配管職人が足りない!継手メーカーが挑む現場の人手不足問題

「工具不要の配管継手」を開発!職人不足を解決する“コロンブスの卵”

配管工事の苦労を知っていますか?

建物内の給水、給湯や排水など、衛生的な生活に無くてはならない配管を支えているのが、パイプとパイプを繋ぎ合わせる継手。パイプの素材や使用目的によって継手の種類も様々で、施工には熟練の技術が必要です。

しかし最近、かなり画期的な継手が開発されたのをご存知でしょうか?

東尾メック株式会社のステンレス管用継手「KKベスト」です。

KKベストは第30回中小企業優秀新技術・新製品賞の一般部門優良賞を受賞。新しい接合方式による施工性が評価されました。

この画期的なステンレス管用継手の開発背景について、東尾メックの東尾清吾社長と、開発担当者の福山潤さんに話を伺いました。

配管継手一筋60余年の挑戦

東尾メック株式会社 東尾清吾社長

――「中小企業優秀新技術・新製品賞」は、中小企業の技術振興を図り、わが国の産業発展に寄与する目的で昭和63年から実施されています。今回の受賞は何が一番評価されたと思いますか?

東尾 わたしたちは1950年の創業当時から、多種多様な継手にこだわったモノづくりに努めてきました。継手は地味ながら配管の要である大事な部品です。コツコツと続けてきたことが評価され、うれしく思います。

今回のKKベストの受賞で評価として一番大きかったのは、管と管のつなぎ方だと思います。つなぎ方の独創性ですね。ネジでもない、溶接でもない、接着でもない、フランジでもない。拡管式なのに従来の拡管式のようにレンチで締め込む作業がない。

拡管式とは、管を接続する際に管の一部を拡げて、抜け防止をする接続方式です。従来は管と継手を接続する際には、拡管した部分を挟むように継手を締め込みますが、KKベストはロックリングを差し込むだけで接続完了します。

拡管式とは、管を接続する際に管の一部を拡げて、抜け防止をする接続方式

ステンレス管用継手「KKベスト」

今回受賞できたのも、当社が開発したロックリングによる全く新しい接合が評価されたのだと思います。40年の実績のある拡管式の「管が抜けない」という特徴はそのまま踏襲し、さらに進化させた。まさにコロンブスの卵じゃないかと思っています。

――そのコロンブスの卵であるロックリングによって、どのような施工上の特徴が生まれますか?

東尾メック株式会社 開発担当 福山潤さん

福山 最大の特徴は、接合にかかる時間の圧倒的な短縮です。KKベストは「施工が早い」じゃない。「とっても早い」です。建設現場における設備配管の工数を飛躍的に削減できます。

このことに関しては賞の審査員の方が当社を訪れ、実技・立会調査も行い、さらに実際に使用者(施工業者)からヒアリングして確認していただきましたので、自信をもって断言できるところです。

接続後も継手を回転させることが可能


工具不要な継手のロックリング機構

――KKベストを開発するにあたってどのような背景があるのですか?

東尾 2016年9月から始まった日本の成長戦略を官民一体で議論する未来投資会議においても、第1回から建設業の生産性向上がテーマになっています。労働人口の減少や大規模災害時の対策には建築現場での生産性向上は必須事項であり、2025年度までに建設現場での生産性2割向上を国としても目標に掲げています。

私は継手メーカーとして設備配管でどのように工数削減に貢献できるのか、ということを考えました。注目したのは接合時間の短縮と確実性です。

福山 管と継手をナットで締めるネジ接合の場合は、レンチで締めるのに時間がかかります。従来の拡管継手でもレンチで締めるのには変わりありません。工具を使えば、当然、労力が要ります。どれだけ締め込めばいいのか、というのも完全に決まった基準がないのが現実です。だから緩まないように力いっぱい締める。そうすると時間がかかる。また作業員によって締め込み具合も変わってしまう。

そして設備配管は狭くて高所作業だったりしますから、工具を落とさないようにセーフティコードを付ける。労働安全性を考えるほど、作業者にとっては作業しづらい環境になっていきます。

また配管作業は1口ずつ順番に接続していきます。そうするとレンチで継手を締め込むと、前につなげた継手に逆にトルクが働き、緩んでくることもあるんです。一旦締めた継手が緩む条件は明確に判っていません

締めに対するバラつきがでないように現場では、「強く締めろ」「力いっぱい締めろ」が合言葉となっています。

接続作業の際には工具で両手がふさがってしまうので高所作業では転落の危険性も発生します。レンチを落として新しい床を傷つける恐れもある。リスクは数え上げるとキリがありません。

工具で締め込む必要のない継手はできないか、という声が現場の作業者から聞かれるようになりました。そういった声を実現したのが工具不要のロックリング機構です。この方式ならすべてが解決する、と直感しました。


ステンレス管用継手KKベストの開発経緯

――開発の際に苦労したことは?

福山 まず接続のバラつきを継手の構造上起こさせない仕組みを作ろうと考えました。そうすれば誰が施工しても確実・高精度の接続ができますから。

開発当時は局部的に4箇所出っ張らせる拡管形状で、出っ張り部を利用してロックする方法を検討していました。そこから試行錯誤し、ステンレスの応力腐食割れが起こらないよう現在の円周上に出っ張らせる形状を採用しながら工具レスで接続できる構造を開発しました。

ロックリングを差し込んで接続完了

ロックリング機構は、接続の際の締め込み作業が不要です。だからレンチも不要で、パチンッとロックリングを入れるだけで接続完了です。

――KKベストとは拡管のベストということですか?

福山 そうです。ベストを自負していますので、是非とも現場で、その他の製品とどっちが早いか比べてほしいです。KKベストは新製品の挑戦者ではありますが、誰の挑戦も受けます。

――販売してからの評価・反応はいかがですか?

東尾 販売を開始した当初は、恥ずかしながら品揃えや拡管機の在庫の問題でご迷惑をかけた方々もいましたが、今は全てクリアしていますので安心してご注文ください。

あと慣れているものから新しいものに替えるのは抵抗があると思いますが、当社でも施工指導などを全国で行っておりますので、是非とも宜しくお願いします。実際に使っていただいた方からの良い評価も期待値も実感していますが、まだまだ我々の訴え方が甘いと思っています。

東尾メックのホームページを通じてオモシロ企画もやっていますので、是非ご覧ください。

【動画】KKベストでブランコを作ってみた

https://www.youtube.com/watch?v=slx9C-18cVI

 

――ホームページで社員自らがKKベストの良さを説明していますが、あれは一見の価値ありですね?

東尾 ホームページのチームを作り、社員でアイデアを出し合っています。従来の枠にとらわれず、いかに製品の良さが伝わるかを試行錯誤しています。

ステンレス管用継手KKベストで世界中の職人不足を解決

――今後の展開はどのように考えていますか?

東尾 日本では職人不足が深刻です。海外に目を向けると、日本ほど熟練した職人がいない、つまり海外も職人不足と聞いています。海外、特にアジアの新興国においても誰が施工しても品質の良い配管ができるように製品を開発しました。

また、現実問題として設備配管は建設の最終段階なので、遅れてしまった工期の帳尻を合わせるため、短納期の配管作業を要求される、というのもよく聞く話です。さらに昨今のホテル不足など、これからは今まで以上に短納期で正確な設備配管を完成させるということが要求されます。これは日本でもアジアの新興国でも同様です。

福山 ここを強調したいのですが、KKベストは接続後も継手を回転させることができるため、加工工場で接続して配管をユニット化して現場までもっていくなんてことも可能です。ホテルなどは配管が決まった形の場合が多く、ユニットを先に組んで持っていけば、現場での接続作業は最小限に抑えられます。そんな風に納品した現場も実際出てきています。

配管の現場では班を組んで作業する場合が多いと思いますが、今まで5人で班を組んでいたのを、2人とか3人にできる物件もあると思います。

東尾 今後はロックリングの色も3色用意できるように考えていますので、現場で色分けすることで、間違いを防止したりすることも可能です。

用途によりロックリングを色分けすることで誤接続を防止

また今回受賞した「中小企業優秀新技術・新製品賞」の他にも、東京都財務局が毎年公募している「建築技術革新支援事業」の「施工性に優れた給水配管に関する技術」部門にも応募していて、こちらもKKベストの施工性、機能、性能は満点と高い評価を受けました。発売から間もなく採用実績数が少なかったこともあり惜しくも受賞は逃しましたが、今後の建設需要に向け大きな支援材料になると思いますので、どうか宜しくお願いいたします。

■東尾メックHP http://www.mech.co.jp/

■KKベストHP http://www.mech.co.jp/kkbest/

ピックアップコメント

使ってみたいですね。でも値段はどうなのか気になるところです。

この記事のコメントをもっと見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
非公開: 「映画館が騒然!」大型ショッピングモールの排煙設備工事で大失敗!
「昆虫や爬虫類の生体」にも配慮?特殊な条件下での改修工事
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
ゼネコンの建築技術者よ、「設備とプラントは異業種」という認識のままで良いのか?
現場代理人が「職人にナメられない」ための3つの予防方法
空調設備の施工管理技士を困らせる「お金と納期とお客様」
東京都港区在住。配管に興味を持ち、各地で配管にまつわる情報を探し歩く。
モバイルバージョンを終了