技能力が低すぎる最近のゼネコン技術者たち
現在のゼネコン技術者たちは、あまりにも技能力が無い!——そう思うのは私だけではないはずだ。
ゼネコンに勤務して30数年……68歳を迎え、建設業界について想うことを正直に書かせていただく。
私が土木の道を選んだのは、モノ造りへの憧れからだった。土木工学課程を卒業した私は、当時就職先として大人気だった公務員ではなく、迷うことなく施工会社に着任した。
会社管理部門で3日間の研修を経て、現場に赴任。現場事務所に着任するや否や、先輩に連れられて職人さんが多い現場での駒使い!飯場での昼食後、再び職人さんの支援・対応に追われ、夕方からやっと事務所でデスク作業……いま思い返すと、ゼネコンでの日々はこの繰り返しで、軍手は欠かせなかった。
当時は現場事務所に空調もなく、夏は首にタオルを巻き、冬は電熱器で暖をとった。今の現場とは状況があまりにも違った。
しかし、こうした厳しい労務技能体験が、われわれ世代の技術者の基礎になっているのである。
土木施工管理とは「経験工学」である!
技能体験を持っている、われわれ世代の技術者からすると、最近のゼネコン社員に対して「どうして技能経験のない施工管理者が、恥ずかしげもなく現場で指示できるのか?」という疑問を拭うことは難しい。
なぜなら、私自身の経験上、「土木施工業務とは、経験工学である」と考えているからだ。
多くの現場での実務において、職人さんと施工について議論した体験が、施工管理者には必須である。たとえば、歩掛の知識がない現場監督が大事な「工程表」を引けるのか? 経験がないのに「施工図」を描けるのか?
しかし、現在の土木技術者は、かわいそうなぐらい技能力が不足している。技能経験がない若造から「施工計画書を提出してください」と言われると、年甲斐もなく心の中で「もう少し勉強しなさいよ」とつぶやいてしまう自分がいた。
たとえば、以下は、あるゼネコンの中堅社員との会話である。
私「コンパネの大きさは?」
中堅社員「……1m×2m???」
私「鉄筋工1名の1日での組立重量は?」
中堅社員「……鉄筋屋さんに聞きます???」
工程表の基本ですが、実務を知らな過ぎる!
このような会話が、現在のゼネコンの現場では平気で通用している。これでは「生きた工程表」は出来ないし、労務管理・労務配置の管理が出来ないのは当然だ。
今、ゼネコンの現場事務所では、みんなパソコンに眼を向け管理書類をまとめているが、もう少し現場の職人さんと一緒に、真似事の技能経験でもしたほうが良いのではなかろうか?
そうでないと、現場の指示で大事な「工程表」「施工図」は、いつになっても描けはしない。
政治と国民の責任も。公共事業が土木技術者を育てる!
しかし、上記のような問題は、ゼネコンや土木技術者だけの責任ではない。そもそも土木技術者が一人前に育つには10年かかる。そして、そのためには公共事業が必要である。
それなのに「脱ダム」「公共事業削減」 「コンクリートから人へ」などという誤った政治によって、土木技術者が不足する事態に陥ってしまった。このままでは公共事業が消化できない恐れも出てきた。そもそも一般人の公共工事に対する無知な批判も問題である。
土木一筋で生きてきた私としては「公共事業に携わる方々が多いほど世の中は潤う」と思っている。公共工事を増やして、土木工事に関与する技術者がネズミ算式に増えることを望むと言っても良い。それほど土木技術者の育成は困難なのだ。
しかし、土木・公共事業に携ってきた技術者として、現在の公共事業のやり方には異論もある。土木建造物の発注を年度制にするのは止めたほうが良い。現状は、年度始めに国の予算配分が決定し、それから案件議論、設計そして手続きとなる。われわれ施工部隊が活動を開始するのは早くて8月。そして年度末までに工事を終わらせる。半年働き、半年手待ち、という状況が多い。これでは、職人の生活は潤わないため、発注の平準化が求められる。
土木技術者・技能者の育成は、ゼネコンだけでなく、国民全体で考えるべき問題ではないだろうか?
ゼネコン職員のレベルは確かに低いです。施工図は外注、施工計画は下請け任せ、現場に出ないからチェックも出来ない。