建ぺい率とは何か
戸建てや土地のチラシ、広告などの物件情報で「建ぺい率」や「容積率」といった言葉を見かけることがあると思います。中でも、「建ぺい率」という言葉は日常生活では使わないので、どのようなものだろうと思っている方も多いかもしれません。
この記事では、「建ぺい率」とは何か、「容積率」との違いは何か、またどうすれば計算できるのかなどを詳しく解説します。「建ぺい率」が気になっている方やより理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ここでは、建ぺい率とはどのようなものか、何を定めているのかを説明します。建ぺい率の定義や建ぺい率の目的、容積率との違いなどについてみてみましょう。
建築物の大きさ規制
「建ぺい率」とは、建物を建てる敷地全体の面積に対して、建物が建てられている部分の面積の割合がどの程度までなら許可できるかを示しているものです。
住宅などの住環境を重視するエリアにおいて建ぺい率が定められていないと、敷地に目一杯、建物を建ててしまうといったようなことが生じてしまいます。そうなると、住環境に必要な環境が守れません。そのような事態にならないように、それぞれの土地の目的に応じた建ぺい率を定め、建物が建っていない空いている部分を確保できるようにしているのです。
容積率との違い
建ぺい率が、敷地面積に対する建築面積(建坪)の割合を示すものであるのに対し、容積率とは、敷地の面積の広さに対してどれくらいの床面積(延床面積)の建物が建てられるかという割合です。つまり、敷地面積に対して、建物全体の立体的な空間の大きさを規制するために定められるものだと言えるでしょう。
建ぺい率の制限は場所によって違う
建ぺい率は、どの場所でも同じ割合に定められているわけではありません。ここでは、土地が所在する場所ごとに、建ぺい率がどのように異なるかについてみてみましょう。
用途地域によって建ぺい率は異なる
市街化区域などでは、住宅や工場などが隣接するといったことを防ぐために、地域によって土地の用途が定められています。これが「用途地域」です。
用途地域は13種類あり、それぞれの用途地域に合った使い道や建てられる建物の制限があり、同様にそれぞれの地域に応じた建ぺい率や容積率も設けられています。
用途地域は、市区町村のホームページなどで確認が可能です。大きく住居系地域と商業系地域、工業系地域の3種類に分けられ、それぞれの地域の中でも細かく分けられています。ここでは、3種類の用途地域における建ぺい率をみてみましょう。
住居系地域の建ぺい率
住居系の用途地域は、いずれも住居での生活環境を守るための地域です。生活に悪影響を与える騒音や人の往来が多くなる店舗や商業施設などの建築が制限されています。
それぞれの住居系地域の建ぺい率は次の通りです。
用途地域 | 建ぺい率 |
第一種低層住居専用地域 | 30~60% |
第二種低層住居専用地域 | 30~60% |
第一種中高層住居専用地域 | 30~60% |
第二種中高層住居専用地域 | 30~60% |
第一種住居地域 | 60% |
第二種住居地域 | 60% |
田園住居地域 | 30~60% |
準住居地域 | 60% |
ここからわかるように、住居系地域の建ぺい率は最大で60%です。そのため、隣の建物との間にかなりの空間ができることになります。
商業系地域の建ぺい率
商業系地域とは、商店やテナントビルが多く建ち並ぶ、駅の周辺や繁華街やオフィス街が形成されている地域です。住居系地域よりも資産価値の高い土地なので、土地が活用できるように大きな建物が建てられるようになっています。
商業系地域の建ぺい率は次の通りです。
用途地域 | 建ぺい率 |
近隣商業地域 | 80% |
商業地域 | 80% |
商業系地域の建ぺい率は80%なので、敷地の大部分の面積に建物が建てられるようになっていることがわかります。
工業系地域の建ぺい率
工業系地域は、工場や倉庫などのための地域です。準工業地域では住居や小規模の店舗を建てることもできますが、工業専用地域は安全のため工場しか建てることができません。
工業系地域の建ぺい率は次の通りです。
用途地域 | 建ぺい率 |
準工業地域 | 60% |
工業地域 | 60% |
工業専用地域 | 30~60% |
商業系地域では80%だった建ぺい率が、工業系地域では30~60%まで制限が厳しくなっています。これは、万が一事故が起きた場合、隣の建物や工場に被害が及ばないようにするためです。
建ぺい率で建築可能な建物の大きさを計算
これまで解説してきた建ぺい率と容積率を用いれば、どの程度の建物が建てられるのかを試算することができます。建ててから後悔しないように、その試算方法を紹介していきます。
建物の大きさは建ぺい率と容積率で決まる
建物を建てる敷地の面積と、その敷地に設定されている建ぺい率、そして容積率から実際に建てられる建物の大きさを算出することができます。
ただし、必ずしも敷地面積と建ぺい率、容積率から算出された大きさの建物を建てられるわけではありません。それぞれの土地の制限や条件によって大きさの制限が異なる場合があることを踏まえておきましょう。
建ぺい率50%、容積率100%の計算例
例として、200平方メートルの敷地に対して、建ぺい率が50%、容積率が100%の場合に、どれくらいの大きさの建物(居住用の家)が建てられるかを計算してみましょう。
建ぺい率が50%なので、敷地における建物が建てられる面積(建築面積)は100平方メートルです。これが1階の床面積の上限になります。
容積率は100%なので、建物の延床面積の上限は200平方メートルです。よって、1階と2階とが同じ床面積である、2階建ての家を建てることができます。
高さの制限をクリアしているならば、この敷地に3階の家を建てることも可能です。しかし、その場合は1階部分の床面積を100平方メートルにすると、2階と3階の床面積は50平方メートルずつにするなど、合計の延床面積を100平方メートル以下にしなければなりません。
建ぺい率のポイントと注意点
最後に、建ぺい率が緩和されるケースや建ぺい率が変わるケース、また建ぺい率で注意する点などをみてみましょう。
建ぺい率が緩和されるケース
次にあげる条件を1つ満たせば、建ぺい率の10%割り増しを受けることができ、両方とも満たせば20%の割り増しを受けることが可能です。
- 建ぺい率の上限が80%となっている用途地域以外で、かつ防火地域内にある耐火建築物
- 特定行政庁に指定された角地の建築物
建ぺい率の上限が80%の用途地域で、防火地域内かつ耐火建築物の場合、建ぺい率は無制限になります。
建ぺい率の上限が適用されないケース
建物の敷地が2つ以上の異なる建ぺい率の用途地域にまたがっている場合、その敷地の建ぺい率は「加重平均」を求めたものになります。
そのため、どちらの用途地域の建ぺい率の上限も適用されず、計算で出された建ぺい率が上限になるので、通常の建ぺい率とは異なった数値になるのです。
建ぺい率の注意点
設定されている建ぺい率や容積率を超えた大きさの建物は違法建築の扱いになるので、住宅ローンを組んだり融資を受けたりすることが難しくなります。
中古の戸建てを購入しようとする際、増改築などが行われていることがあります。そのような場合、建ぺい率や容積率を超えている恐れがあることを踏まえておくことが大切です。
あらかじめ、その敷地の建ぺい率や容積率を調べ、それに合致している建物かどうかをしっかりと確認しましょう。
建ぺい率と容積率を確認して土地を選ぼう
建ぺい率は、その土地にどれくらいの大きさの建物を建築できるかを示した数値です。容積率とともに用途地域によって定められており、建てられる建物の大きさを決める際に必要となるものですが、緩和されたり定められた上限以外の建ぺい率が適用されたりすることもあります。
また、中古住宅の購入時には、増改築などで建ぺい率や容積率がオーバーしていないかを確認することも大切です。土地や戸建てを購入する際には、建ぺい率や容積率の確認を怠らないようにしましょう。