道路協議や河川協議の失敗談
工事や設計の最中に必要になる協議がある。道路協議や河川協議と言われるものだ。国道や県道に新しく作る道を取り付ける場合や、川の中に橋脚を作る場合、護岸を修繕する場合など、それらの施設を管理する管理者との協議が必要となる。
しかし、以前私が担当していた現場で、それらの協議をおろそかにした結果、とんでもないことになってしまったことがある。その現場は、工事の中に設計施工一括のプロジェクトが含まれており、受注者がその設計施工一括業務を請け負う必要があった。
発注者が道路協議を忘れた!
私は設計担当の1人として、その現場に勤務していた。業務の管理技術者や担当技術者は別におり、私はその補助する役割であった。
私が赴任した時、すでに設計業務は進んでいて、図面や数量計算書を作成したり報告書を取りまとめたりするなど、成果品の作成の真っ只中であった。道路や下水道などの構造物は、形式や構造寸法がほぼ確定しており、それらを成果品として取りまとめるための補助担当者として私が呼ばれたのである。
私が赴任して1週間ほどしたころ、急に管理技術者や担当技術者の動きが慌ただしくなった。電話でのやりとりを小耳に挟んでいると、どうやら市の建設課や下水道課と協議の日程を決めているようでだ。その次の日、打ち合わせに行った上司からの報告を聞いたとき、私は驚いた。急遽道路の舗装や下水道のマンホールの形状が変わるというのだ。
「なんで今になって?しかも、道路の舗装やマンホールの構造が変わるとなると、また検討作業が必要になるし、構造計算もやり直しになってしまう、なんで?」
どうやら、発注元が道路協議を忘れてしまっていたようなのである。受注者であるわれわれゼネコンもゼネコンである。こちらもまた道路協議を忘れてしまっていた。
そこからがてんやわんやの始まりであった。当然、資料を作る必要があるし、打ち合わせ用に図面を編集しなければならない。しかもその図面は打ち合わせ用なので、設計図としては利用できない。なので、同じ内容の図面を複数作らなければならなくなってしまった。
道路管理者や河川管理者等との打ち合わせ
ご存知の方もいらっしゃると思うが、道路管理者や河川管理者等との打ち合わせは、1度や2度では終わらない。何度も管理者のところに赴き、彼らの意向を踏まえた上で、検討資料を作り直して、再度打ち合わせをして確認する作業が必要となる。
それは本来、設計業務の途中段階や、工事の途中段階でやるべきものである。さらにその打ち合わせは業務や工事を請け負った受注者ではなく、発注をする事業主がやるべきものである。それを忘れるとは一体何をしているのか、何を考えて仕事しているのか、あまりに不誠実じゃないか、ということになる。
とにかく急いで資料作り、管理者の合意を取り付けなければならない。チームはテンパった状態に陥ってしまう。管理者との打ち合わせのため、様々な仕事が必要になり、当初の工程よりも遅れてしまう。設計施工一括業務なので、設計が完了しないことには工事に取り掛かれないのである。
さらに様々な図面が必要となるし、内容が同じ図面が複数必要となったため、修正作業がとても面倒なのだ。1ヶ所直して終わりではない。もう1つの図面も直さなければならないので、作業する方としては、めんどくさいこと、この上ない。チェックも面倒だ。そして、その資料を持って打ち合わせに行き、手直しがあればまた複数の資料を直さなければならないのだ。
設計が終わったものと思っていた工事担当者は、いつまでたっても着工できないことに苛立ちを感じていた。それもこれも道路管理者との打ち合わせをすっぽかしてしまったためだ。そのため、大幅な工程の遅延を生じさせてしまった。設計業務の途中段階で打ち合わせをセットしていれば、こんな面倒なことにはならなかった。
それにしても道路協議や河川協議をこんなにおろそかにした現場は初めてだった。今まで複数の建設コンサルタントやゼネコンの現場で働いてきたが、こんなことは初めてだ。改めて外部機関との協議はとても重要なものであることを認識した失敗であった。