設計変更は手間暇がかかる
工事では設計変更がつきものです。設計変更があれば、工事の内容が大きく変わったり、作業が増えたり減ったり、あるいは条件変更などで作業の難易度が上がったり、想定外の障害が発生したり、現場によって様々な困難が生じます。
設計変更の手続きでは、設計図や数量計算、積算書などの設計図書を新たに作成する必要があり、工事によっては、それに要する手間暇が膨大なものになることもあります。なので、設計変更では、とっかかりの打ち合わせがとても重要になります。これを怠ると、かなり面倒なことになることもあります。そんな実体験をご紹介します。
ハンパな打ち合わせがもたらした、設計変更の大きな代償
私は普段、工務系の仕事や設計の仕事をしています。通常は建設会社の設計部とか技術部といった部署にいるのですが、ある日、上司からこんな指示がありました。
「あそこの現場で、設計変更が必要になったんだけど、図面を作ったり数量拾ったりしてくれる人が急きょ必要になったから応援に行ってほしい」
普段から図面を描いたり数量を拾ったりする仕事もやっていたので、私はふたつ返事でOKしました。で、すぐに用意をして現場に行きました。
最初に現場案内と工事内容を説明してもらい、「こういう工事が追加になったので、そのための対応をお願いしたい」と言われました。けれど、打ち合わせっぽいことがあったわけではなく、具体的に「何をどうして欲しい」という指示がハンパでした。
その現場における業務フローは、図面を現場で作成し、数量と積算は支店内の部署で行うというものでしたが、現場からの指示は「まず数量拾ってくれ」というものでした。
私が「図面はどうしますか?」と聞いたところ、現場の上司は「まずは数量が必要で発注者からも求められてるから、まず数量優先で」と言われました。
設計変更は「初回の打ち合わせ」が命
ということで、私は2週間ほどかけて数量計算をして取りまとめました。そして支店内の部署に送ったところ、その部署から意外な指示を受けることになりました。
「まずは図面が欲しい。図面が無いと何も始まらないから」
よく考えれば、ごもっともな指示です。つまり、応援部隊の私は、現場と支店部署との板挟みのような状態になってしまったわけです。
その後も思うように作業は進まず、支店の方が「このままじゃラチがあかないから、一度現場で打ち合わせしよう」と言いはじめ、ようやく本格的な打ち合わせが行われました。そこで初めて、誰が何をどうする、という役割分担がハッキリしました。その場で、支店の担当者が「最初に顔を突き合わせて、打ち合わせしとくべきだったね」とポツリ。その通りなのですが、内心では「オイオイ、今さらかよ」と思ったわけです。初回の打ち合わせがハンパだったばかりに、私は2週間分の作業をムダにしてしまいました。
2週間分というと少なく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、月給の半分の働きがムダになったと思えば、雇用する会社側にとっては、けっこう痛手だと思いませんか?
打ち合わせは設計変更の全作業をラクにしてくれる
どの仕事でもそうですが、とっかかりに、打ち合わせを行います。工事関係者が一堂に会し、同じ資料を同じタイミングで見て言葉を交わすことで、やるべきことがハッキリします。そして、誰がいつまでにやるのかも決めることができます。これがハンパだったり、「わざわざ打ち合わせしなくてもわかるでしょ?」と思い込んで打ち合わせをやらなかったりすると、せっかくの作業が無駄になることがあります。
上述の設計変更の失敗談は、そのあおりをモロに食った事例ですが、私自身も最初からウヤムヤな状態で作業に着手せず、ちゃんと言うべきことを伝えるべきだったと反省した出来事でした。私も設計変更の仕事はこれまでも何度もやったことがあるのですが、毎度ちゃんとした打ち合わせがありました。その経験を生かせれば、今回の設計変更の失敗は防げたはずです。その経験をまったく使わなかったので、こんなことになってしまいました。
設計変更では、打ち合わせに時間をかけたくない?
けっきょく2週間を費やした数量計算がムダになった設計変更でしたが、打ち合わせ後はスイスイと作業が進みました。打ち合わせにかかった時間は約1時間。その1時間を惜しんでしまったがために、2週間が無駄にするという結果になりました。
設計変更では、打ち合わせに時間をかけたくない、という意識も強いと思います。設計変更はスピードが求められ、仕事の正確性も求められます。なので、すぐに作業に入って早く仕上げたい、という感情が湧きやすいのです。
けれども、必要な打ち合わせはやるべきです。そこでの1~2時間が、その後の仕事の効率を大きく上げてくれます。最初に1時間でも30分でもいいので時間を取って、打ち合わせをしたほうがいい。そうすることで、時間をムダにすることなく、効率よく手際よく仕事が進みますし、結果としてその作業に要する費用も節約できるのではないでしょうか。