株主総会に潜入!千葉県から1000億円企業を目指す「新日本建設」の強みとは?

6月28日、本社ビルで開催された新日本建設の第54回株主総会

株主総会に潜入!千葉県から1000億円企業を目指す「新日本建設」の強みとは?

新日本建設の株主総会に参加

「施工の神様」編集部が、ついに株主総会に現れた。日本株が日経平均22,000円~23,000円の間で揺れ動く中、「施工の神様」編集部が注目した建設株は、新日本建設株式会社だ。新日本建設は、再開発やマンション案件を抱える中堅ゼネコンである。

「建設業界は利幅が大きい反面、株価は安い。大手ではないが成長性を考えれば、今が買い」と判断し、私が個人的に新日本建設の株式を取得した時点での株価は870円台だったが、株主総会当日である6月28日には1280円台と急成長。質疑応答では株主からは大きく評価する声も上がった。

デベロッパー機能である開発力を最大限に活かしつつ、多くの施工管理技士を雇用し、建設部門と一気通貫で業務を行うことが新日本建設の強みと言える。特にマンションに強いとされる新日本建設だが、最近では再開発物件の開発や施工にも力を入れており、売上高1,000億円企業を目指している。

なぜ、新日本建設が千葉県を本拠地としてここまで急成長したのか、その秘密を探るべく株主総会に出席した。


新日本建設、50年以上の歴史

新日本建設の成長の秘密は、50年の歴史を俯瞰することで読み取れる。

新日本建設は1964年10月の設立以来、千葉県を拠点に広範囲な首都圏を中心に、建設と開発の両事業を通じて、地域産業・経済の発展と豊かな社会の実現をめざしてきた。現会長の金綱一男氏が有限会社金綱工務店を設立。さらに源流にさかのぼれば、金綱氏の祖父は大正時代に宮大工を営んでいた。1972年には、東京支店を設立するとともに、社名を現在の「新日本建設」に改称した。

その後、幕張メッセや千葉市中央地区再開発事業でも、千葉県内の建設事業者としてJV受注し、都市整備公団優良工事表彰を県内で初めて受賞するなど、幸先の良いスタートを切っている。1989年12月には、株式を店頭公開。これは千葉県内の建設業者としても初の快挙であった。

2002年3月には東証一部上場企業。同年4月には幕張新都心に本社ビルを完成、6月28日の株主総会もこの本社ビルで開催した。2006年には海外進出も本格化。中国遼寧省瀋陽市の中心市街地再開発事業に参画した。ちなみに、瀋陽市は中国東北三省の中でもっとも発展している地域で、経済成長が著しくヤマダ電機も進出している都市として知られている。

首都圏マンション施工会社ランキング2位

そして2013年には、マンション新ブランド「エクセレントシティ」を立ち上げた。不動産経済研究所調べ(2018年2月21日)によると、「2017年 首都圏供給戸数ランキング」では、住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの旧財閥系に並び、新日本建設は堂々の5位だ。2016年12月までの実績では、分譲実績全180棟、8,100戸超。ここまで成長した背景には、金綱代表取締役会長と髙見克司代表取締役社長の2人3脚体制と、それを支えてきた社員の力が大きいと見る向きは多い。

さらに新日本建設は、施工能力も高い。「2017年 首都圏施工会社ランキング」では1位の長谷工コーポレーションに続き、新日本建設は2位に食い込んでいる。3位は三井住友建設だ。マンション開発・施工とも強いという新日本建設の評価は今や不動のものとなっている。

イメージとしては、開発と建設の双方を行う長谷工コーポレーションに近いが、年々高まる総合力では新日本建設の存在感が増している。総合力と言えばマンション管理も実施しており、「2017年 首都圏管理会社ランキング」では、管理会社である新日本コミュニティーが9位まで進出している。

新日本建設本社ビル


再開発事業も強化。千葉パルコ跡地は年内に解体終了

注目された新日本建設の決算は、2017年3月期売上高が953億4000万円、内訳は建設事業が527億1,400万円、開発事業が426億2,500万円。経常利益は135億3,100万円という好決算だ。そして2018年3月期の決算予想は、売上高1,000億円をはじめて超える見通しで、髙見代表取締役社長も株主総会の席で達成に自信を深めている。

新日本建設の建設事業の売上高は、マンションなどの住宅が54%。これに事務所・オフィス14%、医療・福祉12%、宿泊施設9%が続く。株主総会でも話題になったが、2017年度の首都圏マンション供給戸数は2016年度よりも微増したものの、契約率が70%を割り込むなど厳しい状況となった面も否めない。

そこでマンション部門に加えて打ち出したのが再開発事業も強化する方針だ。株主総会での質疑応答の時間でも話題になったが、2016年11月に閉店したパルコ千葉店の跡地の再開発事業に着手。新日本建設の説明では、施設の解体工事を4月から開始、年内に建物の解体が終了し、店舗や住宅を併設した高層ビルの建設に着手する予定だ。規模は200億円を想定しているが、新日本建設が手がける再開発事業としては最大規模。このほかにも千葉市周辺や都内でも再開発物件を仕込んでいる。

また、ややこぶりではあるが、本社ビル前の(仮称)千葉市美浜区ひび野1丁目A-1街区計画も建設途上。地上3階の鉄骨造だ。

建設中の「(仮称)千葉市美浜区ひび野1丁目A-1街区計画」

そして新日本建設のデベロッパー機能を支えるのが、高い施工能力を持つ建設事業である。開発と建設を一気通貫で実施するため、中間コストが省け、経常利益率は常に業界平均の2倍の7%〜8%。他社に頼らず、自社ですべて完結する姿勢を貫き続ける。

新日本建設の施工能力の高さは人材にある。2017年5月現在の社員は、611名。うち資格者は一級建築士(64名)、構造設計一級建築士(10名)、設備設計一級建築士(4名)、一級建築施工管理技士(194名)、一級土木施工管理技士(18名)、一級管工事施工管理技士(11名)、一級電気工事施工管理技士(4名)、二級建築士(29名)、二級建築施工管理技士(12名)、二級土木施工管理技士(5名)、二級管工事施工管理技士(3名)、宅地建物取引主任者(66名)など幅広く資格者が存在する。


株主総会で人材獲得の方策を聞く

ただ、ゼネコンとしての新日本建設の死角は、まさにこの人材獲得競争に同業他社に勝てるかという不安だ。そこで私は株主総会の質疑応答において、議長である髙見代表取締役社長に切り込んだ。

「新卒、中途問わず施工管理技士などの技術者獲得競争が熾烈であるが、これにどう対応されますか?」。

髙見代表取締役社長はこう答えた。

「ご指摘の通り、人手不足が深刻であり、即戦力となる施工管理技士の中途採用であらゆる手を尽くして募集をかけておりますが、なかなか難しい面もあります。一方、新卒にも力を入れており、今年の4月には43名入社でありますが、そのうちの22名が施工管理者です。基本的には技術者を中心に採用しています。管理本部や人事担当者が大学などに行って、新日本建設に入社してもらうよう引き続きお願いしています。そしてこれからの取り組みですが、社員の知り合いで技術者がいれば縁故での採用活動を行う予定です」

髙見代表取締役社長が語った知り合いを通した採用活動は、建設業界はともかく、ほかの業界ではかなり広く行われている。「リファラル採用」と呼ばる方法だ。

新日本建設のリファラル採用

リファラル採用は、社員に人材を紹介・推薦してもらう採用手法である。社員の個人的なつながりを活用することで、自社の魅力や社風をターゲットとなる人材に効果的に伝え、企業文化とマッチした人材を集めることができる。採用した人材の離職率が低いこともリファラル採用の利点として挙げられる。髙見代表取締役社長は、社員の個人的なつながりに注目すると述べたが、これを明言することは大きな建設会社の中では珍しい。

そして、新日本建設の強みは、施工管理技士の知識や技術だけではない。施工管理技士のコミュニケーション力も大きいようだ。

入社6年目の現場監督に聞くと、「入社したての頃は自分の方から多くの事を教わりに行き、同じくらい怒られもしました。ですが、現場を取り仕切るのは施工管理の役目ですので、普段の雑談も含めて、職人さんと上手くコミュニケーションを取り、お互い気持ちよく仕事ができるよう目指しています」と語る。

また、別の施工管理者も、「私より年上の人が多いので、盛り上がる話題や笑いのツボにも世代間ギャップがあるんです。でも一緒に過ごすうちに、だんだんとツボがわかってきて、私自身も楽しみながら職人さんたちとコミュニケーションを図っています」と話している。

施工管理技士にとって重要なコミュニケーション力。そのコミュニケーション力に長けた社員を活用した採用活動は、新たな採用ステージへと発展する可能性がある。

注目される新日本建設の株価動向

今後の新日本建設はマンション部門に加え、再開発事業の強化から目が離せない。

建設をスムーズに進めるための、既存建築物の耐震改修「ハイパー耐震工法」、住まいの省エネと快適性を両立する次世代の外断熱工法、子会社である株式会社建研がノウハウを保有するPC(プレキャストコンクリート工法)など技術開発にも余念がない。

客先のニーズに応え、1000億円企業を目指す新日本建設の株価の動向はこれからも注目だ。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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