容積率を余らせて6,740万円の賠償命令。目いっぱい活用するのが社会のためかも?

容積率は快適性のために

容積率は、風通しや日当たりの確保、景観保護、防火対策、そして人口密度を適切に保つことで、都市全体の快適さを維持する役割を果たしています。人口集中はオーバーツーリズムと同じく電力や下水の供給を圧迫し、交通の混雑を引き起こすリスクがあります。

つまり容積率とは、都市の快適性を維持し、安全で住みやすい街づくりをするために欠かせない法的な規制なのです。

日本の主食が米になった理由

話は少し変わりますが、米が日本の主食となった三つの理由として、「稲が日本の気候に合っていた」「生産性が高い」「美味しい」がよくあげられます。しかし、「狭小な国土」も理由の一つです。

世界三大主食(米、小麦、トウモロコシ)の一つである小麦には連作障害がありました。同じ場所で繰り返し栽培すると土壌の養分が偏り、収穫量が落ちたのです。欧州では対策として作物を植えない「休閑地」を設けましたが、国土の7割が山で平地が少ない日本には、その余裕はなかったでしょう。一方で、水を溜めた水田では連作障害がなく、毎年一定の収穫が得られました。これが小麦ではなく米が選ばれた四番目の理由だと考えられます。

この「狭小な国土」という同じ理由で、日本の法律や制度は土地や建物をとても大切に考えていると思われます。たとえば、容積率に違反していても、よほど悪質でない限り取り壊し命令にはならないようです。駐車場を店舗に改築してうっかり容積率をオーバーしたような場合も、減築命令や再築時に是正するように求められるケースが多いのではないでしょうか?

2000年の法改正で容積率が売買可能に

定められた容積率のうち、利用されていない余剰の容積率である「未利用容積率」を他の土地へ移転するための制度が導入され、2000年の法改正により容積率の売買が可能となっています。開発事業的には「空中権売買」と呼ばれています。

容積率の移転は、原則として隣接する建築敷地間で行うことができますが、「特例容積率適用区域制度」を利用すれば、その区域内なら隣接していない建築敷地間でも実施できることが特徴です。

この制度の最初の適用例は、2002年に指定された東京都千代田区の「大手町・丸の内・有楽町地区(116.7ヘクタール)特例容積率適用区域」です。JR東日本は、東京駅丸の内側の赤レンガ駅舎を戦前の3階建てに復原しましたが、それでは上限床面積に及ばないので、残余容積率相当分の床面積を分割して他の敷地に移転することで、赤レンガ駅舎保全の資金調達を図りました。容積率の移転先ビルにJR東日本の床を所有して経営し、あるいはそのビル所有者等に床を売却しています。

容積率を余らせて6,740万円の賠償命令

一方で、容積率を余らせたためにビルの価値が下落したとする判例があります。

Xは店舗とマンションの複合ビルを建てるにあたり、可能な限り延床面積が大きい建物を要望していました。既存建物の敷地面積は約218平方メートル、許容容積率は400%でしたが、前面道路が建築基準法42条2項に基づく「2項道路」であったため、新築時はセットバックする必要がありました。

当初、施工側のY社が提案したのは「容積率398.38%」でした。道路後退後の計画敷地面積を約176.5平方メートルとし、容積率対象の延床面積を約703平方メートルとした鉄筋コンクリート造7階建てを建築する計画でした。

Xは2013年8月にY社と設計・監理業務委託契約、建築工事請負契約を締結しました。既存建物の解体、設計・監理、新築工事を合計した代金は約2億5,500万円でした。ところが契約後、Y社は道路後退距離の起点を見誤っていたことに気づきます。敷地面積は正確には200.8平方メートルでしたが、Y社はそのまま設計を進めて確認申請を行いました。その際の容積率は355.5%と記載されていたのです。

Xは是正を求めましたが、すでに基礎工事が終わっており増床には限界がありました。最終的に延床面積を740平方メートルに増やし、容積率は368.8%となりました。しかし、Xの不満は募り、このトラブルによって引き渡し予定も1年半遅れることとなりました。

Xは1億3,420万円の賠償を求めて提訴。東京地裁は2023年5月、4,030万円の賠償を命じる1審判決を下しました。延床面積についてY社に責任はないとしましたが、引き渡しが1年以上遅延したことが請負契約における債務不履行にあたるという判決でした。

その後、X・Y社の双方が控訴した2審では1審判決を変更し、賠償額は6,740万円となりました(2024年2月21日 東京高裁)。1審、2審ともに「容積率を使い切る」という合意はなかったとしています。合意違反があったわけではないのですが、「容積率の不足により建物としての下落額が1億2,200万円」というXの主張のうち2割の2,440万円について債務不履行との相当因果関係を認めたものでした。ただ、この2割の判断根拠は不明とされています。しかし、根拠不明とはいえ、容積率を目いっぱい使わなかったことによる価値の下落は認定されています。

容積率で限界が法定されている以上、逆に考えると、その範囲で目いっぱい使うのは土地の活用としてあるべき姿なのかもしれません。

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