給湯器のニーズの変化
毎日毎日、設備関係の仕事をしていると、肌身で感じることが色々あります。
例えば、2011年の大震災直後と今とでは、一般家庭で使われる熱源機、つまりお湯を供給する機器の選び方に明らかな変化があります。
震災直後は、とにかくガス給湯器が多かった。理由は節電というより、停電を懸念して「ガス」がよく選ばれました。
もっともガス給湯器にしても100Vの電気は必要なので、停電時はガス給湯器であっても、お湯はでません(単一電池で動く瞬間湯沸かし器は別)。
一方、エコキュートはかなり少なかったです。電気温水器の取り替えは、たまにありましたが、オール電化にしてエコキュートを取り付ける工事は、あの頃本当に少なかったです。オール電化だと停電時、IHクッキングヒーターも使えませんからね。
これからはエコキュートか?
さて、その当時に懸念されていた停電は、実際は震災直後の計画停電と、ごくたまに起こるトラブル的な停電以外はありませんでした。
今は停電なんて頭の片隅にもないのでしょう。エコキュートを選ぶ方がかなり多いです。新築で最初からオール電化を選ぶ方もいれば、ガス機器とガスメーターを撤去して、オール電化にされる方もいらっしゃいます。
導入コストはエコキュートの方が高いですが、ランニングコストの差を考えると、賢い選択なのかもしれません。
では近い将来、エコキュートがスタンダードになり、ガス給湯器は無くなってしまうのでしょうか?
ガス機器メーカーのエコキュート対策
ガス給湯器を選ぶメリットは、停電時にガスコンロが使えるということだけ、という意見もありますが、もはや機能性や経済性でガス給湯器が選ばれることはないのでしょうか?
そんな危機感から、ガス機器メーカーも対策を考えました。
その答えの一つが、ハイブリッド給湯器(リンナイはECO ONE)です。
このハイブリッド給湯器、名前からも何となくわかるように、ガスと電気の良いとこどりの給湯器です。
エコキュートよりも小型のタンクでお湯を貯湯し、なくなればガス給湯器としてお湯を供給する次世代型給湯器です。
ハイブリッド給湯器のメリット、デメリット
簡単にハイブリッド給湯器のメリット、デメリットを挙げると、
メリット
- 湯切れの心配がない
- 太陽光パネル設置の家庭なら、停電時でもガス給湯器として動く
- ガス給湯器よりもガス効率が良く、エコキュートよりも電気効率が良い(メーカー発表)
- タンク内のお湯がこまめに入れ替わるので清潔
デメリット
- 機械代を含め、設置費用が高い
- 一度にお湯を大量に使うと、ただのガス給湯器になる
- 気温の低い地域では効率性が下がる
どこにでも書いてありそうなメリット、デメリットはこんな感じです。
私は別にガス機器メーカーの回し者ではないので、個人的に気になる点を申し上げると、床暖房や浴室暖房は、従来のガス給湯器と変わらない効率性である点が気になります。生産数量が少ないからなのか割高な点も気になります。
それと、工事する者の目線で言えば、100Vの電源が2つ必要で、そのうち1つは単独で引っ張ってこなければならないのが面倒で、また工事代も高くなってしまいます。
ハイブリッド給湯器が有利
気になる点を挙げましたが、毎日のように工事をしている設備屋としては、エコキュートと比べて、ハイブリッド給湯器のほうが少し優位かなと感じています。
住まれている地域や家族構成、何よりもお湯の使い方にもよるのですが、平均的な条件ならハイブリッド給湯器のメリットはやはり魅力です。
ただ、このハイブリッド給湯器、一般の方の認知度が低く、普及には至っておりません。理由はメーカーが大きな広告を出せていないからです。
なぜ出せていないかは、大人の理由がありまして、ガスを供給している会社、仮にOガス社とするとOガス社が展開しているガス機器が売れなくなってしまうからです。
展開していると言っても、ガス機器メーカーに生産依頼するOEMでの展開です。このOガス社に気を使って広告が出せないとのこと。
エコキュートは長期的な視点で考えましょう
少し話が脱線しましたが、ハイブリッド給湯器にしても、エコキュートにしても、どちらも経済的メリットを享受しようとすると、最低でも7~10年は使わなければ意味がありません。
ちなみにメーカー発表の耐用年数は10年です。この7~10年は結構な年月だと思います。
例えば家族5人でよくお湯を使う18歳と15歳と13歳のお子さんがいらっしゃる家庭があったとします。
ガス給湯器が壊れかけていて、光熱費を抑えようと、オール電化にしてエコキュートを検討しているとしましょう。ガスコンロからIHクッキングヒーターへ、ガス給湯器からエコキュートへそれぞれの交換とそれに伴う施工などを含めると、恐らく70万~100万円ほどかかるでしょう。
施主は8年使えば元を取れると判断し、オール電化にしてエコキュートの設置を選択しました。しかし、お子さんはそれぞれ大学進学と同時に家を出て行き、全く元は取れませんでした。
いかがでしょうか。この例え以外にも、家族構成の変化や引っ越しなど、いろいろ考えられますが、経済性が導入理由であるなら、長期的な視点で考えないといけません。
ハイブリッド給湯器の環境性も大事
最後に大事な環境性ですが、一番優れているのは、ハイブリッド給湯器です。
例えば、オール電化で深夜電力契約している場合でも、エコキュートは90度で保温するので、放熱ロスが発生します。
ハイブリッド給湯器は機械学習によって、最適な温度で保温するので、ロスがほぼありません。もちろん使い方次第ですが、ガス使用時も排気熱を再利用する仕様になっているので、それも要因かと思います。
熱源機の選択に迷ったらCO2排出量の観点から、ハイブリッド給湯器を選んでもいいかもしれません。