)
――福岡パーティ企画とはどういう会社ですか?
合田さん 弊社は1985年に福岡で創業した会社で、主に建物などの落成パーティの会場設営、運営を手がけてきた会社です。30名を超えるスタッフがおり、福岡・九州をはじめ、中国四国、関西で仕事をさせていただいています。主なお客様は、建設会社様となっており、安全祈願祭や起工式、開通式や定礎式など幅広く手がけています。3年ほど前にイベント事業部を立ち上げ、国体やインターハイのほか、成人式といったイベント会場の設営運営も行なっています。
――土木建築関係のイベントを手がけるようになったのはいつごろからですか?
合田さん 25年ほど前からです。落成パーティが少なくなってきたことから落成パーティだけでなく、安全祈願祭や起工式なども一緒にやろうということで、徐々に式典のほうにシフトしてきたカタチです。
――基本的には福岡、九州でのお仕事がメインということでしょうか?
合田さん そうですね。最近でいえば、福岡天神ではここ数年来、天神ビッグバンということで、大規模な再開発が行われていますが、この関連のいくつかの案件のほか、熊本地震の復興事業関係のいくつかの式典が、弊社のメインの仕事になっています。建設会社様のほか、発注者やお施主様から直接依頼を受けて仕事をすることもあります。
服装・身だしなみ、大きな声が強み
設営状態をチェックする合田さん(福岡パーティ企画提供)
――福岡パーティ企画ならではの強みはなんでしょうか?
合田さん 弊社では、経営理念に「創造 拘り 真心 そしてよろこび」を掲げています。この中でも「拘り」という言葉をとくに大切にしてきており、これが強みだと考えています。たとえば、弊社独自のアイテムをつくることで、お客様に満足していただくということです。
式典などのイベントで仕事をする際に一番気をつけていることは、われわれの服装、身だしなみです。あとは、弊社の社長がいつも言っていることですが、大きな声で受け答えするということです。これによって、お客様の第一印象が変わってくるからです。
もう一つは、設営だけを請け負うイベント会社はありますが、スーツを着て本番当日の対応をする業者は少ないのではないでしょうか。他社との差別化という部分では、本番の対応、司会やアテンドなど、スムーズに滞りなく本番が終わるように「サービス」の部分にも重きをおいています。
この辺が、他社にはない弊社の強みだと思っています。
――独自のアイテムとしては、たとえばどのようなものがありますか?
合田さん たとえば、先日、とあるトンネルの貫通式典の仕事をしたのですが、大きなウチワをつくりました。樽神輿を威勢良く運ぶための道具として、演出の一環として、われわれが提案してつくりました。
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お客様からノウハウを学ぶことも
とあるトンネル貫通式に展示された貫通石
――アイテムなどのアイデア出しは、お客さんと相談しながらやっていくわけですか?
合田さん そうですね。お客さんの中には、非常にアイデア豊富な方、こだわりを持った方がいらっしゃいます。そういう方の式典は、他の式典とは全然違ったものになります。
――たとえばどういうことですか?
合田さん たとえば、先日関わったトンネル貫通式で言えば、会場の入り口に大きな貫通石がライトアップ展示してある、たくさんの花が飾ってある、プロジェクターで映像が流れている、といったことです。私は過去にいろいろなトンネル貫通式に関わってきましたが、こういう演出をしている貫通式は初めてでした。
――トンネル貫通式で花を飾るという演出は一般的ではない、ということですか?
合田さん そうですね。私は経験がないです。あと、その貫通式では、式典中に実際に発破作業を行なって、穴をあける、貫通させるということをしたのですが、普通の建設会社様は、安全上、こういう演出をやりたがりません。
――式典の演出について、お客さんから学ぶということもあるのではないですか?
合田さん ええ、実際にいくつかのノウハウを教えていただきました。アイデア豊富なお客様が相手だと、大変なこともありますが(笑)、仕事としては非常に楽しいです。
お金は後からついてくるので、できる限りの提案をする
合田さん(福岡パーティ企画提供)
――福岡パーティ企画として、積極的にアイデアを提案することもあるのですか?
合田さん あります。お客様に合わせて、いろいろご提案させていただいています。もちろん、お金のかかることなので、そこを調整しながらということですが。
―― 一般論としては、やはり「お金」が最大のネックになると思われますが。
合田さん 現場事務所に行ったら、その現場がどういう現場なのか、だいたいわかるんです。事務所がキレイでちゃんとしていたら、現場もキレイで、事故も起きません。一方、事務所が汚いと、現場も汚いですし、事故が起きています。これは、良い式典ができるかどうかにも大きく関わってくる重要なポイントなんです。
お金がかかるかからないかは大事な問題かもしれませんが、私自身は「お金は後からついてくる」と思っています。なので、お客様にはできる限りの提案をし「お金よりもつながりを大切に」するよう常に心がけています。
また、実際には式典経験の少ない担当者もいます。その時は、費用がかかることであったとしても経験上、式典成功のために必要と判断した際は的確なアドバイスをすることが私の役割だと思っています。
――小規模な現場、低予算な現場でも式典をやりたいという需要はありそうですが、その辺はどう対応していますか?
合田さん 弊社のお客様の中には、地場の建設会社様もおられます。「予算がないから、どうにかしてくれ」というご相談もしばしばいただきます。そういう場合は、われわれとしても、できる限りお手伝いするようにしています。
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くす玉を割ったら、会社名が間違っていた(笑)
――ところで、過去に手がけたイベントなどで、「失敗したな」と思うことはありましたか?
合田さん たくさんあります。一番強烈に覚えているのが、20年前にある商業施設の開店式典で、くす玉を割ったら、垂れ幕の会社名が違っていました(笑)。あと、とあるトンネルの貫通式で、貫通の瞬間を祝うための暗幕が引っ掛かってしまったことや式典でよくあることとしては席札の文字が間違っていたということもありました。
――そういう失敗の経験が次の仕事で役立つ、ということはありますか?
合田さん あります。たとえば、リハーサルをやって、何度も確認するということです。それでも、本番は何が起こるかわからず式典が終わる最後まで気を抜くことはできません。本番の始まるギリギリで参列者が変わるということも多々あります。たとえ問題が起きたとしても、そこで試されることは、現場での対応力です。
また、ここで言っておきたいのは、くす玉の垂れ幕で失敗したお客様とは、今でもお付き合いさせていただいているということです。式典を無事終わらせることは大事なことですが、あとのフォローも大事です。仕事というものは、人と人とのつながりがあってこそ成り立つ、というのが私のモットーです。
創業40年を機に、関西に支店進出
――福岡パーティ企画は将来的に全国展開を目指しているのですか?
合田さん そうです。弊社は来年創業40周年を迎えますが、このタイミングをとらえて関西に支店を出す予定です。関西の支店を足がかりにして、創業50周年をメドに、関東にも進出したいと考えているところです。式典とイベントの両輪でやっていき、目標を達成したいと考えています。
――読者に向けてメッセージなどがあれば、お願いします。
合田さん お客様にとって式典やイベントは1回きりの記念すべき催しです。その記念すべき催しを無事終わらせるため、われわれが持っている技術力、企画力を最大限発揮して、きめ細やかなサービスを提供し、お客様に満足していただくことをお約束します。