振動、騒音、薬品…繊細な生物研究施設の改修工事
改修工事の施工管理では、個々の物件について臨機応変の工事が必要となる。私自身、特殊な条件下での改修工事にいくつも携わってきたが、その中で最も特殊だった事例を紹介したい。
その改修工事とは、生物研究施設の内外の改修工事である。建物の構造はRC造で、外壁はレンガタイル、屋上はシート防水。単純な矩形の形でなく、いくつかの建物が繋がった複雑な形だ。
工事概要は建物全体の調査、必要個所の内部改修と補修、外壁タイルの剥離調査と補修、防水やり替え、各階研究室の改修。工期は1年だった。
昆虫や爬虫類への影響も配慮した改修工事
私は当時、この生物研究施設の建築物全般の施工監理と同時に工事管理を担当していた。
研究所の構造は、本館に管理棟と展示棟が増築され、それぞれが渡り廊下で繋がった、かなり複雑な建物だった。さらに各階の研究室から排出される有害ガスを含んだ多数の配管が、バルコニーを貫通して外壁沿いに立ち上がり、屋上にはそれらのガスを浄化する多数のスクラバーが設置されていた。
各階は中央に廊下を配し、研究室の個室が左右に並ぶ。各部屋は研究者が自由に改造していて、研究者が入れ替わるたびに細かな壁や設備が付けられたり撤去されたりと、私は工事以前に各階の状況把握の図面作成から始めなければならなかった。