奇怪な「四足歩行ロボット」が建設現場を巡回開始 竹中工務店とフジタ

竹中工務店プレスリリースより

「四足歩行ロボット」が建設現場を巡回開始 竹中工務店とフジタ

四足歩行ロボットが現場管理

四足歩行ロボットを建設現場で活用する実証実験が行われた。6月25日、竹中工務店と大和ハウス工業グループのフジタがそれぞれ発表した。

使用した四足歩行型ロボットは、ソフトバンクグループが買収したボストン・ダイナミクス社の「SpotMINI(スポットミニ)」。カメラを搭載した四足歩行ロボットが建設現場を自動で巡回し、そのカメラの映像を通じて、遠隔で技術者が工事の進捗管理、安全点検を行った。

竹中工務店は横浜市内の現場(JR東日本横浜駅西口開発ビル新築工事)、フジタは東京都内の現場で実験した。今後、複数の現場で実験を繰り返し、世界に先駆けて2019年夏以降の本格活用を目指すという。

「SpotMINI」といえば、奇妙な動きで有名だが、あの犬のようなロボットが現場をうろつき、人間の作業進捗を管理する時代がすぐそこまでやって来ているようだ。

建設現場の四足歩行ロボットへの期待

四足歩行ロボット「SpotMINI」の建設現場における活用については、技術者の間でも賛否両論がある。

しかし、建設現場でのロボット活用は、建設業界の人手不足を解消する画期的な方法になり得るとして、誰も否定はしないだろう。現在約330万人いる建設技能者が2025年には216万人に激減するというデータもあり、施工現場を中心にロボットや3Dプリンターなどの導入の動きが相次いでいる。将来的にはどんどん建設現場における作業の省人化が進んでいくのは必至だ。

四足歩行ロボット「SpotMINI」についても、ある20代の建築施工管理技士に聞いたところ、「四足歩行ロボットで現場を自動で巡回できれば、一人が一箇所にいながら複数の現場に目が届くようになる。現場内の移動時間や人員の大幅な削減になるのでとても夢がある。しかも現実的なことだと思う」と期待感を示した。

一方、四足歩行ロボットについて懸念や不安を吐露する建設技術者もいる。


建設現場の四足歩行ロボットへの懸念

ある女性の建築施工管理技士は、「四足歩行ロボットそのものをメンテナンスする機械の技術者に近くにいてもらわないといけないのでは?」と疑問を呈す。

「せっかく人員削減のために四足歩行ロボットを導入しても、どんな天候でも安定して四足歩行ロボットに現場を巡回してもらるためには、結局、機械と建設の技術者が近くに付いていなければいけないのではないでしょうか?最新技術は、私のような凡人が心配するほどではないとも思いますが(笑)」と語る。

また、他の技術者は「四足歩行ロボットの映像だけでは気付けない、建設現場の危険性もある」と警鐘を鳴らす。

「ロボットによって映像的に現場の様子を私たち人間に伝えられても、人間がその場にいることで気付ける危険もたくさんある。」

別の建築施工管理技士も、「建設現場の施工管理については完全なロボット化はやはり出来ないのではないか。施工現場において私たちは巡回する中で、いつもと違う音や匂いなどで職人の施工・段取りミスやトラブルを発見することがある」と語る。

前出の女性の建築施工管理技士も、「あれ?今日ってこんな音、こんな匂いのする作業あったっけ?など、些細なことでミスが発覚したりします。ロボットにはカバー出来ないこともたくさんあると思うので、人間とロボットの上手な分業が大切だと思います」と指摘する。

四足歩行ロボットの導入と若い技術者

費用面を心配する意見もある。

「ロボットを導入するには、ある程度の規模以上の現場に限られるのではないか?」

「導入するにもメンテナンスするにも費用が高いままだと、 大きい現場、大きい企業以外ではロボット導入は全く現実的ではない。」

「広い現場であればCADやBIMと連動して、自分が欲しい時にロボットが写真を撮影してきたりしてくれれば使い勝手は良さそうです。でも、そうなるとますます中小企業には手出しができない価格帯になりそうです。」

……建設業界では今後も驚くような技術開発のニュースが飛び込んでくるだろうが、その中には「実用から程遠い“打ち上げ花火”のような技術」も含まれている。

情報のインパクトに流されず、自分の現場で活用できるかを適宜判断し、積極的に新技術を導入することも今後、若い技術者には求められるのかもしれない。

ピックアップコメント

某ゼネコンのウェアラブルといい、キャリアアップシステムといい、ロボットの巡回といい、見える化、効率化という建前で、監視の世界に向かってるのでしょうか?不安です。

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映画『釣りバカ日誌』の浜ちゃんを信奉している建設業界の平凡なサラリーマン。万年平社員こそ、わが理想としているが、年齢を重ねるとなかなかそうもいかない現実と日々これ格闘中。
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