国土交通省と建設関係7団体は、「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画~トップの意識を変えて、現場が変わる。担い手確保につなぐ、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業の実現へ~」を共同で策定した。女性活躍・定着促進を切り口に、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業を実現し、建設産業の担い手確保につなげることを目指す。
実行計画書については、国土交通省の「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画検討会」の須田久美子座長・建設産業女性定着支援ネットワーク幹事長が3月14日に、中野洋昌国交相に手交した。中野国交相は「トップが意識を持つことで、実際に現場が変わっていくことが重要。国土交通省としても計画に基づく取組みをしっかり行っていく」と述べ、今後、国土交通省では女性活躍や定着促進の施策をさらに推進する方針だ。
一方、須田座長は「トップである経営者の意識を変え、全国で奮闘する女性の力になり、すべての人が働きやすく、また働きがいのある魅力ある建設産業となるよう官民一体となり、取り組みたい」と意欲的に語った。
同実行計画の策定主体は、国交省と、(一社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)全国中小建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国建設産業団体連合会、(一社)住宅生産団体連合会、建設産業女性定着支援ネットワークの7団体。建設産業の女性に関する計画は、官民共同で5年ごとに策定し、計画期間は2025年度から2029年度までの5年間。今後は、国土交通省と7団体が連携し、それぞれ取組みを進めるとともに、2025年には会議体を設置し、取組み状況をフォローアップする予定だ。
行動計画の成果を全国津々浦々に
建設業の持続的発展のためには、女性の入職・定着が不可欠と語った平田研国交省不動産・建設経済局長
同検討会は、2024年8月に第1回目の会合を開催。会議の冒頭、平田研国交省不動産・建設経済局長は「建設業に限らず、女性がさまざまな産業で活躍するのは重要な視点であり、実際多くの産業では、女性活躍が展開されている。建設産業でも多くの女性に担い手として入職・定着されることは、今後とも持続可能な産業として発展していく視点で重要だ。そのための施策は、2014年度(平成26年度)以来、順次取り組んできた。建設産業は現場で成り立つため、現場での技術者・技能者に女性にも入職・定着されていくには、広報活動や働きやすい環境づくりにしっかり取り組む必要がある。本日から検討を重ね、新たな実行計画を策定していく」とあいさつした。
次に座長に就任した、須田久美子建設産業女性定着支援ネットワーク幹事長は「2014年度以降の各行動計画の策定により、官民一体となった取組みが促進された。多くの現場ではハード面、ソフト面でも現場環境が改善された。一方、孤軍奮闘している女性もいることも事実。今後とも官民一体となった取組みをさらに促進し、その成果が全国に行き渡らせるように全力で進めていきたい」とあいさつした。検討会は第2回目が11月に、第3回目が2025年2月に開催し、正式な実行計画を策定したのち、中野国交相に手交した。
重点的に検討した内容は、①女性の入職促進に向けたきめ細かい広報戦略の展開、②新たな活動領域への着目、③トイレの環境整備・理解の促進などハード・ソフト両面からの現場における環境整備の3テーマ。これらのテーマに対して、①現場に関する女性の活躍の推進、②女性の定着の推進、③経営者層にも近く、企業内の意思決定プロセスに関与する立場への女性参画の推進の3点を目指す。
2029年度までの目標を具体化
中野国交相と実行計画書をもとに意見を交わす須田座長ら
具体的な目標では、①2029年までの間、「建設業における女性技術者・技能者の人数」を毎年増加させる、②同、「女性入職者に対する女性離職者の割合」を「建設業全体の入職者に対する離職者の割合」よりも、毎年上回らないようにする、③2029年度までの間、「建設業の管理職に占める女性の割合」を毎年度増加させる、④同、都道府県単位で活動している団体の「建設産業女性定着支援ネットワーク」への加入を全ての都道府県で目指す(2024年12月時点では、33都府県/47都道府県)を示した。
ちなみに、「建設産業女性定着支援ネットワーク」は、建設産業で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」を実感することを通じた「女性の定着」に取り組んでおり、その裾野は、2024年12 月時点で登録団体55団体(うち全国活動17 団体、都道府県活動38 団体)、構成人数約9,000人と着実に広がっている。引き続き、女性活躍・定着促進に取り組む各団体の活動を支援するとともに、業界団体や地方自治体、学協会との連携強化や、相談体制の強化など、さらなる取組みの質の向上に関係者が連携する。
官民を挙げて取り組む内容は、①建設産業の魅力向上・発信、②働きやすい現場の実現、③女性活躍・定着促進に向けた取組みの裾野拡大の3つの柱に沿い、取り組むべき内容、具体的な取組み例などを示した。
実行計画の目標
参考:『建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画 ~トップの意識を変えて、現場が変わる。担い手確保につなぐ、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業の実現へ~ 』(具体的な取組み例は同6ページ以降を参照)
今後、この計画の実効性を確保して、女性活躍・定着促進に向けた取組みを着実に進め、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業の実現に近づけていくことが重要になる。このため、計画策定主体による積極的な広報や、毎年度の取組み状況の確認を行い、着実な推進と深化を図っていく考えだ。