建設コンサルタントの領域だった詳細設計をゼネコンがやる
私は以前、建設コンサルタント数社で働いていたが、今はゼネコンの技術部や現場で働いている。両方を経験して思うことは「一生ものの技術力は、ゼネコンのほうが手に入りやすい」ということだ。なぜなら、今の時代、詳細設計についても、ゼネコンが行うようになってきているからだ。
以前は、詳細設計と言えば、建設コンサルタントの業務領域だった。ゼネコンは建設コンサルタントが作成した設計図書を精査した上で、施工にあたっていた。設計を照査して不具合が見つかれば、すぐさまクライアントに報告し、建設コンサルタントにクライアントが連絡したり、ゼネコンの現場が方策を検討したりしていた。
それが今は、詳細設計もゼネコンが行うことが当たり前になりつつある。
構造計算も建設コンサルタントでなくゼネコンがやる
今、私がいる現場もまさにそうだ。設計は建設コンサルタントがやっていたのだが、工事を受注した後にいろいろな工事が追加になり、しかもそれを設計施工一括でやることになった。それがまた膨大で、造成設計、道路設計、下水道設計、護岸設計、推進工法の設計などがガッツリ、本当にガッツリ入っていた。さらに、建設コンサルがやった設計成果物の修正もかなりあった。
当然、現場の施工管理担当者だけでは対応できない。現場を廻しながら詳細設計をやるなんて、至難の業だ。というより、それは無理な話である。そこで、現場にも設計とか工務をやる人が必要になる。
私もその役割を担う形で現場勤務をしている。構造物の形式の比較検討とか構造計算もやっている。構造計算なんて、それこそ建設コンサルタントの業務領域だ。けれど、それを現場がやるようになっているのだ。
もちろん現場事務所で構造計算をやるわけではなく、支店技術部とか本社設計部でやってもらう。構造計算を現場のパソコンでやっていたら、場合によってはそれ以外の仕事が進まなくなるからだ。
施工を踏まえた設計でレベルアップできるゼネコン
ゼネコンが設計をやる場合、「どうやって施工するか?」を念頭に置きながら設計する。つまり、ある程度施工法を想定しながらやるので、現場の施工管理担当者を交えて検討していくことになる。必然的に「設計が現場と合わない」なんてことになるリスクは小さくなる。
もちろん、完璧に整合するわけではない。しかし、合わないといっても重大なレベルではなく、現場で合わせられる程度のもので済むようになる。現場条件をできるだけ詳細に踏まえて設計をしていくわけなので、建設技術者としてのレベルは、どんどん上がっていくのだ。一つとして同じ条件の現場はないわけだから、当然だと私は思う。
ゼネコンへの転職がオススメ
つまり、今のゼネコンは設計も施工も両方経験できる環境が整っていると、私は言いたい。両方経験できれば、そこで得られる技術力はどんどん上がっていく。設計的なアプローチ、施工面からのアプローチ、両方の視点があれば仕事も進めやすくなっていくし、想定される問題もすぐにイメージできる。そうすれば対策もスピーディに立てられるようになる。
今までは、建設現場に設計担当者が常駐するのは大規模な工事だけだった。しかし、今は規模に関係なく必要になっている。規模の大小関係なく、設計や工務をこなせる人が現場事務所で求められている。本来、それは建設コンサルタントの役割だったのが、ゼネコンがそれをやらざるを得なくなってきているのだ。
とても大変な時代ではあるが、それはむしろ建設技術者個人としては大きなチャンスでもある。一生ものの技術力が手に入りやすいからだ。そういう意味で、ゼネコンへの転職がオススメなのである。