TS GROUP代表/株式会社タケムラ創健代表取締役社長 竹村仁志さん 

舗装工事は芸術品。タケムラ創建が目指す「究極の地域建設業」とは?

タケムラ創建(三重県)の竹村仁志社長にインタビュー

TS GROUP(タケムラグループ、本社=三重県四日市市)は、舗装工事、土木工事などを手がける「株式会社タケムラ創建」「株式会社コーストメイト」をはじめ、トマトなどの野菜栽培を行う「うなぎ昇り株式会社」から成る企業グループです。

その代表を務めるのが、竹村仁志さん。父親が創業したタケムラ創建を継いだ二代目で、コーストメイトの実質的なトップです。「超ハイレスポンス」をスローガンに、地域建設業として、民間仕事を軸に事業を展開、グループ全体で年間11億円を売上げています。竹村代表に、地域建設業、舗装工事技術者のあるべき姿などについて、お話を伺いました。

タケムラ創建の社内に掲げられているスローガン「超ハイレスポンス」。竹村代表の直筆。

コーストメイト買収で東邦ガス工事の権利を取得

施工の神様(以下、施工) コーストメイトは竹村さんが立ち上げた会社ですか?

竹村仁志代表(以下、竹村) 私が10年前に買収した会社です。もともとは旧道路公団のOBの方が伊勢湾岸道の工事を牛耳るためにつくった会社でした。その工事が終わって、売上げが6000万円ぐらいまで落ちたところを買ったんです。3億円ぐらいの負債を抱えていましたが、民事再生法が適用されたので、負債額の10分の1の3000万円を返済して、自分のものにしました。

なぜコーストメイトを買収したかというと、四日市地域での、東邦ガスの舗装復旧工事に関する権利を持っていたからです。コーストメイト以外には1社しかありません。コーストメイトをつくった人はものすごい力を持っていたんです。そして、この権利も、実はものすごい権利だったんです(笑)。

竹村仁志 TS GROUP代表 株式会社タケムラ創建代表取締役社長

施工 コーストメイトを買収したときは、竹村社長は何をしていたんですか?

竹村 私の父親が株式会社タケムラ創建という、コーストメイトとまったく同じ舗装屋の会社を経営していて、私は、そこで番頭みたいなことをしていました。

タケムラ創建は当時、売上げが1億2000万円ぐらいの小さな会社でした。コーストメイトを買った後、当初は6000万円でしたが、2年目に売上げは1億2000万円、3年目には1億8000万円と増え、今ではタケムラ創健とコーストメイトで10億円の売上げになっています。この間、頑張りましたよ(笑)。奈良市の中村建設株式会社の中村光良社長をはじめ、一社)地域建設業新未来研究会(CCA)メンバーの経営者仲間から、いろいろ学びました。

施工 コーストメイトを買った理由は?

竹村 そういうことをやりたかったからです(笑)。会社の番頭をやっていると、欲が出てくるんですよね。「そろそろお金を触りたいな」と思っていたときに、コーストメイト売却の話を聞き、父親に相談したら、「おお、行け」と言われたので、「よし、買おう」という感じですね(笑)。

高校中退し、タケムラ創建で現場仕事を始める

施工 タケムラ創建で舗装工事のお仕事の経験は?

竹村 私はホウキ掃きから始めて、全部の仕事をやりました。今は現場仕事はしていないですけど、子供の頃から、父親と一緒に現場に行ったりしていました。

施工 学業を終えて、タケムラ創建に入ったと?

竹村 実は、私は中卒でして、高校を途中で辞めちゃったんです。高校1年生の夏休みにタケムラ創建でアルバイトしたら、良い時代だったので、1ヶ月で20万円になりました。そのお金でオートバイを買いました(笑)。9月からは高校に行く気にならなくて、ずっと喫茶店に入り浸って、マージャンゲームをやっていました。制服姿で(笑)。そんな様子を見た父親に「そんなんするやったら、働け」と言われて、その年の11月頃にタケムラ創建に入った、というわけです。

タケムラ創建に入って、最初は現場ばかりでした。その頃は反抗期だったので、他のいくつかの会社に就職して、冷蔵庫などをつくったりした時期もありましたね。昔から「ラッキーな子」だったので、すべて正社員でした。ただ、どれも大手の会社だったので、会社と合わずにどれも長続きしませんでした。今思えば、父親に「会社から出してもらった」のかもしれません。

施工 その後、タケムラ創建に戻って来たと?

竹村 21歳ぐらいまで、3年間ほどフラフラして、タケムラ創建に戻りました。それからはずっといます。

早く仕事を終わらせることに挑戦するのが好き

施工 舗装工事に対する思い入れがあるんですか?

竹村 昔現場をやっていたときは、舗装の仕事は「手離れが良い」のが、良いですね。私、飽き性なんですよ。舗装の現場は、どんなに長くても2〜3日の短期で終わりますから、私の性分に合っています。自分が計画したダンプのサイクルとか、人員配置がバシッと決まると、その日一日を気持ちよく終えることができます。早いときには、午後3〜4時に終わります。早く仕事を終らせることに挑戦する感じが好きですね。

施工 舗装の仕事は仕上げですよね。

竹村 舗装は「芸術品」だと思っています。盛土などはどうしてもガタガタになりますが、舗装によって、道路などを真っ平らに仕上げるわけです。糸を張って、それを目印にビシっとまっすぐに舗装します。プラモデルづくりみたいなもので、いかにきれいに仕上げるかという作業で、私は大好きです。

施工 良い仕事をしたかどうかは、見れはすぐ分かる?

竹村 そうですね。きれいに仕上げるのが技術者のウデです。想像力のない人間は、舗装の仕事はやるべきではありませんし、できません。例えば、どうすれば、直線と曲線をきれいに見せられるかということは、想像力が必要だからです。

施工 舗装の仕事も奥が深いんですね。

竹村 実体験のほか、理論も絡んできます。例えば、プレートの裏にアスファルトがくっつくのはなぜかということについて、科学的な理由を知っておく必要があります。私には、経営者として、舗装工事の理論的な部分を社員に教育していく責任があると感じています。

施工 舗装工事で大変なところは?

竹村 舗装工事は1日の工程がギリギリなことが多いんですよ。昔は、表面が砂利の状態で、1万平方メートル一気に舗装をかける現場もありましたが、最近は砂利のままで放置してはダメで、めくった分舗装をかけるようになっています。1日の工程をキッチリ合わせるためには、やはり想像力を働かせないと、なかなかうまくいきません。しかし、この部分は、人に教育することができないんです。「この現場ではこう想像しなさい」というのは基本的にムリです。ちょっとでも教えることができないか、どうすり合わせるか、いろいろと考えているところなんですけどね。さきほど「舗装は芸術品」と言いましたが、それを理解できている社員はいないかもしれません(笑)

3日工程の仕事を1日で終わらせる。楽しいのは私だけ?

施工 印象に残っている仕事は?

竹村 四日市市の阿倉川西富田線の再舗装工事です。1200平方メートル程度の小さな仕事でしたが、3日間の工程を1日24時間で仕上げました。現場代理人は別にいましたが、私がダンプのサイクルや人員配置を組みました。すべて予定通り、時間通りにバシッとはまりました。前の舗装を剥ぎ取って、地面を改良して、二層の舗装を1日で仕上げたわけです。心がワクワクした、一番楽しかった仕事です。

施工 現場代理人ではなかったのに?

竹村 ここぞという現場では、私が工程を組むんです。儲かるようにするためです(笑)。もちろん役所とは、3日間の工程を1日で終わらせるための交渉はします。1日で終われば、人件費、トラック、重機の費用なども当初の3分の1で済みますから。これという現場は、思いっきりやります。

施工 儲かる以外の理由は?

竹村 限界への挑戦です(笑)。現場では、うちの社員のほか、さまざまな協力会社さんが関わります。工事に関わるすべての人間に対して、1日で終わらせる説明をし、それを理解してもらわないと、ムリです。ちょっとの工程ミスも許されませんから。チームで限界に挑んで、それを達成するのがすごく楽しいです。

あとは役所の評定点数ですね。四日市市の現場では80点以上はなかなか出ない上に、舗装の現場は書類が少なく、さらに点数が出ないんです。そんな中でも、79点とりました。私は、役所ともチームを組んだつもりで、やっていました。

施工 楽しいのは竹村社長だけ、ということはないですか?

竹村 楽しいのは私だけだと思います(笑)。他の人間は、スコップを支えにして寝ていたりします。毎年雪の中の現場ですし(笑)。吹雪いて吹雪いて、もう(笑)。

施工 会社の技術者は何名?

竹村 12名です。1級土木施工管理技士などの有資格者は5名ほどで、社員全体では24名です。

民間企業を攻めないと、公共だけではこれから食えない

施工 四日市市の仕事が多いんですか?

竹村 東邦ガス、クロネコヤマト、コンビナートなど民間の仕事が6割です。公共の仕事は、四日市市のほか、いなべ市、三重県などです。舗装屋で、民間の仕事が多いのは珍しいと思います。普通8割が公共の仕事という感じなので。

われわれのような会社は、どんどん民間企業を攻めていかないと、これから食えなくなります。公共だけでは仕事量が安定しないので、その隙間を民間の仕事で埋めていかなければなりません。われわれは、舗装屋と言うより、「よろず屋」です。舗装の仕事でお世話になったお客さんに対しては、なんでもやります。ネコキャッチャー、シャワーヘッドの交換、草刈りなんかもやります。トマトやイチゴも栽培しています(笑)。

民間企業を相手にするのは、営業力と言うか、人間力、対人能力が必要です。相手とちゃんと付き合わないと、仕事が取れなんです。私としては、最近、その部分を強化しているつもりです。その一方、一度お仕事をした民間企業は、ほぼほぼリピーターになってくれます。それは「なんでもやる」からです。「それは儲からないからできません」と断っていたら、二度と頼んでもらえないと思います。その分、サービス工事も多いです。身を削っています(笑)。でも、地域建設業は「持ちつ持たれつ」ですからね。

「発注者が何を求めているか」をつかむことが技術者の能力

施工 あるべき技術者像は?

竹村 「発注者が何を求めているか」をいち早くつかむことができる技術者です。安さなのか、品質なのか、あるいは工期なのか。そこをつかまないと、技術力の「技」の字が出る前に、その仕事はなくなってしまいます。受注した後も、常に気を配っていないと、役所の場合は、良い点数がもらえません。良い技術者は、民間のお客さんが離さないですよ。

建設会社が100社あったら、90社ぐらいは、ほぼ同じものをつくると思いますが、発注者の意図をつかめるのは、90社のうち1割程度の会社だと思います。その1割が役所の評価で80点以上取る会社だと考えています。

施工 発注通りのモノをつくるのは大前提だと?

竹村 大前提ですね。モノをつくるだけではダメです。例えば、役所は、モノ以外にも、とにかくきちんとした書類を欲しがります。ちょっとしたやりとりでも、文書で出す必要があります。役所の人は、設計通りのモノができて、苦情がなく、文書がそろっていれば、喜びます。民間の人は、とにかく「お金」です。企業の場合は、予算内に収めることです。その辺のニーズをつかむこと、落としどころを探ることが、技術者に必要な能力だと考えています。

良いモノをつくれても、発注者との関係をムゲにしている技術者は、残念です。「良いモノをつくった」ことに対する発注者の評価なんてものは、すぐひっくり返りますから。

油流出で出入り禁止に。それも刺激的で楽しい

施工 発注者との関係上での失敗は?

竹村 昨年、東芝さんの工場での電気工事を受注したときです。雨が降る中、工場の敷地内で作業をしていたところ、作業車に積んでいた舗装工事用の機材に付いた油が、地面に流れ落ちたんです。ちょっと路面が虹色になった程度でしたが、それで一発アウトになったことです。油の処理をして、仕事は打ち切り。それから出入り禁止です。その連絡を受けたときは、ショックでした。涙が出そうになりました。ただ、そういうのも刺激的で、私は楽しいですけどね(笑)。あっても良いと思います。

施工 刺激ジャンキーですか?

竹村 そうですね。やっぱり仕事は、命がかかってないと、楽しくないですよ(笑)。

施工 ホリエモンみたいですね。

竹村 ・・・(笑)。

施工 自分が楽しいと思うことを社員と共有したい、という気持ちがあるわけですか?

竹村 ありますね。私は、自分がやった現場で泣けます。2回ぐらい泣きました。嬉しすぎて(笑)。自分の達成感ではなく、チームで完成させたという嬉しさです。さっき言った西富田線の現場では、朝方、一人泣きしていました(笑)。うちは「光る道路」という技術を持っているのですが、初めて、リゾートトラストさんの福島にある結婚式場に設置したときも、泣きました。ずっと研究してきて、やっとモノになったということで、泣きました(笑)。

施工 トップ営業はしているんですか?

竹村 していません。経営だけです。私が営業をしてしまうと、仕事が全部トップダウンになってしまって、安かろうが高かろうが、「お前たち、やれ」と押し付けることになるからです。売上げが下がっても、そういうことはしないことにしています。

施工 売上げの目標は?

竹村 今の売上げが10億円なので、20億円を目指したいですね。

施工 それに向けて技術者を増員していく?

竹村 これからは女性を多用します。今は3名ですが、10名ぐらい採用したいと考えています。

施工 なぜ女性を?

竹村 女性の方が真面目で、よく働くからです。

「NOがない会社」が究極の地域建設業の姿だ

施工 経営者の仕事は、会社と人を育てていくこと?

竹村 経営者が好きな事業をやらないことが、経営を失敗しないコツです。経営者が好きな事業をやると、失敗します。それができる社員を見つけたときにやればいいですが、経営者があれもこれもやると、絶対に会社を潰します。だから、能力のある社員を育てていくことは大事です。楽しいですよ、人を育てていくのは。

施工 今後、どのような会社を目指しますか?

竹村 お客様の注文に対して「NOがない会社」でありたいです。「毛虫も捕ります」「犬の散歩も行きます」というのが、究極の地域建設業の姿だと思っています。建設業は、つまるところ、人付き合いですから。大きな仕事で、体力的にうちの会社ではムリな仕事でも、NOとは言いません。そういう仕事は、能力のあるCCAの会社などを紹介します。私はCCAのメンバーは家族だと思っているので、ノーマージンで出します。「行けー」という感じです(笑)。

 


 

竹村代表は36歳。建設会社のトップとしては、比較的若い世代です。地域の建設業のトップは、妖怪のような老人が支配しているイメージがありますが、竹村代表のような、若くて、エネルギッシュで、刺激ジャンキーな(?)トップが各地で増えれば、停滞気味の業界も活性化するのではないかと思われます。

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