入札工事を落札するために見直すべき「CPDS講習と社内制度」

入札工事の落札で見落としがちなポイント

国発注の工事に入札するシステムは、ほとんどがパソコン作業を必要とする電子入札です。建設業でも確実にデジタル化が進んでいることが分かります。入札工事の時期になると、色々な会社が仕事を取ろうと動き始めますが、意外なことに、入札に参加している会社でも、落札するのに重要なポイントを見落としている会社が少なくありません。

入札結果は運にも左右されますが、適切な事前準備を行うことによって、落札する可能性を確実に高めることができます。少し社内の制度を見直すだけで、落札の可能性は格段に上がるので、そのポイントをいくつか説明します。

CPDS講習に高頻度で出席する

まず、CPDS講習に高頻度で出席しているかどうか。

CPDS講習とは、国や市が行っている建設業の法律や決まりなどの更新情報を、講習によって作業員や施工管理者に伝えるものです。 CPDSは「Continuing Professional Development System」の略で、継続学習制度という意味です。CPDS講習の種類によっては、有料の講習と無料の講習があり、CPDS講習を受講すると、施工管理技術の資格者にポイントが与えられます。

有料の講習では、もらえるポイントが無料の講習よりも多くなっています。このポイントが工事の入札時に絶対評価として会社の持ち点に加算されます。

CPDS講習は、施工管理技士の資格を持っている方なら、誰でも申し込んで受講できる講習です。現場監督者や作業員は日々の業務に追われていると思いますが、有資格者が複数いるのであれば、日ごとにCPDS講習に参加させながら業務を行うなど、ポイントを獲得していくことも、視野に入れながら仕事をしていく必要があります。

建設会社にとっては入札工事を落札できるかどうかで、その年の利益に大きな差が出るので、CPDS講習への出席は重要です。

元請実績工事の点数を気にしながら管理する

次は、元請実績工事の点数を気にしながら管理しているかどうか。

工事を請け負うと、検査項目をチェックしながら検査官が検査を行い、最終的にその工事に点数が付けられます。その工事の点数が元請実績の工事点数として、入札の際に加点されていきます。

検査項目も工事によってさまざまで、例えば、土工の現場で近くに河川などがあれば、濁流を流さないために土嚢をついた(積んだ)など、小さな項目が沢山あり、それらがすべて加点対象となっていきます。

ただし、工事請負金額が小さい工事は、この検査項目が少なくなるので、優良点を取るのが難しいといった印象を受けます。ある程度の工事金額になってくると、検査項目も当然増えてくるので、加点も狙いやすくなります。地域貢献という名目で、現場近くの清掃を行えば、もちろん加点対象になります。

こうした小さな加点を積み重ねて優良点を取れば、もし以前に優良点を取った現場の続きの工事が発注された場合などに、圧倒的に有利に落札できる可能性が高まります。

また、その現場の監督者にも、元請実績という形でポイントが付きます。現場目線で見ると、日々の作業を効率よく進めながら優良点を狙うのは、正直難しいと思うのも事実です。現場が大きくなればなるほど、検査項目が増えるので、加点ばかりを気にしていたら、作業効率が上がらなくなることも実際にあります。それでも優良点を獲得する意味は大きいので、工事を落札して元請として管理するのであれば、次の入札も見据えてなるべく高得点を狙うべきです。

社内の施工管理技士の有資格者を増やす

そして、一番の基本は何と言っても、社内の施工管理技士の有資格者を増やすことです。

入札するときの会社の持ち点にしろ、CPDS講習にしろ、施工管理技士の有資格者にポイントが付与されます。施工管理技士のポイントが、そのまま会社の持ち点になる、ということですので、施工管理技士の資格者を雇用しないと勝負になりません。当然、施工管理技士の多い会社が入札では有利になってきます。

一つの工事を落札したら、施工管理技士の有資格者を主任技術者として配置する必要がありますが、その落札した工事に主任技術者として名前を使った有資格者は、その工事の期間中は他の工事の監督として配置することが基本的にはできません。

つまり、施工管理技士の有資格者が多い会社は、数多くの入札に参加できるということです。施工管理技士の資格はなにかと費用が掛かるものですが、会社にそのまま還元されるものなので、特に若い世代の施工管理技士の有資格者を増やす取り組みが、入札工事を落札するうえでも、将来の建設業を支えるうえでも重要です。だからこそ、今、企業間で施工管理技士の人材争奪戦が繰り広げられているわけです。

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大学卒業後に一度、建築商材会社に就職するも、その後、現場に立ちたいという想いから、建設会社に転職。 これまでに道路舗装や下水道、解体などの工事に携わってきたが、今は急傾斜地区崩壊対策事業の測量や施工を主に担当している。
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